展覧会遠征 京都編3

 

 さてお盆のさなかであるが、今週は京都を訪問することにした。正直なところ、灼熱地獄の夏の京都なであまり立ち寄りたくはないのだが、展覧会のスケジュールなどをにらんでいると、今週でないともうチャンスがないようである。そこでやむなく重い腰を上げた次第。

 

 京都までの行程であるが、当然のように青春18切符を使用しての在来線移動である。お盆のせいか新快速の車内は満員である。しかしそれ以上にたまらないのが、弱冷車でもないのにクーラーがほとんど効いていないこと。あまりに車内が蒸しているので、何やら意図的に冷房温度を上げているのではという気さえ起きてくる。「JR西日本では、お客様により運賃が高額な新幹線をご利用いただくため、在来線に起きましては不快な社内環境を保つよう努めております。皆様のご理解とご協力をお願いします。」というやつか。

 

 いきなりかなり消耗しながら京都に到着、そのまま地下鉄で最初の目的地へ。しかし地下鉄から出るといやになりそうなほどの熱気に襲われる。たまったものではないので慌てて建物の中に逃げ込む。もう外に出る気力がないので、そのまま建物内のそば屋「有喜屋」で昼食を摂る。かなり消耗しているので、デザートとして抹茶わらび餅も合わせて頂く。

   天ざるセットとわらび餅

 昼食を終えると展覧会会場の方へ。会場入口に飾ってある巨大な石頭が印象的。

 


「古代メキシコ・オルメカ文明展」京都文化博物館で9/26まで

 会場内展示のレプリカ石頭 こちらは撮影可

 メキシコ地域においてそれまで最古と言われていたマヤ文明から遡ること紀元前1200年頃、この地域に高度な文明が発達していたことが発見されたのはごく最近のことである。きっかけはジャングルの中で発見された巨大な石頭。明らかにインディオ系の先住民をモデルにしたと思われるその石頭の発見以降、数々の遺品が発見されることとなった。これらのオルメカ文明は、独自の宗教体系などを有しており、それは後のマヤ文明へと受け継がれることになったと推測されている。

 オルメカ文明ではジャガーを神聖視していたと考えられ、ジャガーをかたどった像などが多数展示されている。石像の加工技術や土器の製作技術などにもかなり高いものが見られ、やはりこの地域がかつて高度な文明を誇っていたことが推測される。

 ヨーロッパの野蛮人によって完全に破壊され尽くしたかに思えたこの地域であるが、未だにこのような文明の遺品が見つかっていることは興味深いところ。オルメカ文明は、マヤやアステカなどとの絡みから見ていくとかなり面白い。

 


 それにしても私が中学生の頃は「世界四大文明」なんてものが教科書に載っていたが、今ではあれは無知と偏見に満ちたものであることは証明されており、実は世界各地にはるかに多くの文明が発祥していたことが確認されている。これからも歴史の教科書も徐々に集成されていくとは思うが(そう言えば「コロンブスのアメリカ大陸発見」なんていう馬鹿げた表現も、最近は「コロンブスのアメリカ大陸到達」に変更されているようだ)。

 

 展覧会の見学を終えると、再び意を決して灼熱地獄の中へ。それでなくてもかったるい駅への道のりが、通常の三倍ぐらいの苦痛になる。逃げ込むように地下鉄に駆け込むが、目的駅から行程もつらい。全くもっての消耗戦である。

 


「Trouble in Paradise/生存のエシックス」京都国立近代美術館で8/22まで

 

 各分野での最先端科学の進歩はめざましいものがあるが、それらの科学を踏まえての芸術的アプローチを考えるという辺りがテーマであるらしい。

 とは言うものの、内容的には科学をネタにしたアトラクションのオンパレードと言ったところ。これを芸術と捉えるかは難しいところだが、私が常々「現代アートとは遊園地のアトラクションのようなもの」と言っていることから考えると、まさにそれを体現しているかのような展覧会でもあると言える。

 木製ジャングルジム?や、回転するお立ち台?といったわけの分からない展示が多いが、まあそれはそれで楽しんだもの勝ちという印象の内容。夏休み向けではある。

 


 ここまで来たついでなので向かいの京都市美術館にも立ち寄る。こちらではボストン美術館展を開催中だが、お盆のためか暑さのためか行列などはない状態だった。もっとも私はこれは東京で既に見ているので、私が入場したのはコレクション展の方。

 


「京の閨秀・女流・女性画家−担ったもの/担わされたもの」京都市美術館で9/5まで

 

 京都画壇の女性画家達の作品を集めた展覧会。作品が多かったのは三谷十糸子、梶原緋佐子、秋野不矩あたり。梶原緋佐子の作品については、大正期の作品は大正デカダンスというか妙に強烈なものであるのに、昭和期になると普通の洗練された日本画に画風が変化していたのが妙に印象に残った。時代の反映なんだろうか?

 なお個人的には、やっぱり上村松園とか伊藤小坡とかが趣味に合う。

 


 当初予定ではこの後に大阪に立ち寄ることも考えていたのだが、あまりの消耗ぶりに自分の体力を考えて撤退することにした。撤退前に近くの喫茶「茶ろん瑞庵」で例のごとくの宇治金時ドーピング(これで900円はCPが悪い)、そのまま地下鉄で山科駅に移動、そこから新快速で帰途についたのである。

 疲れた時にはこれに限る

 しかしまたここでトラブルが、踏切の警報機故障とかで途中で列車が完全停止。結局はそのまま20分近く待たされることになったのである。どうも最近のJRはこのようなことばかりである。一応お詫び放送は流れるものの、本当にお詫びしているのやら。「本日は大変お急ぎのところを申し訳ありません。本当にお急ぎの方は、特急料金をお支払いの上で新幹線のご利用をお勧めします。」ってのが本音と違うか。

 

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