展覧会遠征 姫路編2

 

 さすがに先週は北陸遠征で身体も財布もかなり疲れてしまった。と言うわけで、近場をチマチマした遠征というのが今週。


「大正・昭和の風景版画家 川瀬巴水展」姫路市立美術館で11/3まで

 

 日本には浮世絵に代表される木版画の伝統が存在するが、川瀬巴水とは大正期から昭和にかけて木版画で活躍した人物である。鏑木清方に師事していたというだけあって、単なる版画家ではなく、日本画の技術も理解している人物であり、彼の風景版画はその卓越した技術のみならず、高い芸術性によって評価されている。

 本展では彼の風景版画を大量に鑑賞することができるのだが、とにかくその技術の高さには唖然とさせられることは間違いない。彼の作品はよく知っているつもりの私でも、実際に作品を目の前にすると「版画でここまで表現できるのか」と驚かされることが多々ある。彼は新版画運動に参加して新たな技法の開発にも貢献している人物だけに、日本の版画の伝統はふまえつつ、北斎・広重などの浮世絵からさらに表現力を増した新しい版画を制作しているわけであるから、その表現力の幅は凄まじいものがある。

 実際に私は彼の作品に出会ったことで、「色彩表現の幅が狭くて、描写が大味になりがち」という木版画に対する偏見が完全に破壊された経験がある。とにかく一見の価値があるのが彼の作品である。


 市立美術館の次は、姫路城近辺に最近に誕生した新しい美術館を訪問することにする。


三木美術館

  本社ビルの3階にある

 住宅リフォームなどの建築関係を手がける美樹工業が、新たに本社ビルを建設するにあたって設立した美術館。同社の代表取締役である三木茂克氏が収集したコレクションを展示している。展示品は日本画、洋画、工芸品などで多岐にわたっている。

 私の訪問時には、日本画では橋本関雪、川合玉堂などの名品、さらに横山大観の富士の絵などが展示されていた。そんな中で印象に残ったのは、牧進の鮮やかな日本画。強烈な個性を持っている画家ではないのだが、明瞭な輪郭と色彩は印象的で、なぜか私の好みに合致する。

 美術館自体は決して大きなものではないが、非常に落ち着いた空間となっており、作品をじっくりと楽しむことができる。定期的に展示替えがなされるようなので、姫路城訪問時に立ち寄られるのもよかろう。


 姫路城周辺の美術館を訪ねた後は、車を北に走らせる。次は少し毛色の変わった施設を訪問する。


日本玩具博物館

 昔の土蔵などを利用した建物に、古今東西のあらゆる玩具を収蔵・展示している博物館。世界各地の珍しい玩具や、日本の各地の玩具から、昭和初期の玩具まで多様なコレクションを誇っている。

 

 私はてっきり日本の民俗的な展示物ばかりなのだろうと思っていたのだが、その手の展示物だけでなく、昭和レトロを感じさせるような展示物も多々あり、懐かしさを感じさせるものであった。また現在は特別展として「世界の仮面とまつりの玩具」が展示されているが、これがいかにもその国々を思わせる仮面のオンパレードで、意外と楽しめる。


 それほど大きな施設ではないのだが、結構有名なのか観光バスによるツアー客までがやって来ていた。また実際に触って遊べる玩具もあるので、子供が楽しむことができるようになっている。なお館長(だと思う)の展示説明の時、「昔の玩具は触って遊びながら子供が学べるようになっていたが、今の玩具は子供が遊ばされているだけ」との言があったが、これはいたく同感。昔の玩具は工夫でいろいろな遊び方の余地があったが、今の玩具は高度で精密だが遊び方が限定されていて、工夫の余地が全くない。この辺りは子供の創造性に響いてきそうである。

 

   建物は古い土蔵など         懐かしの昭和のキャラクター玩具も

 山奥まで足を伸ばしたついでに、さらに近辺の温泉に寄ってから帰ることにした。今回訪問したのは、竹取の湯香寺荘。本来は公立の宿泊施設なのだが、日帰り入浴も可能となっている。施設はやや古びた感じなのだが、風呂は改装されたようである。なお人気があるのか駐車場には多くの車が止まっていた。

 風呂は広々としていて、いかにも旅館の温泉という雰囲気。内風呂に寝湯が併設されており、サウナと露天風呂がある。露天風呂からは外の竹林が目の前に開け、それが目隠しとなりながらも狭苦しさを感じさせないようになっている。

 泉質は炭酸泉。特に強い味は全くないが、非常に泡付きが良い。露天風呂はややぬるめの湯が入っており、20分以上をかけてじっくりと入浴するようにとの表示がされている。実際にこのぬるい湯に20分浸かっていると、身体がじっくりと温まってくるという仕掛け。肌当たりも良く、スベスベすしながら身体に泡がまとわりついてくるようで、泉質自体は良い。風呂からあがった後も肌がしっとりした感じで非常に具合が良かった。また温泉上がりにフルーツ牛乳が販売されている(当然であるが瓶入り)のも温泉マインドを実に心得ていてよろしい。なお併せて冷やしアメも販売してあったので、おもわずこっちも飲んでしまった。

 以上で今回の遠征は終了。後は車を飛ばして帰宅の途についたのであるが・・・。ここしばらく車で長距離を走っていないせいか、明らかに運転の感覚が鈍っていることを痛感。こりゃ気を付けないといかんな。

 

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