展覧会遠征 北海道・東北編

 

 さていよいよGW。当然のように大規模遠征の実行である。目的地であるが、本年度目標が東北・沖縄強化年間であることから、必然的に東北方面と言うことになる。東北と言えば去年の秋に東北・函館遠征を実行したが、早めの猛吹雪のせいで五能線視察を初めとする東北方面での計画の大半を中止せざるを得なかったということがあった。今回は満を持してのリターンマッチである。

 

 当然ながらそのための計画はかなり早期から万全の体制で立てている。目標は前回の宿題の達成及び北海道地域の未視察路線の制覇(私は鉄道マニアではないはずなのだが・・・)。行程としては基本的には往路は新幹線、復路は航空機、北海道内の移動は周遊切符を使用するものとする。また日程はGWの前後に有給休暇を1日ずつ追加した全11日間という史上最大のもの。なお前後に1日ずつ追加したのはGWの混雑を避けるということもあるが、何より5/6に帰ってきたら飛行機のチケットがかなり高いと言うことが最大の理由である。また前の1日はついでに東京地区の美術館遠征も合体させるという集中と効率化の考えに基づいている。なお有給休暇の取得に当たっては事前に仕事上の根回しをした上であることは言うまでもない。

 

 26日の仕事を終えるとそのまま駅に直行、新幹線で東京まで移動する。東京で前泊して明日は朝一番から行動しようと言う極めて綿密かつ意欲的な計画である。この計画性と行動力が仕事の方で発揮されていたら、今頃は部長ぐらいにはなっているのではないかとの声がどこかから聞こえてくる気もするが、もう今更どうしようもないことである。

 

 東京に到着すると南千住へ。例によって宿泊ホテルはホテルNEO東京。この安価なホテルがあるからこそ東京前泊なんてことも可能なのである。駅近くで夕食を摂るとホテルにチェックインする。部屋に入ったところでテレビをつければちょうど「カエルの王女さま」が始まっているのでそれをぼんやりと見る。実はこのドラマ、珍しく私が見ているドラマである。大河ドラマ以外で私がテレビドラマを見るのと言えば、「タンブリング」以来ではないだろうか。ブロードウェイスターだったという設定の天海祐希の演技が大げさでわざとらしいのがいかにもはまっていて面白い。もっともこのドラマ、視聴率ではかなり低迷しているとか。私の嗜好はすでに一般大衆と乖離してしまっているのだろうか。

 

 ドラマが終わると大浴場で入浴。長時間の窮屈な新幹線の疲れを抜く。明日の朝は比較的ゆっくりしているので、12時過ぎまでネットなどをしてから就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は8時起床。最初の目的地は上野である。支度を整えてホテルをチェックアウトすると南千住駅へ。しかし京浜東北線でまたも飛び込みテロがあったらしく、常磐線のダイヤは朝から滅茶苦茶らしい。今まで東京訪問でこれに出くわさなかったことはない。金持ちを徹底的に優遇して庶民を底辺につき落とした小泉インチキ改革以来、日本社会は相当病んでしまったようだ。それにしても迷惑な話。以前にネットで「電車に飛び込むような迷惑なバカは死んでくれ」という書き込みがあったが、内容自体は滅茶苦茶(というか意味不明)だが、その気持ちはよく分かる気がする。

 

 ようやく上野駅にたどり着くとトランクをロッカーに入れてから国立博物館を目指す。生憎と朝からかなりの雨でびしょ濡れ。ただこの悪天候が幸いして博物館自体はかなり観客が少ない好条件である。

 


「ボストン美術館 日本美術の至宝」東京国立博物館で6/10まで

 

 ボストン美術館は東洋美術の殿堂とも呼ばれており、アーネスト・フェノロサや岡倉天心によって選ばれた日本にあれば国宝級と言われるような名品が揃っている。それらの名品の中からの90点の里帰り展である。

 仏像・仏画、さらには工芸品など展示品は多彩であるが、やはり個人的には最大の見所は長谷川等伯、伊藤若冲、曽我蕭白の絵画。特に白眉は蕭白の「雲龍図」。龍の力強い表現に圧倒されるが、よく見るとどことなくユーモラスでもあるのがさすがに蕭白。会場内が空いていたおかげで心行くまで堪能することが出来た。


 海外に流出した文化財は多いが、本展で展示されている名品がまさにそれである。今回の展示品の中には、明治期に廃仏毀釈の嵐が吹き荒れてあわや破壊されるところを「救出」された名品もある。当時の日本にはバーミヤンの仏像を破壊したタリバーン並みの狂信的な神道原理主義者が闊歩していたせいである。概してこういう連中は頭が悪いので、極端な破壊に走っている。ちなみに廃仏毀釈の目的は神道と仏教の分離だったのだが、そもそも神道の総本山の伊勢神宮自身が本地垂迹で完全に神仏習合してしまっていたのだから、いくら狂信者がわめいたところで土台不可能な話であり、結局は貴重な文化財を多く失って国の価値を損なっただけであった。権力の中枢近くに宗教勢力が陣取るとろくなことが起こらないという典型的な例である。

 

 展覧会の後は今や国立博物館の定番にもなっている感のある鶴屋吉信の「あんみつ(630円)」を頂いて一息つく。これで気力を回復させると再び雨の中へと繰り出す。次の目的地は国立科学博物館である。


「マチュピチュ発見100年 インカ帝国展」国立科学博物館で6/24まで

 

 南米で隆盛したインカ帝国について、考古学、人類学、歴史学の3つの観点から迫るという展覧会。なおインカ帝国だけに的を絞った展覧会は非常に珍しいという。確かにインカ文明展はアステカ文明展などと併せて開催されることが多いように思われる。

 高地で栄えたインカ帝国は、高度な石組み技術によって山上にマチュピチュのような都市を建造し、食糧確保のための段々畑を整備した。また帝国各地にインカ道と呼ばれる道路を張り巡らし、その道を伝令が頻繁に行き交うことで王は帝国全土の情報を集めて統治を行っていたという。

 当時のインカ帝国の様子を考古学的な史料及び発掘されたミイラの調査などから明らかにしているが、本展がさらに特徴的なのはスペインの侵略によってインカ帝国が滅びる過程に関する歴史的史料も併せて展示してあること。これによってインカの勃興から滅亡までのすべてを把握できる。


 3D映像を使用したりなどかなり展示が凝っており結構堪能できた。また以前から知っていたことではあったが、やはり欧米人は野蛮であり、その野蛮性とさらにキリスト教という攻撃的な宗教(キリスト教が慈愛を唱えるのはあくまでキリスト教徒内だけであって、他宗教に対しては徹底的な排除を主張しており寛容性は皆無である)の組み合わせが欧米が全世界に覇を唱えた最大の理由であるということが改めて認識された。

 

 見応えのある内容だったが、おかげで予定よりも時間を費やしたので次の目的地へと急ぐ。

 


「ユベール・ロベール−時間の庭」国立西洋美術館で5/20まで

 

 フランスの風景画家ユベール・ロベールが活躍した18世紀は、ポンペイなどの遺跡発掘で湧いた時代であるという。彼はそのような時代の空気を受けて、古代のモチーフを用いた風景画で人気を博した。彼の風景画は必ずしも写実に基づいているわけではなく、イメージを重視して適当にモチーフを組み合わせて構成していたようであるが、そこから端を発したのか後には庭園デザイナーとして名を上げたという。

 彼の風景画が多数展示されているが、確かにザッと見ただけでも「一般ウケしやすい絵画」という印象は受ける。構図その他が計算され尽くしており、画面の中で劇的効果を上げるようにしたかなり作為的な絵画である。同様の傾向は彼のデザインした庭園に端的に現れており、個人的にはいささか作り込みすぎという印象を受けた。なかなか評価が難しい芸術家でもある。


