展覧会遠征 神戸編2

 

 さていよいよ青春18シーズン突入・・・なのだが、先週に大型遠征に繰り出したばかりである。と言うわけで、今週は近場の訪問のみとなる。例によっての神戸である。出発したのはゆっくりと昼前。現地に到着するとまずは昼食からである。やはり神戸だと洋食かというところで、ビルの2階にひっそりとあるフレンチの店・Les Grace(レ・グラース)を訪れる。ランチメニューは3000円のコースと4500円のコースがあるが、3000円のコースの方を。

 まずは最初はアミューズとして小さな焼き物が出てくる。内容については説明があったのだが、残念ながら私は耳が良くないので囁かれるとハッキリ聞こえず。何かを包んで焼いたということを言っていたが。私はアルコール類が全く駄目なのでドリンクをとらなかったのだが、本来はドリンクのあてなんだろう。

 前菜とメインは4種ほどの中から選択できるようになっている。私が選んだ前菜は「ホロホロ鶏と豚足のパートブリック包み ラビゴットソース 」。要はクレープ包みにバルサミコ酢を使用したソースをかけたもの。バルサミコ酢の匂いがツンと鼻を刺激する。趣としては洋風春巻き。

 メインは「ブルターニュ産 仔鴨フィレ肉のグリエ シェリービネガーのソース」。焼いた鴨肉に、ポテトの焼き物を添えてあるものだが、ジューシィーな鴨肉がたまらない逸品。ポテトの焼き物もうまい。

 デザートは「桃のコンポート ヴェルヴェーヌ風味 バニラアイスクリーム」。桃の中にアイスクリームが入っているのだが、これが酸っぱさと甘さの絶妙のバランス。またまわりに添えてあるかき氷?が爽やかでうまい。

 なかなかに堪能できるランチであった。店内は落ち着いた雰囲気で女性向きという印象。女性の豪華なランチ、もしくはカップルのデートなどには最適な店で、私のようなオッサンが1人で行くべき店かは疑問(笑)。所詮ガツガツ食べるだけの私には、ゆったりしすぎで料理のテンポが遅い。また価格的には神戸相場だと思うが、全国的に見てみるとやはり神戸はCPが悪いと感じる。

 さてランチが終わったところで本題の方に入るとする。


「一瞬のきらめき まぼろしの薩摩切子」神戸市立博物館で8/30まで

 

 薩摩切子の起源は、薩摩藩10代薩摩藩主・島津斉興が開始したガラス製造に端を発しており、その後を受けた斉彬の代において一気に開花した。そもそもは薬品製造時における保存用の容器としてガラス製造の必要があったのだが、蘭学などに基づいて独自の技術開発を行う過程で、工芸としての切子細工が発達、斉彬の積極的な支援の元で献上品として人気を博するほどにまでなったという。しかし斉彬の急逝後の薩摩藩の緊縮財政政策や薩英戦争で工場が破壊されたことなどから急激に衰退、まさに幕末を飾る一瞬のきらめきとして消えていったのだという。

 鉛含有量の多い柔らかいガラスを用いて、それを丹念に研磨していったのが切子細工である。また色ガラスを重ねて研磨することで、独特のぼかしなどの表現があり、それが美しさを醸している。私は基本的には工芸品には興味はほとんどない方であるのだが、本展で展示されていたガラス作品に関しては、とにかく魅せられるものが多かった。やはりガラスのの透き通った輝きには人の心を引き寄せる何かがあるのだろう。特に強く魅せられたのはサントリー美術館所蔵という「藍色被船形鉢」。これはそのあまりの完成度の高さに日本製ではなく輸入品だろうと思われていたのだが、ガラス成分の分析とほぼ同様のデザインの薩摩切子製品が発見されたことで、薩摩切子であったことが判明した逸品であるという。この透き通った深い碧には飲み込まれそうなものを感じた。


 美術館の見学後は次の目的地まで移動・・・なのだが、その途中で「本日入場料半額」という表示に引き寄せられ、ちょうど向かいの建物にあった「らんぷミュージアム」に入館する。

 


神戸らんぷミュージアム

 

 日本におけるランプを中心とする照明器具の歴史を紹介するミュージアム。関西電力の運営とのことで、最後はしっかりと電灯にまでつながっている。

 見所は明治以降のランプの逸品。この頃のランプはデザインにも凝ったものが多く、なかなかに芸術的である。またランプのメカニズムに関する展示などもあり、これは知的好奇心を刺激される。意外と見所の多い内容である。

 


 次の目的地へは三ノ宮駅前からバスで移動する。次の目的地は駅からは遠いので、どうやらバスを使うのが一番ベストなようだ。

 


「躍動する魂のきらめき−日本の表現主義」兵庫県立美術館で8/16まで

 

 表現主義と言えば、それまでの約束事を打破して表現を重視した前衛的な尖った芸術というイメージがある。しかしよくよく考えてみると実に奇妙な言葉である。そもそも芸術とは表現そのものであり、表現が存在しない芸術などあり得ないし、過去の因習に反逆するのは若者の特権でもあり熱病のようなものであり、ラファエロでもミケランジェロでも当時としては前衛であったはずなのである。

 結局のところ、一般的には前衛主義とは20世紀初頭のヨーロッパでの感情重視の前衛的表現を指すようだが、日本においては明治末以降のそれまでの伝統のたがが緩んで一気に芸術が自由化していった時期に符合するのだという。本展ではその時期に当たる種々の芸術作品(洋画・日本画・版画・写真・建築・工芸から果ては音楽や演劇に至るまで)を概観しようという展覧会となっている。

 とは言うものの、全体を通じての印象としては「尖ってるな」というものはあるものの、そもそもが個々の作家が内面を爆発させる芸術運動なので、全体的な統一性はないし、今となっては当時の前衛も既に古色蒼然として見えたりなど、今一つピンとくる間がなかったというのが本音である。個人的には萬鉄五郎の作品をこれだけまとめて見たことがなかったことと、東郷青児の後のパターン的な女性像ではなくて初期のキュビズム的なかなり尖った作品があったことが興味深かったか。


 これで本日の予定は終了。後はJRで帰宅の途についたのだが、やはり新快速は速い。阪神電鉄などと比較すると話にならないぐらい早い。やっぱり金があればこちらに乗りたいよな・・・。

 

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