展覧会遠征 広島編

 

 さて今週であるが、やはりシーズン的には青春18切符を活用した遠征を実施したいところである。ちょうど現在、広島県立美術館で「ポーランドの至宝展」が開催中であり、レンブラントの名作が展示されるという。広島と言えばもう牡蠣もシーズンであるし、これはちょうど良いタイミングである。本来なら広島となれば一泊したいところだが、内容的に一泊するだけの課題もなしというわけで、結局は広島日帰り弾丸遠征を実施することに相成った。

 

 当日は早朝を通り越して未明の出発である。山陽本線を乗り継いでの行程となるが、もう通い慣れたる感さえある。かつては広島方面行きの普通列車はシートピッチの異常に狭いボックスシート列車であったのでかなり地獄の行程であったが、最近はシートが換装されてシートのピッチの広がった転換クロスシートとなっているので、以前に比べると格段に楽である。列車に乗り込んでしまうとする事はないので、本でも読みながら時間をつぶす。

 

 ようやく昼前に広島に到着。早速路面電車を乗り継いで目的地を目指す。

 


「ポーランドの至宝」広島県立美術館で1/12まで

 

 ポーランドはかつてはヨーロッパで栄華を誇った時期があり、その際に優れた美術コレクションなどがなされたが、その後に近隣列強の侵略によって国家が消滅したりなど苦難の歴史を送っており、そのコレクションも多くは散逸してしまったという。しかしながら、それでもワルシャワ王宮やヴァヴェル城にはまだ多くのコレクションが伝わっており、それらの芸術作品を紹介する展覧会。

 序盤は栄華を誇った時代のポーランドを偲ばせる絵画作品。端正なルネサンス絵画などが中心だが、このコーナーに本展の白眉であるレンブラントの作品が展示されている。レンブラントの二点は共にだまし絵的手法を使用しているのであるが、このだまし絵というものは本物のと見間違えさせるだけの技倆を持った画家が駆使してこそ初めて機能する。さすがにレンブラントとなるとそれは見事と言わざるを得ず、額縁に手をかける少女などは今にも額縁から乗り出してきそうなリアルさを感じさせる。これについては実際に作品を前にして絶句してしまった。

 中盤はポーランド国家消滅下の過酷な状況でのポーランド芸術家達の作品。この時期のポーランド画家もご多分に漏れず印象派の影響を受けているのだが、いかにもヨーロッパ周辺地域の絵画らしく、その影響がかなり上品な域に止まっており、あまり先鋭化していないのが私のようなものにはかえって心地よかったりする。

 最終盤はポーランドが誇る偉人、コペルニクス、ショパン、キュリー夫人などに関する資料。意図は分かるのではあるが、正直なところこれについてはやや他の展示物とは異彩を放っていたような気がする。

 


 鮮烈な印象を残したのはレンブラントの作品であるが、正直なところこれのためだけでもはるばる広島くんだりまで来た価値はあったという代物であった。また常設展の方でも児玉希望の精密な絵画や、奥田元宋の珍しい「青い絵」なんかがなかなかに興味深いところで、かなり収穫は多かった。

 

 さてこれで遠征の主目的は終了。後は昼食をとって帰るだけである。昼食は当然のように牡蠣のつもりだが、問題は店の選択である。実のところはこれについては事前に目算をつけている。以前に訪問したことがある「KAZUMARU」が現在は昼の営業も行っているとのことから、ここを訪問しようと考えた次第。前回の訪問時に両脇から喫煙テロリストの煙にいぶされて閉口した経験からしばらく足が遠ざかっていたが、やはり味的にはここが一番と判断しての訪問である。

 雑居ビルの二階にある

 私の訪問時には他に客はなし。座敷の方に通される。注文したのは昼向けメニューの「牡蠣土手鍋会席(3990円)」

 まず小鉢が出た次に現れるのは生牡蠣。決して生牡蠣は好きというわけではない私だがこれはなかなかにさわやかでうまい。

 次は牡蠣のたたき。火が通って牡蠣が甘くなっているところに、何やら風味を加えているようだが、これは仕上げにごま油を使用しているとのこと。ごま油が決して牡蠣とケンカせずに風味豊かである。

 ここで登場するのが土手鍋。私は今まで土手鍋は今一つな料理と感じていたのだが、その私の先入観を完全にぶち壊したのがここの土手鍋。自家製という味噌が全く嫌みがなく、自然に牡蠣の風味を盛り立てる。私が土手鍋に対して感じていた臭み・えぐみなどのマイナス要素が全くない。味噌がダダ辛いものでなく、やや甘味を帯びているバランスが絶妙である。

 そしてカキフライの登場。単純な料理だが、火の通り具合が絶妙で実にうまい。

 締めは先ほどの土手鍋の出汁を使用して雑炊の登場。これは出汁がエグい場合には食べれたものではないのだが、先ほどの土手鍋の妙味のままの雑炊。味噌の味の濃さが全く嫌みにならない。まさに絶品である。

 これでデザートで終了である。やはり味の点ではこの店が一番であることを再確認した次第。特に土手鍋の味に関しては傑出している。前回の訪問時にはそれほどに感じなかったのは、やはり隣の喫煙テロリストに煙で燻されたせいか。改めてタバコが食事にどれだけ有害であるかも再認識した。やはり飲食店ではせめて分煙ぐらいは進めてもらいたいものである(本来は全面禁煙が正しいと考えている)。

 昼食にタップリと牡蠣を堪能。これで明日からまた頑張って仕事に励めるというものである。これにて広島での目的は完全終了。よって後は長い帰宅の途につくのである。早朝出発の往路と違って、昼過ぎに出発した復路の車内は結構の混雑。やはり往路よりも復路の方が体力的にも精神的にもキツイということを感じずにはいられなかった。

 

 久しぶりのかなり純然たる展覧会遠征であった。正直なところやはり広島日帰りはかなりキツイが、とにかく今は財政的にかなりキツイ(来週に大型遠征を予定している)のでこれは致し方のないところである。まあ牡蠣をたっぷり食ったせいか、意外と身体はシャンとしているので後に響くことはないと思うが。

 

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