 これで上野での予定は終了。とりあえず昼食を摂るべきだが、かなり疲れていてわざわざ店を探す気力が出ない。そこで工夫のないことだが上野駅のぶんか亭で昼食を済ませる。

  

 昼食を済ませて一息つくと、トランクを回収してから乃木坂へと向かう。次の目的地は国立新美術館。ここで開催されている2つの大きな展覧会が本遠征の主目的の一つでもある。

 


「セザンヌ−パリとプロヴァンス」国立新美術館で6/11まで

 

 印象派の画家の代表の一人として常に名が上がるセザンヌであるが、私は個人的にはあまり相性の良い画家ではない。どうしても私の目から見ると彼の作品はただの「下手な絵」に見えるのである。本展ではセザンヌの初期の作品から生涯をたどるようであるので、この私の印象が果たして変わるかどうかが興味深いところ。

 初期のセザンヌの作品はかなり古典的な描き方をしていたようである。しかしこの時代の絵画はより一層「ただの下手な絵」にしか見えない。私が気になるところのデッサンの崩れやバランスの悪さのようなところがもろに現れている。

 その後、印象派と出会うことで色彩が一変して、いわゆるセザンヌらしい絵になるのであるが、やはり私の目には彼の作品で面白いのは風景画よりも静物画だなと写った。風景画では不自然に感じられる描写が、静物画では一つの舞台装置のような印象で、こういう仕掛けもありと思われたからである。

 結局は私のセザンヌに対する根本的な認識を変化させるところまではいかなかったようである。やや残念。



「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西洋絵画の400年」国立新美術館で7/16まで

 

 西洋絵画について時代を追って流れを紹介するというタイプの展覧会。そういう点では初心者向きである。

 序盤はルネサンスやバロックなど古典絵画。これが玉石混淆。レンブラントやルーベンスなどはさすがなのだが、中には「?」と感じる作品も。

 繊細で華麗なロココや新古典を過ぎると日本人には最も同じみな印象派である。一応一渡りの画家のそれぞれの特徴をつかみやすいような作品が並んでいるのでお勉強には良いと思われる。ただ個人的にはなぜかあまり心をわしづかみされるような作品はなかった。

 最後は近代から現代。アヴァンギャルドとかになってくると私には「うーん」なんだが、マティス辺りはそれなりに面白い作品があり。

 結局は展覧会全体としての印象は希薄。やはりどうしてもこういうテーマ展覧会は焦点がハッキリしないきらいがある。これは致し方ないこと。


 これで東京での予定は終了である。重たいトランクを引きずりながらの移動でかなり疲れたが、とりあえず今日の宿泊地へと急ぐことにする。今日は大宮で宿泊する予定。これは明日に東北新幹線で東北に乗り込むためである。在来線で大宮に向かうが、とにかく東京は例によっての殺人的なラッシュ。これを体験するたびにつくづくこの都市はいびつな都市だと痛感する。このようないびつな都市で生活しているとそのうちに精神を蝕まれて列車に飛び込むような輩も出てくるのだろう。以前から言っていることだが、やはり東京の「正常化」のためにも早期に東京の解体が望まれる。

 

 大宮に到着した時には既に日は傾きつつあった。足は死んでいるし体はクタクタ。その体に鞭打ってホテルまで移動。今日の宿泊ホテルは「スーパーホテルさいたま・大宮」。これも私がたまに使用するホテルチェーンである。ポイントは大浴場つきであることと宿泊料。大宮のホテルの相場は高いので実際に選択に苦労したのである。ホテルまでは徒歩で10分ちょっと(実際は途中で道に迷ってかなり大回りをする羽目になったが)。

 

 ホテルにチェックインして一息つくと夕食に繰り出す。調査によると駅前にトンカツ専門店がある模様。立ち寄ったのは「とんかつグリル三和」。ビルの地下にある小さな店である。注文したのは「とんかつ定食(950円→890円)」

 しばらく待った後、サクサクに上がったトンカツが出てくる。安価にもかかわらず結構厚い肉である。断面を見ると適度に脂の入った良い肉。これに自家製のソースをつけて頂く。なかなかに美味。添えてある小鉢や味噌汁などの味も良く、とにかくCPの高い店である。この店は当たりだった。

 

 腹を膨らませてホテルに戻ると大浴場で入浴。ここの温泉はどうやら運び湯のようで栃木で湧出したアルカリ単純泉。肌当たりが優しくて若干ヌルヌルする湯。これでじっくりと温まって体の疲れを抜く。とかく美術館巡りは体力勝負になりがちだが、今日一日で1万8千歩歩いている。大遠征の本番は明日からだというのに、今日だけでかなり疲れてしまった。明日以降の行動のことを考えるとこの疲れを残すわけにはいかない。

 

 入浴後は部屋でまったり。この原稿を打ったりテレビを見たりで過ごしていたのだが、NHKのニュースを見ていると北海道の石勝線の夕張駅手前で雪解け水によって路盤の土砂が流出して線路が宙ぶらりんになっているというニュースが飛び込んでくる。幸いにして路盤流出が列車の通過後だったために事故は発生しなかったようだが、かなり大規模流出しているので現在は復旧の目処が立っていないとか。思わず「あちゃー」の声が出る。今回の遠征で立ち寄る予定だった路線である。事故現場を見ているととても2〜3日で復旧可能とは思えない。これは今回のスケジュールを組み直す必要があるようだ。急遽駅探を駆使してスケジュールの変更作業を行う。とりあえず後は出たとこ勝負である。報道ステーションが終わった頃には眠くなってきたので就寝する。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は5時半に自動的に起床。そのまま出発支度をするとホテルで軽い朝食。スーパーホテルも朝食バイキングがあるが、やはりドーミーインやルートインに比べるとかなり簡易である。手早く朝食を済ませるとチェックアウト。大宮駅へと急ぐ。

 

 さて今日の予定だが秋田への移動である。ただし単に秋田に移動するだけなら秋田新幹線で直行だが、それでは意味がない。今回はあえて北上で途中下車し、北上から北上線で横手に立ち寄る予定。横手には横手城や秋田県立近代美術館などがあるのでそれに立ち寄るのと、未視察である北上線の視察が目的。

 

 大宮から盛岡行きのはやてに乗り込む。今日からGWということで大宮駅は旅行者でごった返している。またはやての指定席も満席だという。私は当然ながら一ヶ月前に指定席を確保してある。

 

 座席でウトウトしているうちに列車は仙台に到着する。仙台で大量に下車があるかと思っていたが案に反して下車はそれほど多くなく、むしろ次の古川の方が下車が多い。くりこま高原ではほとんど乗り降りはないが、後は各駅ごとにそこそこの降車がある。しばらくしてようやく北上に到着。ここで数十人が降車する。

 

 北上からは北上線に乗り換えである。北上線は北上と横手とを結ぶ単線非電化路線である。北上線が出ているのは行き止まりの0番ホーム。ここにセミクロスシートのキハ100の二両編成が停車しているのでこれに乗車する。

左 北上駅0番ホーム  中央・右 北上線車両

 東北本線と別れた路線は西に向かう。沿線に北上の住宅地が続くのは次の柳原まで、そこから先は田んぼの中に住宅がたまにあるという状況。そのうちに前方に雪をかぶった山脈がだんだんと近づいてくる。岩沢からはいよいよ山岳地帯に突入。山間の集落をつなぎつつ列車は走る。和賀仙人では対向車とすれ違い。山岳地帯では未だに雪が残っている。温泉付き駅舎で知られるほっとゆだを過ぎると北上線も後半突入。ようやく山岳部を抜けるとまもなく横手である。

沿線風景

 横手駅は最近になって高架化されたという。ここで途中下車するとトランクをロッカーに放り込むと駅前のバスターミナルへ移動する。ここからバスで秋田県立近代美術館のある秋田ふるさと村に向かう。

