展覧会遠征 神戸編7

 

 さてお盆の帰省で各地で道路の渋滞などが伝えられている。こんな時はやはり外に出かけずに家にいるに限る。にもかかわらず今年に限ってこの時期に出かけるのには理由がある。先日に乗り換えた車の慣らし運転をしておきたいからである。

 

 実はつい先日に私は、長年の相棒だったカローラ2と別れを告げ、新たなパートナーとして6年落ちの日産ノートを購入したのである。そのきっかけもかなりの偶然。私の老カローラ2は今年の9月で15年目の車検を迎えることになっていた。しかし最近は寄る年波には勝てず、エンジンの音は奇妙な上にアイドリング時には不安定になる、足回りは山道走行などではヘタリを隠せず、常にカラカラと怪しい音がしている状態。しかも最近になってついに塗膜に限界が来て、助手席のドアの上部から塗装の自然剥離まで起こっていた。果たしてこの状況で車検を通すべきかどうか、通すとすると一体いくらかかるやらと私は頭を悩ませていた。そこに突然に8710から電話がかかってきたのである。この電話は実は私にではなく、私の妹にかかってきたもの。彼女の乗っている車は私と同様に8710で購入した中古車だが、顧客リストからそろそろ乗り換えが期待できる客を狙い撃ちで電話をかけてきたようである。私の妹はまだ車を乗り換えるつもりがなく(私の車よりもかなり年式が新しい)、普段なら電話セールスなどは全く相手にしないのだが、この時は「今はセールなのでどんな車でも最低5万円で下取りします」と言われて、かなりやばい状態の私の車が頭に浮かんだのだという。

 

 車検と入れ替えの両睨みだった私は、とりあえず週末に店舗を訪ねる約束をしたわけである。そしてそこで出会ったのが6年落ちだが走行距離が1万キロ強という日産ノートだったのである。実は私はヴィッツなどの小型車を考えていたのだが、やはり山道走行ではパワー不足なのは明らかなことから、結局はカローラ2よりも一回り大きなクラスに乗り換えた次第。

 

 そして諸手続きを終えて、ようやく引き渡しになったのがつい先日。そこで私は長年の相棒のカローラ2と涙の別れをしてきたのである。考えるとこの車にはかれこれ10年以上乗ってきた。私が遠距離遠征をするようになったのはこの車からで、かなりのドライブを共にしてきたのである。眠い目をこすりながら高速道路を突っ走った長野遠征、バケツをひっくり返したような豪雨の中をヘロヘロになりながら走った北陸遠征、とんでもない山道をおっかなびっくりで走った四国遠征、数々の思い出が走馬燈のように甦る。彼のラスト遠征は先日の小浜遠征で、鯖街道を疾走したのが彼のラストランとなった。思えばよく頑張ってくれたものである。購入時には金の持ち合わせがほとんどなかったために「2ドアハッチバックの不人気車をくれ」と言って買った代物であるが、私にとっては実に名車であったと思う。万感胸に迫るものがあるが、もう頃合いと言えば頃合いであった。私は彼に「さらば」と一言だけ残して別れを告げると、新たな相棒となるノートを受け取って帰ってきたのである。

 

 しかし正直なところ新しい車の運転感覚に慣れるのは四苦八苦である。まずノートの方がカローラ2よりもハンドルがセンシティブであること、さらに車体の長さからくる旋回半径の大きさ、そして何よりもCVTの加速感覚は4速ATとは根本的に違うことなどが私の感覚をかなり惑わした。変速ショックがないままスルスルと速度が上がるので、現在の車速を体感しにくいのである。今後彼とは長いつきあいになるだろうことから、出来るだけ早いうちにその感覚の擦り合わせはやっておく必要がある。そういうことから、とりあえず手近なところに遠征するのが良かろうと判断した次第である。

 

 目的地としてはまずはゆったりと温泉。それから神戸で開催中の展覧会に向かおうというもの。これは山道走行と高速走行、さらには市街地走行も含めたコースを設定しようとして考えたルートである。

 

 まずはバイパスで姫路へ。そこから播但道に乗り換える。福崎ICまでは快調な走行。しかしICを抜けたところでお盆のせいか渋滞に出くわす。とりあえず次の市川南出口で高速を下りるとしばし山道を走行する。ハンドル感覚の違いもさることながら、車幅がわずかに広くなったことも狭い道では左側が不安になる原因となる。いささか苦労しながらようやく目的の笠方温泉せせらぎの湯に到着する。

 

