展覧会遠征 大阪編

 

 さて今週であるが体力も財力も尽きているので、近場の美術展を攻略することにする。今日の目的地は大阪のサントリーミュージアム。青春18切符のシーズンは来週からなので、今回は以前に岡山で仕入れてきた「スルッと関西2day切符」を使用することにする。正直、大阪だと採算がギリギリなんだが、地下鉄や市バスもこれで乗れたりなどと使い勝手が良いのでこれを使用することにする。実は本来は今日は京都に行くつもりだったのである。しかし実は今までの疲労と体調の悪さで朝起きあがれず、どうせ京都に行くのだったら来週に青春18切符で行った方が楽だと急遽計画を組み替えたというのが実態だったりする。

 

 そういうわけで出発したのは既に昼前。まずは阪神電鉄で梅田まで直行・・・のつもりだったのだが、突然に思い立ったので、西宮駅で快速急行に乗り換えると武庫川駅で途中下車する。阪神電鉄にはこの武庫川から武庫川団地まで武庫川線という支線があったことを思い出したのである。今までこの路線には乗ったことがないので、ついでだから視察しておいてやろうと思い立った次第。まあどうせ乗り放題切符を使うんだからと、例によって貧乏性が発現しただけとも言えるのであるが。

本線ホームから連絡通路を経由、改札を通ってから武庫川線ホームに入る。北側にはまだ線路が残っている。

 武庫川駅は川の真上のど真ん中にある橋上の駅なので、ここから連絡通路で東に延々と歩くことになる。武庫川線ホームは本線ホームから一段降りたところに、本線ホームと90度の角度で設置されている。また武庫川線では中間の二駅は無人駅であるためか、ホームに行くのに一端改札を通過して切符を確認するようになっている。またこの路線はかつては北のJRのそばまで延びていたとのことで、本線の北側にもかなり長い線路が見えている。ここには本線からの連絡線も通っているという。

 どことなく懐かしさを感じる車両

 ホームにやって来たのはオレンジ色ツートン阪神カラーの二両編成ワンマン車両。どことなく懐かしさを感じさせる車両でもある。車内からは多くの乗客が降車してくる。データイムはこれがこの単線路線をピストン輸送しており、1時間に3本程度の運行頻度であるようである。朝夕には本数を増やすので、そのための予備車両は本線内に留置されている。

  

終着の武庫川団地前には特に何もなく、なぜかタイガースカラーのタクシーだけが待っている

 列車はしばらく武庫川の堤防沿いを走行するが、沿線はかなり住宅が多い。ガラガラのローカル線などからするとうらやましいぐらいだろう。非常に短い路線なので終点までは5分程度。終点の武庫川団地前駅からはその名の通り武庫川団地が見える。

 こんな駅で降りても仕方ないのですぐに折り返すと本線で奈良行きの快速急行を待つ。これに乗車すると九条で地下鉄に乗り換え。大阪港で降車する。阪神が難波まで接続したことで、この大阪港にも行きやすくなった。しかし残念ながら当のサントリーミュージアム自身がサントリーの経営合理化で閉鎖されるという。サントリーは前社長がほとんど個人的趣味でホールや美術館を建てていたのだが、企業のイメージや社会貢献などよりも、四半期での株主配当を最優先する守銭奴経営ばかりになってしまった今日では、こういう「無駄」は許されないらしい。残念ながら文化というのは昔から無駄や道楽の延長にあるものであり、世の中の余裕がなくなるとこういう部分が一番先に切り捨てられるのである。そうして精神はドンドンと貧困化していく。

 

 美術館に行く前に、遅めの昼食を摂ろうと思っていたのだが、行くつもりでいた店がどうしても見つからない。「またやられたか」と思わず呟く。私は店を探すのに「食べログ」を参考にすることが多い。しかしこのサイト、店の評価が全く参考にならないのは仕方ないとしても(口コミサイトなんてそんなもの。だから私は端から評価なんて信用はしていない。)、店の場所がいい加減なことが多いのが困りものである。以前にも地図と全く違うとんでもない位置に店があったということを数回経験している。

 結局は店を見つけることが出来ないまま美術館の近くまで来てしまったので、先にこちらを済ませることにする。

 


「クリムト、シーレ ウィーン世紀末展」サントリーミュージアムで12/23まで

 

 19世紀末ウィーン、未だに保守的な勢力が主流を占める芸術界に反発し、ウィーン分離派と呼ばれる新勢力が旗揚げをする。ウィーン分離派は絵画の世界にとどまらず、建築、デザイン、工芸などの幅広い分野を含んだ一大潮流となることになる。このウィーン分離派を象徴するグスタフ・クリムト、エゴン・シーレなどを中心として、この時代のウィーン芸術を概観する展覧会である。

 金細工職人の息子だったクリムトは、アカデミズムに決別して、独自の装飾的なキンキラキンの絵画で有名になるが、本展で展示されている作品の大半は彼の初期の作品である。この頃の彼の作品はアカデミズムの手法を踏まえた古典的色彩の強い絵画ではあるが、既に後につながる幻想性は垣間見えている。なお一般的には最もクリムトらしいと感じられる絵画は本展の看板とも言える「アテナ」の絵であろう。クリムトしか描かないであろうと思われる絵画である。

 クリムトを敬愛していたというシーレの絵画は、一転して人物の内面をえぐるような鋭さを持つと共に極めて個人的な絵画である。古典絵画の流れが残存しているクリムトに対し、シーレの方には現代絵画の萌芽が見られている。

 彼らの後に台頭してきたのが自然主義的絵画で、結局はクリムトらはこの勢力と対立して分離派から離脱することになるというが、これらの絵画は当時のヨーロッパを席巻していた印象派の影響が濃厚に見えると共に、後の表現主義につながる絵画も現れており、時代の変わり目を感じさせる興味深いものがある。

 内容的にはバラバラという印象なのだが、どことなく全体的に退廃ムードが漂うのが、世紀末ウィーンの空気だったのだろう。当時のヨーロッパの本流の流れとの微妙な距離感が特徴的に感じられて興味深い展覧会であった。

 


 美術展の見学を終えたところで海遊館方面にプラプラ歩く。海遊館の隣のマーケットプレイスで取り損ねた昼食を摂っておこうという考え。結局、入店したのは二階のフードコートの所にある「○丈」というラーメン屋。○のついた屋号から和歌山ラーメン系と思われるが、そのものズバリの和歌山ラーメンの「○丈そば(800円)」と東大阪高井田系ラーメン(正直聞いたことがない)の「中華そば(650円)」がメインメニュー。私はとりあえず「○丈そば」の方を注文する。

 出てきたのはドロドロとした濃厚な醤油豚骨ラーメン。鼻を突くような獣臭い臭いにかつて和歌山の「井出商店」で食べたラーメンを思い出す。このドロドロのスープに太めの麺を組み合わせてバランスを取っている。スープは見た目ほどくどくはないが、やや塩辛目。麺に絡ませた時のバランスが良くなっている。いわゆる典型的な「井出系ラーメン」。井出商店で食べたラーメンと同様、臭いは良くないのであるが味は良い。このラーメンのポイントは、この臭い(はっきり言って悪臭と断言しても良い)に耐えられるかである。

  

 当初予定ではこの後天王寺の方へ行くつもりでいたが、やはり出かけるのが遅すぎたせいでその時間がなくなってしまった。今回は無理をせずにこのまま帰宅することにしたのだった。

 

 戻る