 横手駅

 秋田ふるさと村は郊外の大型施設。いわゆる産直コーナーののようなものから美術館まで雑多な施設の混合体である。横手はモータリゼーションがかなり進んでいるようで、駅前などの中心部よりも郊外の大型ショッピングセンターなどの方が活気がある。

   

秋田ふるさと村内部は物販コーナー・・・というか、これだと萌えコーナー

 美術館を訪れる前に飲食コーナーで横手焼きそばを食べる。目玉焼きが乗っているのが特徴だとか。ソースは出汁が効いている感じ。例のB1で有名になったメニューだが、そんなに特別な仕掛けはないように思われる。それにあのB1はソースものが多すぎるような気も。

   

 とりあえず腹を満たすと秋田県立近代美術館へと向かう。美術館は高層建築で展示室は5階と6階。

 


「安野光雅の絵本展」秋田県立近代美術館で6/17まで

  

 安野光雅は絵本などで知られているが、そもそもはポスターなどのデザインを手がけていた。その安野光雅のいろいろな分野の作品を集めた展覧会。

 本展の展示作は単純な絵本よりも一ひねりした仕掛けのあるものが中心。それを見ていると、とにかく彼が物の形態に関して非常に鋭い感覚を持っていることがよく分かる。作品にはことごとくスパイスが一味効いている印象。同じ感覚は以前に福田繁雄展で感じたことがあるが、やはりデザイン畑出身者の共通の素養なんだろうか。


美術館下の立体彫刻コーナー

 美術館の見学を終えると帰りのバスまでに若干の時間があるので飲食コーナーをうろつく。すると稲庭うどんの店「稲庭うどん 佐藤養助」が目に付いたので入店。稲庭うどんは秋田の名物だが、ここはどうやら老舗とのこと。注文したのは「せいろ(醤油)(750円)」

  

 太目の素麺という雰囲気だが、味は確かにうどん系である。太さの割には腰が強いのが特徴的。関西人としてはうどんとは別物のように思えるが、これはこれでなかなかにうまい麺類である。横手焼きそばと稲庭うどんという二大名物を押さえたので、これで横手での目的は終了・・・していない。そもそも横手に来た目的の一つは横手城の見学である

 これは横手城・・・ではなくてすたみな太郎

 腹ごしらえを済ませるとバスで一旦駅前ターミナルまで戻ってから、すぐに別のバスに乗り換える。次の目的地は「横手城」。現在は横手公園として整備されているという。横手病院前でバスを降りると横手公園を目指す。登り道は足下は若干悪いが道自体は整備されていて楽に登れる・・・と言いつつ、それでも息が上がってしまう自分の体力の情けなさ。

左 横手城遠景  中央 公園入口  右 登り口

 ヒーヒー言いながら上まで登ると立派な天守閣が目に入るが、これが典型的なインチキ天守。鉄筋コンクリートで史実に無関係に作られたもの(実際の横手城には天守閣はなかった)であるし、そもそもこの天守が建っているのは二の丸である。もっとも横手市の方もインチキ天守であることを弁えているのか、この建物は公式には「展望台」ということになっている。確かに中は普通の展望台だが、外から眺める分には意外に絵になるのも事実。

 横手城「展望台」

 横手城は築年代には諸説あるようだが、ハッキリしているのは戦国期に小野寺氏の本拠となり、関ヶ原後に小野寺氏が改易された後には佐竹家の所有となり、一国一城令下でも戦略的拠点として重要として破却を免れ、佐竹一門の戸村氏が城代として明治を迎えたということ。なお天守は存在しなかったことが知られている。

 展望台に登った後は本来の本丸を見学。下からの登り口は本丸と二の丸の間の堀切のようなところで、本丸は二の丸の反対側の一段高いところにあり、今はお約束の神社になっている。裏手は結構切り立っており、こうして見てみると横手城はそれなりの防御力を有している。ただ比高自体はそう高くないので、そう極端に堅固という印象はない。

園内は桜の名所でもある

ここが本丸

本丸風景

 横手城の見学を終えるとバスで駅前まで戻ってくる。ここからは奥羽本線経由で秋田までの移動である。

 

 しばらく待った後に到着したのは三両編成の701系。乗客は決して多くはない。沿線は延々と田圃であり、まさに秋田米どころ。横手の次は後三年の駅。名前から分かるように後三年の役のゆかりの地である。ちなみにこの読みは言うまでもなく「ごさんねん」なのであるが、駅に到着した途端に後ろの方でオッサンが「あとさんねんか」と叫ぶ声がしたので吹きそうになった。オッサン、あまり大きな声で無学をさらすもんじゃない。

左 701系  中央 後三年の駅  右 沿線はこんな感じ

 大曲で秋田新幹線に遭遇。ここから秋田までは在来線の狭軌と新幹線の標準軌が単線並列という区間になる。当初は三条軌も検討されたようだが、結局はそういう中途半端なものではなくて単線並列になった模様。しかし単線の新幹線と言うのも・・・。

 

 1時間ほどで秋田に到着する。久しぶりの秋田である。しかしホテルに入る前にまだもう一つ予定がある。ロッカーにトランクを放り込むとバスターミナルへ急ぐ。ここから秋田城に行くつもり。秋田は駅前に佐竹氏が居城にしていた城があるが、これは秋田城ではなくて久保田城。秋田城とは古代にこの地を治めるために築かれた拠点で、宮城の多賀城のようなものである。ここに城柵が築かれたのは奈良時代とのことだが、その後に蝦夷との最前線として国府がおかれて防御が強化されたという。蝦夷の反乱に何度も巻き込まれた挙げ句に前九年の役で秋田城介が常在しなくなったために衰退したとか。近年になって遺構が発掘調査されて整備されているという。

 

 「秋田城」まではバスでかなり走る必要がある。20分以上走ってから護国神社入口で下車するとそこから秋田城はすぐである。

左 城内模型  中央 復元された東門  右 版築工法による城壁

 現在は東門と政庁跡などが復元整備されている。版築工法で造られた壁などが立っていてなかなかに趣がある。やはり雰囲気は多賀城と類似しているが、地形的には多賀城よりは堅固であると言える。

東門と復元城壁

東門をくぐった先の風景

 城内の起伏はほとんどないが、城域は非常に広い。この辺りもやはり古代の城郭兼政庁である。こうして見ていると、多賀城が100名城に入るなら、ここも100名城でないとおかしいのではという気持ちがかなり湧きあがってくる。何にしろ、ここは私の100名遺跡には入ることになるだろう。

左 政庁跡  中央 政庁跡模型  右 建物跡

政庁跡

 バスで駅まで戻ってくるとホテルにチェックインすることにする。今日の宿泊ホテルはイーホテル秋田。ホテルまでは結構距離があるので荷物を引きずっての移動は少々辛い。ホテルは何やら商業施設が入居した建物の上にある。

 

 とりあえずチェックインを済ませると夕食である。夕食はホテル近くの郷土料理店「無限堂」で摂ることにする。「白魚の刺身」「比内鳥のみそ漬け燻り」「きりたんぽ鍋」「はたはたの煮付け」を注文する。

 いずれもなかなかに美味。ただ以前から東北での食べ物に対する違和感としてひっかかっていたことだが、それが今回ハッキリと分かった。それはやはり東北の味付けは「しょっぱい」ということ。辛いではなくてしょっぱいのである。この辺りがやはり関西人の私の好みとはズレる。特にきりたんぽ鍋などは、私ならもっと甘めの味付けにするだろうと感じた。この辺りは土地柄なんだろう。

 