 笠方温泉はかなり以前に訪問したことがあるが、その際には上のみはらし館の方で入浴している。今回は下のふところ館に入る予定。ただその前に昼食である。今回は家を出るのが遅かったことから、もう既に昼時になっている。昼食はふところ館の隣にある食堂「せせらぎ亭」で摂ることにする。注文したのは「せせらぎ膳(1480円)」

   

 普通の御膳で普通に美味しいというのが正直な感想。取り立てて難点はないが、特に印象に残るものでもないといったところか。とにかく無難ではある。

 

 昼食を済ませると隣のふところ館で入浴する。ふところ館、みはらし館とはよく命名したもので、確かにみはらし館の方は開放感ある造りに対して、こちらのふところ館は山のふところに抱かれる感じというところか。泉質はアルカリ単純泉でことさらに強烈なヌルヌル感はないが、肌に優しい湯。加温された内風呂、露天風呂と低温の内風呂がある。もっとも私の訪問時にはこの低温の内風呂がガキ共のプールと化していたのはちょっと。やっぱりこういう施設は夏休みは避けた方が無難ではある。

 風呂からあがってさっぱりすると、コーヒー牛乳やわらび餅を頂いて一服。安らぐひとときである。ただ今日の予定はまだある。一休みしてから次の目的地へと繰り出すことにする。

 

 山道や市街地を南下すると、福崎ICで高速に乗る。ただこの時に、私は播但道と姫路バイパスを経由して神戸に向かうつもりだったのだが、カーナビの誘導ミス(というか、私の設定ミスだが)によって中国自動車道に誘導されてしまう。そこでやむなく中国道経由のルートに切り替える(高速料金の無駄遣いだ・・・)。中国道を神戸三田出口まで走り、そこから六甲北有料道路、阪神高速7号北神戸線を経由して新神戸トンネルから三ノ宮に出るルートである。高速の走行は滑らかだが、やはりまだ運転の感覚が完全にはマッチしない。その内に渋滞の新神戸トンネルを抜けて、ようやく三ノ宮に出る。例によって大丸提携駐車場に車を停めると目的地へ。

 


「日本のアニメーション美術の創造者 山本二三展 ―天空の城ラピュタ、火垂るの墓、時をかける少女―」神戸市立博物館で9/25まで

 夏休みにつきもののアニメ関連展覧会。ジブリ関連と言えば、以前に男鹿和雄氏の展覧会は行っているが、今回は山本二三氏。展示内容は基本的には彼の手による背景画及びイメージスケッチ。時をかける少女のものなどでは二三雲とも呼ばれる彼独自のモコモコとした特徴的な雲を見ることが出来る。ただ展示としては心を打つのは火垂るの墓関連のイメージスケッチか。戦争当時の風景を蘇らせるためにかなりの取材を行ったというが、その綿密さがあの悲劇を盛り上げる背景になっていたわけである。のどかな田園風景と殺伐として寂しげな都会の風景の対比が印象に残る。

 もののけの森で記念写真が撮れる


 博物館の見学を終えると、例によって駐車場代がわりに大丸地下のユーハイムにフランクフルタークランツとバームクーヘンを買いに向かう。エレベータに乗ってふと広告を見ると、現在ミュージアムで与勇輝の人形展が開催中とのことなので立ち寄ることにする。

 


「昭和・メモリアル 与勇輝展」大丸神戸で9/22まで

 

 タイトル通り、まさに昭和レトロを感じさせるノスタルジックな人形によって知られている与勇輝の展覧会。

 昭和40年代生まれの私には、ここに繰り広げられている風景は同じ昭和と言ってもかなり遠い時代のものなのだが、それでもどことなく懐かしさを感じてしまうのはなぜか。彼の作品は子供の風景が多いが、貧しくとも子供が子供らしく生きていた時代の風景が多いのがその理由だろうか。こういう作品を見ていると、確かに日本はあの頃とは桁違いに豊かになったが、果たして今の子供は本当に幸福に生きているのだろうかという疑問も浮かんできてしまうのである。商業主義や拝金主義など大人の勝手な事情に振り回されて子供が子供らしさを失っていく。いつからこの国はそんな貧しい国になったのか。

 このような気持ちを掻き立てられるのは、とにかく彼の作品が優れた観察力に基づき、非常に緻密に製作されているから。改めてそれを堪能した次第。

 


 これで今回の遠征の予定は終了。帰途につくこととなった。今回の遠征で大分車の感覚をつかむことは出来たが、まだやはり自らの手足の延長という感覚までは至っていない。それは今後、おいおい馴染ませていくしかないようだ。

 

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