岡山県立美術館

 

典型的な県立美術館の建物。

公式HP

美術館規模 

専用駐車場 有(地下駐車場)

アクセス方法

 JR岡山駅から市電と徒歩

お勧めアクセス法

 JRと市電を使うルートが便利ですが、車で行っても駐車場があるので助かる。ケースバイケースで。

コメント

 

展覧会レポート

 

「東島毅展」 2007.2/9〜3/11

 いわゆる抽象絵画の展覧会。作品は大作揃いである。ただこの場合の大作とは、単に作品がでかいというだけ。作品自体は巨大な板に絵の具を塗りたくっただけの、出来損ないの看板下地にすぎない。

 というわけで、私は全くお呼びでありませんでした。どうもこういうあまりに楽そうな作品とは根本的に相性が悪い。

 

「浦上玉堂展」 2006.9/29〜10/29

 浦上玉堂は岡山の武士であったが、琴や書画などに親しみ、ついには50歳の時に武士を捨てて脱藩。全国を放浪した後に京都に居を定め、多くの文人画を残した人物である。本展は国宝や重要文化財を含む彼の作品を集めた最大規模の回顧展とのことである。

 彼の作品は大胆にして奔放。そしてリズミカル。技巧的な絵ではないのだが、筆運びが目に浮かぶような気がしてなぜか心地よい。彼の絵画から受けるリズム感は、彼が琴の名手としても知られていたことと無縁ではなかろう。

 それにしても先の富岡鉄斎は70歳代以上の作品が多かったが、本展の玉堂の作品もほとんどは60歳代以上の作品である。しかし年齢が上がるにつれて逆に力強くなり精気が満ちてくるような感がある。恐るべき老人たちだ。

 

「岡山美術百科」 2005.9/30〜11/13

 本展は岡山県立美術館の収蔵品を強引にテーマ分けして、一堂に展示するという大収蔵品展というところである。もっともテーマ分けと言ってもあまり厳密なものではなく(と言うよりもこじつけくさい)、日本画から洋画、さらには工芸作品までもが入り交じっているという賑やかしい展覧会である。

 この美術館の収蔵品は、知名度的には目を見張るような作品はそう無いにも関わらず、なぜか以前より私が好感を感じる作品が多々あるのであるが、本展ではそのような作品をまとめて堪能できる。各テーマコーナーはあまり意味がなかったが(笑)、画面サイズに合わせて富士をいかに表現するかという展示のコーナーだけはなかなかに面白かった。縦長の画面に合わせて、富士を極端に縦長にデフォルメして表現している長澤蘆雪の作品には、「おいおい、いくらなんでもそれはないだろう」と思わず一人突っ込みを入れてしまったりもしたところである。

 既に二度ほどこの美術館を訪れたことのある私には、懐かしい作品との久しぶりの再会といったところだが、この美術館を一度も訪れたことのない者ならこの機会に一度訪れられても良いのではないかと考える。

 

「華麗なる楊貴妃の世界 大唐王朝女性の美」 2005.3/1〜4/3

 かつて中国において長安を中心として繁栄した唐王朝。本展はその唐時代の文化を女性の姿を表現した窯、当時の装束の再現、宝飾品などの文物、仏像等の仏教遺跡に分けて紹介し、それらに日本文化がいかに影響を受けたかという観点を差し挟んで展示している。

 中国でも美人の基準は時代と共に変化したようだが、隋代には結構ほっそりとした女性像が残っているのに対し、唐代になるとふくよかな女性像ばかりになってくる。玄宗皇帝の妃であった楊貴妃もかなりふくよかな女性だったと言われているが(そのふくよかな身体で華麗に舞うのが、玄宗皇帝の気を惹いたと文書にも残っている)、その楊貴妃を思わせるような女性窯が並んでいる。これのような美人の基準は日本にも影響を与え、正倉院鳥毛立女屏風などに見られるような、いわゆる天平美人の原型になったと考えられるとのこと。日本はアメリカに感化されると、いわゆる八頭身美人がもてはやされたりと、とにかく外国の影響を受けやすいが、それはこの頃からだったのかと思わず苦笑いが出る。

 また宝飾品などでは精緻な細工を施された鏡が印象的。同時代の日本の鏡に比べると明らかに細工の精緻さが勝っており、当時の中国の技術水準の高さがうかがわれる。なお仏像彫刻に関しては国際美術館で開催中の「中国国宝展」と比較すると、この時代の仏像彫刻の特徴が分かって面白い。西アジアからの影響と中国流の造詣が微妙に入り交じっていてなかなか興味深い。

 

「20世紀美術への招待 国立国際美術館展」 2004.7/9〜8/15

 美術展のタイトルとして「美術ってなーに?」と銘打っている通り、ウォーホルのマリリンモンローを題材とした作品や、ありがちな絵の具を塗りたくった類の作品など「どこかで見たことのあるような典型的な現代美術」を集めた展覧会である。技術も才能もない自称芸術家の免罪符として「感性」という言葉を誰が最初に使い始めたのかは知らないが、その言葉のありがたみを体現しているかのような作品が多い。一望するだけで、20世紀芸術の大まかな動向とそれが完全に行き詰まってしまっていることを体感できるのでなかなか興味深い。

 なお岡山県立美術館では、収蔵作品を展示した常設展も行われているが、こちらの方も各作家の個性が競演していてなかなか興味深い展示である。こちらの常設展示だけでも一見の価値はあり、岡山まで出向く意味はある。

 

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