 夕食を済ませてホテルに戻ると大浴場で入浴。今日も昨日に続いてかなり動き回ったので足に相当な負担が来ている。疲れを明日に残すわけにはいかないのでじっくりと身体をほぐしておく。入浴後は洗濯を済ませてから床につく。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝の目覚めはあまり良くない。どこからか常に空調の音のような低い響きが聞こえていたし、その上にやたらとやかましい奴がどこかにいて、夜中まで室内で柔道でもしているかのような響きを立てていてうるさくてよく眠れなかったのである。それでも5時半になると勝手に目が覚めるサラリーマンの悲しい習性。とりあえず荷物をまとめると朝食を摂りにレストランへ。6時半からのレストランは既に満員。座席を確保するのにも苦労する状態。朝食を終えるとチェックアウト。秋田駅まで少々遠いのでバスで移動することにする。

 

 さて今日の予定だが、去年の秋からの宿題の解決である。去年の秋、私は五能線のリゾートしらかみに乗車するつもりでチケットを手配していたのだが、折からの強風で五能線が運行休止、予定の大幅変更を余儀なくされたのである。今回はそのリターンマッチ。当然のようにリゾートしらかみのチケットは事前に手配してある。

 

 リゾートしらかみは4両編成の快速。車両は特製で普通席の車両とボックスの半個室がある。私のチケットはこのボックスの3号車だった。

左 リゾートしらかみ  中央 3号車ボックスシート  右 普通車

 秋田を出ると東能代までは奥羽本線を走行。ここはもう見慣れたルート。山ばかりで特に何があるわけではない。東能代ではスイッチバックと共に10分の停車。この時が観光客の記念撮影タイム。

東能代では記念撮影タイム

 東能代でスイッチバックするといよいよ五能線に突入である。5分ほどで次の「バスケの町」(なぜ?)能代に到着、海が見える始めるのはこの能代を越えてしばらくしてから。次のあきた白神では桜祭り開催中とのことだが、降車客は皆無。さらに岩館駅でも降車はゼロ。

  あきた白神での桜祭り

 十二湖までの区間で海を眺めるための低速走行エリアがある。しかし本当に驚いたのはそこを過ぎてから。線路がまさに海岸の際を走行する部分がある。なるほど、これなら海が少し荒れると線路が波を被るわけである。それに完全に吹きっさらし。五能線が強風に弱いわけである。

まさに海岸吹きっさらしである
 

 十二湖駅ではかなりの降車客がいる。ここでリゾートしらかみ1号を降車し、十二湖を見学してからリゾートしらかみ3号で先に進むというのは観光モデルコースの1つらしい。

  奇岩の連続

 十二湖を過ぎてウェスパ椿山にさしかかる辺りで路線は半島に向かって大きくカーブする。その時に今まで進行方向右側に見えていた白神山地が進行方向左側の正面に見えるようになる。これが絶景ポイントの2つ目。ウェスパ椿山は宿泊施設があるらしく、ここでの乗り降りもかなり多い。

    白神山地

 深浦駅は能代以来初めての集落らしい集落。ここで反対方向列車と行き違い。反対側から来たのはリゾートしらかみ2号で青池編成である。

   

深浦駅でリゾートしらかみ青池編成とすれ違い

海岸は場所場所でその表情を変える

千畳敷周辺

 千畳敷を過ぎると鰺ヶ沢。ここを越えると路線は内陸に入ってきて車窓には見るべきものがなくなってくる。こういう時のためにこの手の観光快速はイベントを用意しているものである。例えばみすず潮彩の場合は紙芝居が始まったが、この列車の場合は津軽三味線の生演奏が行われる。

  津軽三味線の生演奏

 津軽三味線を聞いているうちに列車は五所川原に到着、私はここで途中下車をすることにする。目的はここから津軽中里を結ぶ津軽鉄道の視察。日本最北端の私鉄を自称している鉄道路線である。

五所川原に到着

 

 ただし私が乗車するつもりの列車まで2時間程度の余裕がある。そこでこの間に五所川原の見学と昼食を終えるつもり。まずはトランクをロッカーに入れて身軽になると、立佞武多の館を目指すが、その前にその手前のそば屋「亀乃屋」で昼食にする。注文したのは「天中華(700円)」「親子丼(小)(450円)」

 

 天中華はホタテの天ぷらが入った中華そば。かき揚げのように見えるがこれはホタテである。さすがに青森。このホタテの天ぷらが絶妙にうまく、縮れ麺ともよく合う。一方親子丼は椎茸ベースの出汁という独特のもの。個人的には椎茸はそう好きではないので、これは私の好みとは若干ずれる。

 立佞武多の館

 昼食を終えると立佞武多の館に入館。内部には3機の立佞武多が展示されており、その内の1機は今年新造されたものとか。この建物は展示施設兼保管庫であり、祭りの時には建物の横が開いてここからねぶたが出陣するらしい。その時の様子は映像で紹介されていたが、まさに「エヴァンゲリオン、リフトオフ!」という感じで、これがまた格好良い。そう言えばちょうど3機あるし、ピッタリである。

 映像紹介の次はお囃子の実演がある。これが実に単純なリズムなのだが、単純であるが故に何やら日本人の精神の奥底に直接作用するようで、いやがおうにも気分が盛り上がることを感じる。やはり私の精神の奥底にある日本人の血は和太鼓のリズムに感応するようである。

 

 立佞武多の次は隣の美術展示をのぞく。地元ゆかりの芸術家の作品中心。木工作品などに面白いものがあり。

 

 遠征計画立案段階では五所川原で2時間もつぶせるだろうかと危ぶんだのだが、実際には軽く2時間つぶせてしまった。慌てて五所川原駅にとって返すとトランクを回収、津軽鉄道のチケットを入手する。津軽鉄道沿線の芦野公園で現在桜祭りが開催されているため、ツアー客が来ているようでやけに乗客が多い。その上に一般客も増えているので駅は大勢でごった返している。津軽鉄道の普段の実力は知らないが、この花見だけでかなり儲けているのは間違いない。

左 津軽五所川原駅  中央 内部は観光客で一杯  右 こ、ここにも萌えが・・・

 ホームに入るといわゆるお約束パターンの気動車があったのでこれに乗るのかと思っていたらさにあらず、前の方からかなり古い客車がやってくる。これは津軽鉄道名物ストーブ列車らしい。今はシーズンオフのはずだが桜祭りに合わせた臨時運行などで引っ張り出されてきたらしい。相当に古い客車を機関車が引っ張る運行。乗り心地は決して良いとは言えないものの、車内の鉄道マニアはこの方がヒートアップしている。ちなみに車内は満員である。

左 これが一般的なディーゼル車  中央 とてつもなく年代物の客車が入線  右 内部には石炭ストーブが

左 それにしても年期物である  中央 扇風機は取り外してある模様  右 アテンダント

 やがて列車はゴットンという感じで重々しく発車する。沿線はまさに田んぼや畑の中で何もない。アテンダントの説明を聞きながら完全に観光列車である。

 沿線風景

 毘沙門駅を過ぎるとそこからは次の嘉瀬駅まではひたすら直線区間。この区間ではその直線線路を撮影する鉄道マニアが多数。私もついでに一枚。

    毘沙門駅からの直線レール

 しばしのんびりと沿線の撮影を行っていた時、突然に異変が発生した。私のKiss Digitalの電源が突然に落ちたのである。電池がなくなったのかと考えて新しいバッテリーに入れ替えるが全く反応しない。電源が全く入らない状況になってしまったのである。以前から時々エラーが出ることはあっても、その際はバッテリーを抜けば初期化されて回復していた。しかし今回は電源そのものが全く入らない。どうやら致命的なトラブルが発生した模様である。このカメラの古さとこれまでの過酷な使用状況、更には最近の調子を考えると、ついに来るべき時が来たということだろうが、よりによってこんなクリティカルな場面で発生しようとは・・・。思わず天を仰ぐ。絶望的な気分で窓の外に目をやると、まさに私の今の心境をそのまま物語るかのような駅名が・・・。

 Kissデジ最後の写真

今の心境は・・・ 

 暗澹たる気分で終点の津軽中里に到着、折り返しまでの時間で何とかカメラが復旧しないかトライするが、結果は絶望的状況から全く改善されない。どうやら諦めるしかないようである。とりあえず非常用サブカメラとしてCoolPixも持参しているが、一眼レフよりは使い勝手も性能も劣りすぎてこれからの遠征をこれで切り抜けるのはかなり困難だと言わざるを得ない。

左 津軽中里駅舎  中央 駅前風景  右 機関車

左 味のある駅名票  中央 最北の私鉄  右 転車台らしきものが

 津軽中里で折り返しの列車に搭乗すると五所川原に戻る。帰途は芦野公園で桜見物の乗客が大量に乗り込んできて、最終的には通勤ラッシュ並の混雑。津軽鉄道は「一年を十日で暮らす良い会社」と言うところか。まるで昔の相撲取りである。

 

 五所川原でJRに乗り換えると弘前へ向かう。五所川原−川部間はそこそこの距離があるが、風景は田んぼと小集落の連続という変化に乏しいもの。途中でリゾートしらかみとすれ違うと30分ほどで川部に到着する。これで五能線視察完了である。五能線は沿線人口の絶望的とも言える少なさを考えると、観光路線として運営していくしかないだろう。そういう点ではリゾートしらかみの導入は正解である。ただやはり利便性の点から観光面もいずれは自動車に食われていくように思われ、そうなると川部−鰺ヶ沢の東半分しか残らない可能性が高い。せめてもう少し本数があれば良いのだが・・・。

 

 川部から弘前への移動の間に今後の作戦を考える。やはり本遠征のこれからを考えると一眼レフなしというのはかなりつらい。しかも明日は弘前城の桜祭りを見学するつもりであり、Cool pixだけではかなり寂しい思いをすることになるのは確実である。それに今のカメラが性能的にも耐久性的にも限界が来つつあるのは明らかであり、どうせ今年中にカメラの買い換えは不可欠と考えていた。となるとベストな選択肢はカメラを直ちに購入すること。ただ問題は弘前に大きな電気屋があるかということと、また電気屋があったとしても価格がどうかである。もしネット通販よりも2万円以上も高いなどということになれば、さすがにここで購入に踏み切ることは困難である。とりあえずまずは調査が必要である。

 

 弘前駅に到着するとすぐに行動を開始する。弘前での宿泊ホテルは駅前の弘前屋。この時期の弘前のホテルは数ヶ月前から大抵が満室で、その中でようやく見つけたホテルである。現地に到着してみるとかなり小さいホテルでどうやら家族経営の模様。外から見た時は「これはハズレか」と感じたのだが、中に入ってみると存外雰囲気はよい。とりあえずホテルにチェックインするとまずはネットを接続して弘前の電器店を調査する。その結果、駅の東側にヤマダ電機とケーズデンキがあるらしいことがわかる。またヤマダ電機のある場所には市内ループバスでたどり着ける模様。意を決してすぐにバス停へ移動する。

 

 ヤマダ電機に到着するとまずは店員を捕まえてKiss X5の価格を確認する。機種についてだが、もう1ランク上の機種にするかどうかに迷いがあったのだが、もう1ランク上の機種の場合は本体が重くなるということが難点であった。しかし急遽の購入になったことが私から迷いを振り切った。とにかく直ちに購入となると安い機種の方が良いし、そもそも私は写真の出来が云々というレベルの撮影をしておらず、むしろ抱えて山を登るというような時に重量の方がシビアに響いてくるのでこの選択で正解だろう。ただ問題は価格である。もしネットよりも1万円以上高いなら悩むところであったが、店員の口から出た価格はネット価格と同レベルであったために即決する。それにしてもまさか旅先で新しいカメラを購入することになろうとは・・・。全く人生とは分からないものである。この調子で旅先で生涯の伴侶との電撃的な出会いなんてものはないのだろうか・・・。

  購入したばかりのX5にタムロンレンズを装着して準備完了

 ヤマダ電機の大きな紙袋を持っていったんホテルに戻ると、カメラの電池を充電器にセットしてから夕食に繰り出す。駅の近くには飲食店はあまり多くないので、ざっとネットで調査して見つけた中華料理屋「豪華楼」(すごい名前だ)を訪問する。高級中華屋のようであるが、夜のお一人様用のセットメニュー(1890円)があるのでこれを注文する。中華料理店は一人では入りにくいので、それをカバーする良い工夫である。昼食用に中華ランチを用意している店は多いが、夜にこういうのを出すのは珍しい。メインを2点に点心を1点、麺類か飯類を1点選べるようになっているので、エビチリと角煮、エビシューマイに蟹炒飯を注文する。

 料理はいずれもなかなかうまい。特にエビチリのチリソースはかなり私好みの味。軽く醤油をつけて頂くエビシューマイも美味であった。最後にデザートとして小さな杏仁豆腐が出てきたが、これが美味であったので追加デザートとして王様杏仁豆腐を注文する。

 まさか弘前で中華になるとは思わなかったのだが、予想外に堪能してしまった。ホテルに戻ると入浴、さらに充電が終了した電池をカメラにセットしての動作チェック。同じシリーズのカメラだけに操作に戸惑うところはないが、それでもいろいろと機能が増えていてデジタルNを使っていた私は完全に浦島太郎である。とりあえず普通に使える必要があるので寝る前にマニュアルに最低限の目を通しておく。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝も6時前に自動的に目が覚める。とりあえずシャワーで目を覚ますと荷物の梱包。カメラのでかい段ボールはホテルに棄てていくとして、それでもカメラが一台増えているのでトランクがギュウギュウ。かといってデジタルNを捨てていくと言うわけにもいかないし・・・。

 

 7時にはホテルで朝食。典型的な朝定食だがなかなかうまい。食事を終えるとすぐにチェックアウト。今日は昨日立ち寄れなかった「弘前城」の桜祭に出かける予定。弘前駅の臨時ロッカーにトランクを入れると路線バスで弘前城を目指す。100円の市内ループバスは10時からの運行なのでそれまでは路線バスしかない。ただし桜祭りの期間は混乱を避けるために路線バスも100円にしているようだ。

 

 路線バスで市役所前で降りると目の前に見事な桜の並木と岩木山が広がる。思わず「おーっ」という声が出る。来て良かったと同時にカメラ購入の決断をしたことが正解だったと感じる。それにしても一番驚くのはカメラの感触の違い。以前のカメラではシャッターの動作がガリッとどこか引っかかるような感じがあったのに対し、新しいカメラは非常に動作が軽い。改めてあのカメラは既にかなり劣化が起こっていたことを痛感する。それに今度のカメラは液晶画面が大きいので写真の撮れ具合をその場で確認できるのは助かる。以前のカメラは液晶画面が小さいので、撮れていると思っていたらピントがずれていたなんてことが多々あったのに対し、今度のカメラならそんな失敗はしなくて済みそうである。

左 岩木山と桜  中央・右 弘前城大手門

 弘前城の大手門は相変わらずの風格である。それをくぐると辰巳櫓を見ながら再建なった杉の大橋を渡って二の丸エリアへ。ここは前回の訪問では通れなかったところである。二の丸を進むとすぐに天守が見えてくる。この現存天守は小さいものだが、桜が咲くとなかなかに絵になるのである。

左 城内へ入場  中央 辰巳櫓  右 杉の大橋

左 未申櫓  中央 大橋を渡る  右 南内門
 

 有料エリアに料金を払って入ると桜見物。しだれ桜はまだ咲いていないが、ソメイヨシノは満開に近い状態。なかなかに美しく、弘前の桜祭りが全国から観光客を集める理由も納得できる。

 

天守は角度によってその表情を変える

最早美しいの一言

 北の郭の武徳殿休憩所でアップルサイダーを飲んで一服すると、前回の訪問時には見学しなかった城の北側に回り込む。波称橋、春陽橋の周辺はかなり桜の綺麗なところ。四の丸の護国神社手前は花見の場所取りのビニルシートが並び、大量の縁日が出ていてこれはどこでも見かける光景。そこを抜けて北上すると北門である。

 

春陽橋からの風景

護国神社周辺

北門周辺

左 北門  中央 北の堀端、奥に岩木山  右 同じく堀端

  弘前城を北に抜けると仲町の見学。ここはかつての武家屋敷の名残のある街角で、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

仲町の町並み  左上 国指定重要文化財の石場家住宅

 しかし確かに町の区画割りなどに明らかに武家屋敷の名残は見られるものの、家屋自体は新しい普通の家が並んでおり、角館のような統一感やインパクトはない。観光地を志向するならもう一演出必要だろう。もっともこの地域は普通の住宅街だし、観光に関しては弘前城という超一級の観光地が近隣に控えているのだから、住民が特に観光的演出をする気になるとも思えないが。

 城の外郭に沿ってブラリと桜見物をしながら一回りすると、バスで弘前駅まで帰ってくる。当初予定よりも早くチェックアウトしたために予定よりも早い弘前駅到着である。もうこれで弘前での予定は終了なので、早めの列車で青森入りすることにする。

 

 弘前−青森間は普通列車で1時間ほど。青森駅に到着すると今日の宿泊予定である駅前のルートイン青森にトランクを預ける。

  青森駅に到着

 予定より早く青森に到着したのは良いとして、さて困ったのはこれからどうするかである。今日の予定はリゾートあすなろでの大湊線視察だが、私がチケットを取っている列車の発車時間までまだ2時間以上ある。しかし青森での予定は全くない。

 

 作戦を考えるにしても腹が減っては何とやらと昔から言う。とりあえず昼食を先に摂ることにする。例によって立ち寄ったのは「おさない」「ホタテフライ定食(1200円)」を頂くことにする。醤油で食べるホタテフライが相変わらず美味である。

 

 ようやく腹が膨れたところで決断する。「青森県立美術館へ行こう。」これは場合によっては明日実行するつもりの予定だったが、もうこうなったらこれを今日に回すことにした次第。ただ美術館行きのバスの時間はまだ大分先なのでタクシーを利用することにしたのだが、このタクシーがやたらにゆっくり走るのには参った。想定よりも時間を要して目的地へと到着する。

 


「フィンランドのくらしとデザイン−ムーミンが住む森の生活展」青森県立美術館で6/3まで

 

 フィンランドといえばトーヴェ・ヤンソンの名作「ムーミン」がすぐ連想されるが、ムーミンの舞台となっている北国の生活はそのままフィンランドの生活そのものである。本展ではそのフィンランドのライフスタイルや20世紀のモダンデザインについて紹介する。

 本展を一回りして受けるフィンランドの生活に対する印象は「北国」という言葉に収束されてしまう。そのために自然に対する感覚がやや厳しさを秘めているし、物語などには北国的憂鬱さが潜んでおり、確かにムーミンの世界そのものである。

 デザインの方は展示されていたのがモダンデザインであることから、とにかく前衛的で近代的。ただベースとしては工業化を意識したアール・デコに近いものを感じた。ただデザインの世界でまで自然との共生意識が垣間見えるのはフランスデザインなどには見られない特徴。

 フィンランドという日本人には決して馴染みがあるとは言えない国の文化について紹介した意欲的な展覧会。なかなかに興味深かった。


 

 美術館の見学を終えるとタクシーで駅まで戻る。バスを待っても間に合うと思えるのだが、バスの発車時間までこんなところで待つのも嫌だし、バスの場合は到着時間を完全には読めないというところを嫌ってのことである。ただしかなりもったいなくはある。秋田といい、青森といい、なぜこんな不便なところに美術館を作るんだろう(よくよく考えると岩手の美術館もとんでもないところにあった)。どうも町の構造自体がモータリゼーション前提になってしまっているのだが、これは旅行者にはやさしくない。

  青森も萌えに侵略されつつある

 駅内のスタバで時間をつぶしてからホームに入る。まもなくリゾートあすなろが二両編成で到着する。大湊線は非電化路線なのでこの車両はディーゼル車であるが、ディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動するハイブリット車両だという。確かにこのシステムはディーゼルエンジンを一定負荷で駆動できるので排ガス対策及び燃費で有利であるが、プリウスと同様にシステムが複雑で高コストになるのが問題である。

 内部は中央通路に対して座席部分を高床にした眺望重視のパターンで、一番前と後ろには展望スペースが付いているというタイプ。どことなくリゾートしらかみやきらきらうえつに似ているところがあるのは同じJR東日本だからか。

左 野辺地駅を過ぎると  中央 沿線はこんな感じ  右 風車が並ぶ

 ただ残念なのは眺望重視の車両の割には意外と沿線の眺望が良くないこと。青森−野辺地間では浅虫温泉の前後で海が見えるものの後は山ばかりだし、野辺地でスイッチバックした後に通る大湊線も、私のイメージに反して序盤は山の中で、海が見える部分は意外に短い。もっとも海が見えると向こうに下北半島なども見えてなかなか良い眺めではあるが、それなら運転速度を落とすなどといった演出をなぜしない?

  下北駅に到着

 一応観光快速らしく、地元の産品の車内販売などもある。私は岩海苔を購入した。ただこれ以外には特にイベントがあるわけでもない。何となく観光快速としては中途半端な印象。そのせいか乗客の方も乗車率40%ぐらいといったところで、どうも今一つパッとしない。

大湊駅及び駅前風景

 終点の大湊には1時間半ほどで到着するが、大半の乗客は一つ手前の下北で下車。多分こちらの方が観光の拠点なんだろう。確かに駅前にも建物が多かった。終点の大湊は寂れた田舎町といった風情のところ。折り返しまでに50分弱の時間があるのであたりを少しうろついたが、化石化した歓楽街などがあるところが寂れた漁師町という風情か。

 

この山が一番特徴的です

 これで大湊線の視察は終了。沿線は特に何があるというわけでもなく、下北周辺以外には特に大きな集落もなく、下北を青森方面と接続するための路線というイメージである。

一応は海も見えるんですが・・・

 大湊から再びリゾートあすなろで青森に戻るとホテルにチェックイン。部屋に入るととりあえず夕食を摂る店をチェック、一応の目安をつけたところで町に繰り出す。

 

 ここのところ和食が続いたせいか、何やら急に焼肉が食べたくなった。夕食に立ち寄った店は「南大門」。和牛カルビ定食に塩タン、リンゴジュースと杏仁豆腐を注文する。肉がなかなか良くてうまく、デザートの杏仁豆腐のさわやかさが心地良い。以上で4020円。少々使いすぎだがへばりすぎていた体には良い燃料補給になった印象。

  

 それにしても今日も弘前城周回と美術館見学で1万7千歩越え。確実に体にダメージが来ているので、大浴場で入浴をしてから早めに就寝することにする。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 疲れが溜まっているのかかなり爆睡した気がするが、それでも6時前に自動的に目が覚める。目覚めは悪くはないのだが朝から体のあちこちが痛む。4日連続1万歩越えのダメージは体に来ているようだ。私も以前に比べて確実に体力が落ちているということか。しかしテレビをつけると私と同年の山本昌が最年長勝利の記録を更新したとのニュースが。「中日の山本昌は化物か」「ストレートの速度の差が戦力の決定的違いでないことを教えてやる」といったところか。私もまだまだ衰えている場合ではないようだ。

 

 さて今日の予定だが、今日は三厩に立ち寄ってから函館に移動するだけ。第一案では三厩から青函トンネル記念館まで移動しようかとも思っていたが、どうやら蟹田駅にも三厩駅にもロッカーはない模様なので、重たいトランクを引きずって竜飛岬まで行く気もしない。第二案は青森県立美術館に立ち寄るというものだが、これは昨日済ませている。というわけでもう予定はないのでさっさと移動にする。

 

 ホテルで朝食を摂ると、10時前までホテルで休息してからチェックアウトする。何しろ三厩までの津軽線は1日5本程度という超閑散路線。早朝の1便の次はこの時間まで列車がないのである。

  スーパー白鳥

 蟹田までは特急スーパー白鳥の自由席で移動する。蟹田で降り立つが特急停車駅と言っても全く何もない駅。ロッカー云々どころか、駅前らしきものさえ存在しない。

    蟹田駅

 スーパー白鳥が行ってしまうと、奥の待避線にキハ40が停車している。スーパー白鳥が出ていった後、そのホームにこの車両が入ってくる。列車はセミクロスシートの構成で、乗客は最終的には十数人。GWのためか以外と乗っているというところか。列車は定刻通りに蟹田を出発する。

 

 次の中小国は蟹田以上に何もない(駅舎さえない)無人駅。津軽海峡線は一応ここまでがJR東日本のエリアということになっていて、かつてはここに止まる特急もあったようだが今では特急には完全無視されており、青春18切符で特急に乗車できる特例区間も蟹田−木古内となっており、実質的には蟹田が境界駅になっている。

   

中小国を過ぎて海峡線と別れるとこの風景

 中小国を過ぎると海峡線と別れて列車はまさに何もない山の中を走り始める。沿線の風景に何やら覚えがあるような気がすると思ったら、木古内以東の江差線と雰囲気が似ている。

    

津軽今別駅

 ようやく山岳地帯を抜けると再び海峡線の線路が見えてくる。海峡線の津軽今別と津軽線の津軽二股は連絡通路で事実上接続している駅。しかし津軽今別の方が実質的には忘れ去られた駅であるのでこれもあまり意味はない。

三厩駅に到着

 やがて海が見えてくると終点の三厩はすぐ。三厩で降り立つのは10人程度で、その内の半数は駅前で待っている竜飛岬行きのバスに乗車する(残り半分はこの駅から折り返す模様)。私も重たいトランクを引きずっていなければこれに乗車したところだが、三厩駅にはロッカーなどはなく、トランクを引きずって竜飛岬には行きたくない。

  竜飛岬行きバス

 それにしても三厩駅も全く何もない駅である(ただし寒い地域なので、灯油ストーブ完備の待合室だけはある)。駅前にも商店などは皆無。折り返しの列車が出発するまで40分ほどだがする事がないので、この原稿は三厩駅でポメラでリアルタイムで入力していたりする(笑)。

   

 とりあえずこれで津軽線、昨日の大湊線、一昨日の五能線及び津軽鉄道と去年秋に悪天候のために果たせなかった宿題は解決である。とは言うものの正直なところ一抹の虚しさも感じないわけではない。やはり私は鉄道マニアとは少し感覚が違う。五能線はともかく、津軽鉄道と大湊線と津軽線は何の目的もなく終着駅に行ってそのまま帰ってきただけなので、本来鉄道に乗ることだけが目的なわけではない私にはつらいものがある。

 

 三厩から蟹田に戻ってくるとスーパー白鳥19号で函館を目指す。ホームで待っていると青森方面から長大編成の貨物列車がやってきて2番線に停車(といっても列車自体はホームよりも遙かに長い)。青函トンネルは単線なので、ここで上りと下りの特急をやりすごすようだ。青函トンネルは物流輸送の点でも大動脈であることが感じられる。しかし北海道に新幹線が通ったら、貨物列車との調整が大変なのではないのだろうか? それと青春18の扱いはどうするんだろう(JRは廃止したがっているとの話もある)。

 

 ようやくスーパー白鳥が到着したのでこれに乗り込む。増結した8両編成だがかなり混雑している模様。蟹田−函館は指定席を取っていたのは正解か。なおこの列車は途中の竜飛海底駅で海底駅見学ツアーの参加者を降ろすために停車するとか。竜飛岬を見学する場合、三厩経由でなくこのルートもある。

 

 竜飛海底駅で数分停車すると列車は木古内に向かって進む。それにしてもいつものことながら、やはりトンネルとは退屈なものだ。新しい路線ほどトンネルの比率が高くなるのはつらいところ。

 

 トンネルを抜けると北海道上陸。久しぶりの北海道に何やら感慨深いものがある。函館までの沿線風景は既に見慣れた感さえある。知らない間に函館周辺も私のホームグランドになってしまっていたようである。

 

 途中で列車が数分遅れて3時過ぎに函館に到着する。さて函館上陸と思っていたら、5番ホームにSL大沼号が到着しますのアナウンスが。去年もやっていたが、GWに合わせてSLが運行されているようである。私もホームまで野次馬に行く。

 

 SL大沼号は函館から森に行って帰ってくるのだが、森に転車台がないためかSLは後ろ向きについている。昔の大井川鉄道もこうだったのだが、やはりこれでは今ひとつ絵にならない。

 SLを見学すると函館上陸。ああ来たなという気がする。やはりこの町は私と相性が良い。それはともかくとして、青森はまだ暑かったのに、津軽海峡を越えただけで函館は肌寒い。そう言えば去年のGWの北海道遠征では厚手のジャンパーを着てきてたっけ。

 

 まずはホテルにチェックイン。やはり函館といえばラビスタ・・・と言いたいところだがあんな高級ホテルにはとても通常泊まれない。しかもGWはさらに割増料金である(どうも最近のドーミーインは良くない傾向が現れつつある)。そこで今回泊まるのはルートイン系列のグランティア函館駅前である。

 

 部屋に入ると明日に備えてのネット調査。しかし今日は昼にアンパンとクリームパンを食べただけで昼食らしい昼食を摂っていないので腹が減った。昼食には遅すぎ、夕食にはやや早い時間だが食事に出かけることにする。函館といえば朝市だが、この時間になるとほとんどの店がもう閉まっている。その中で夜にも開いている店「うに むらかみ」を訪問する。

 

 メニューはうに丼などの海鮮丼中心だがやや高め。観光客は海鮮丼で喜ぶ者が多いが、私の経験から言うと海鮮丼は概してCPが悪いものである。そこで何やら良いものはないかとメニューを繰っていると「生うにB定食(1365円)」というのを発見。Bというのはうにが色が濃すぎるなどのB級品だからとのこと。しかしB級品といっても見た目だけのことで味が変わるわけではない。見た目でなくて中身で勝負、これはいかにも私向けのメニューである。数量限定と書いてあるので店員に聞いたところOK。そこでこれと「鱒のフライ(735円)」を注文する。

   

 下手なうにを食べるとくせが強くて気持ち悪くなったりすることがある。特にホウ酸処理などしてあると最悪である。しかしここのうにはそんな馬鹿なことはしていないので、うにがとろけるような甘さ。このうにならいくらでも食べられる。また鱒のフライも絶品。これで合わせて2100円なのだからCP抜群である。

 

 夕食を堪能してホテルに戻ると最上階の温泉展望大浴場で夕日を見ながら冷えた体を温める。函館の温泉ということで海の近くのナトリウム塩化物泉。身もふたもない言い方をすると「地下で温まった海水」なのだが、保温性が高いので寒い北海道には向いているだろう。入浴を終えて部屋に戻るとテレビをつけてマッタリ。麻呂ことNHKの登坂アナが画面に出ずっぱりなところに、ここは北海道なんだということを再確認する。

 

 テレビを見つつ明日の計画を練っていると、どうもGWのせいか明日の特急指定券がやばそうである。明日に取るつもりだったが、これは今日中に押さえておくほうが無難そう。ネットで手配を考えたが、JR北海道のオンライン予約はなぜか乗車券とセットでないと指定券を買えないという大馬鹿仕様。仕方ないので函館駅のみどりの窓口に出向く。しかしもう8時を過ぎていたのでみどりの窓口は改札横の1ヶ所だけになっている。しかもなぜかそこに長蛇の列が。どうやらよほど複雑なチケットを注文した者がいたのか、そこで完全に詰まっている模様。私が覗いた時も熟年の駅員が機械を前にあたふたしていた。見かねたのか女性駅員が出てきて神業のような入力を始めるが、それでも何やら長々とやり取りをしている。結局は私が来てからだけでも終了までに20分弱を要している。最初から待っていた者は一体いくら待たされたのやら(空気が殺気立っているのが感じられた)。まあ細かい事情が分からないので何とも言えないが、ああいう窓口で旅行会社的な買い方はあまりしてもらいたくない。

 

 指定券を購入してホテルに戻ってくると、何やら大量の団体客がホテルにチェックインする模様。これは明日の朝食レストランがすさまじいことになりそうな予感。以前に「地域によってGWをずらす」などという案が浮上していたが、実行上問題があるということになったが、何も地域一斉にする必要はないから検討の余地はあるんじゃないかという気がする。交通機関、宿泊施設その他諸々、あまりに特定期間だけに集中するのでなく、もっと平準化したほうが明らかに効率が良いだろうし。

 

 夜も10時を過ぎるととてつもない疲労感が襲ってくる。明日のこともあるしさっさと床につく。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 昨晩かなり爆睡したが、それでもやはり6時前に自動的起床。さすがに体が重い。とりあえず着替えると早めにレストランへと向かう。先んずれば何とやら、宿泊客は非常に多いもののまだレストランが本格的に混雑する前に朝食にありつくことができたので、とにかくしっかり燃料補給を行う。

 

 朝食後は朝から風呂。今日も結構寒そうなので、ナトリウム塩化物泉の浴槽で体をしっかりと温めておく。

 

 さて今日の予定であるが、基本的には登別に移動するだけ(笑)。しかしそれではあまりに芸がないので、当初予定では午前中は函館市内をブラブラするつもりだった。しかし昨日になって急遽予定変更、SL大沼号で大沼公園に立ち寄ることにした。これについては昨日函館に到着した時点で思いついたことであり、直ちにSLの指定席券を入手している。

 

 早めに函館駅に到着するが、もう既に客車はホームで待っている。さすがに山の多い路線をC11だけで越えるのは無理なのか、後ろにはディーゼル機関車を連結してある。ディーゼル機関車の隣に連結してあるのは緩急車で、かつては車掌がここで後ろブレーキを操作したとか。ただし今はただの飾り。内部は座席と同様に桜の飾りが満載。

左 ディーゼル機関車を後部に接続  中央 緩急車  右 緩急車内部

 しばらくしてSLが単行で入線してくる。一斉に撮影部隊が車両の先頭に走り出す。中には全力疾走の爺さんもいるのがなぜかSLではよく見かける光景。衆人環視の中でSLの接続作業が行われる。

 接続作業が終わって一渡りの記念写真撮影会が終了すると、乗客がゾロゾロと客車に乗り込む。客車内は桜演出で全開。まさか「サクラ大戦」なのではないだろうが、なぜか大正スタイルのアテンダントが観光案内。車掌のスタイルも大正レトロである。

 函館を出たSLはすれ違い待ちや時間調整で各駅停車をかけながら大沼公園まで1時間以上をかけて走行する。確かにこうでもしないといくらSLでも普通に突っ走ると大沼公園まで30分ほどで到着してしまうだろう。それだと車内で物販している余裕さえない。

  仁山駅の腕木式信号機

 大沼公園の手前ではかなりの急傾斜を登ることになる。かつてはSLはこのコースを通れなかったと言うが、今は後部にディーゼル機関車を増結しているからか、難なく急坂を列車は登っていく。恐らくこのあたりが最もSLが煙を吐くあたりだろうから、それを狙った撮影ポイントが多数あるらしく、沿線に鉄道マニアの姿もちらほら見える。

  駒ヶ岳

 山地を抜けると大沼公園。大沼公園では乗客の半分ぐらいが下車する。大沼公園は北海道で最初に認定された国定公園とのことで、函館近郊では有名な観光地である。

左 大沼公園の謎のキャラクター  中央 SLは森に向かって出発  右 大沼公園駅

 とりあえず駅のロッカーにトランクを預けると遊覧船に乗ることにする。大沼公園は3つの沼からなるが、そこを遊覧船やモーターボートで回るのは観光の定番。私が乗り場に到着した時はちょうど船が出たところだったらしく、次の出発は40分後とのこと。どうしようか考えていると、20分後に臨時便を出すというのでそれに乗ることにする。

 

 遊覧船は喫水線の浅い典型的な閉鎖水面用の船体。臨時便は最終的に20人弱の乗客を乗せて出発する。まずは大沼内を一周。大沼は駒ヶ岳の溶岩で川がせき止められてできたために水深が浅く、最深部で10数メートル、平均深度は6メートルしかないとか。沼内には小島が非常に多いが、これ以外にも岩礁があちこちに存在し、船が通過できる航路はかなり限られるという。

 

 途中で橋をくぐると小沼に抜ける。こちらはさらに水深が浅いために船は途中までしか行けないとのこと。非常に大きな湖に見えるが、実際の水量は見た目よりもかなり少ないのだろう。これでも今はちょうど雪解け水でもっとも水量の多い時期だという。

 

 このような沼が今日まで残っているのは北海道ならではというところか。この沼が本土にあったなら、恐らく既に干拓されて農地化していただろう。かつての日本は今よりもあちこちに沼地があったのだが、それらの沼地は大抵は干拓されて田圃に変化している。また海岸や湖岸の浅瀬も多くが干拓された。こうして日本人は狭い土地を徐々に拡大してきたのである。

  途中で夕張メロンソフトを頂く

土産物店の屋上より

 大沼の見学を終えたところで昼食にしようと考える。しかし大沼周辺はいかにも観光地の店ばかりでどうも食欲をそそられない。そこで駅前からプラプラと歩いて適当な店に入店する。注文したのは牛丼。観光地の店とほとんど期待していなかったが存外まとも。小さなホタテの入った味噌汁がうれしい。

 

 昼食を終えると夜食用に大沼名物という二色団子を購入してから駅に戻る。ここからはスーパー北斗で登別まで移動。昨日の夜に慌てて指定席を押さえたのだが、確かに到着した列車はほぼ満員。これで登別温泉まで長い行程であるが、疲労が出てきた私は途中でウツラウツラする。

 

 登別駅で下車したのは私を含めて数人。駅に到着するとバスで登別温泉まで移動である。この行程は1年前に通ったのが未だに記憶に新しい。何となく懐かしいような気さえしてくる。

 

 登別温泉バスターミナルで下車すると、宿泊予定のホテル「登別万世閣」は目の前にある。とりあえずチェックインを済ませるとまずはホテルの大浴場へ。登別温泉は泉源によっていろいろな湯があるのだが、ここのは酸性-含硫黄・(ナトリウム)−硫化塩泉(硫化水素型)(酸性低張性高温泉)になるらしい。サラッとした肌触りの湯であるが、少々肌あたりは強め。

 

 宿泊ホテル

 入浴を済ませると夕食まではまだ時間があるので、登別温泉街見学に繰り出すことにする。まずは温泉街を北上して地獄谷の見学。地獄谷は硫黄の匂いが立ちこめあちこちから蒸気が吹き上がる壮観な谷であるが、温泉噴出物のせいか通常はあり得ないような極彩色があちこちに現れており、化学畑出身の私からすると、中学生の頃に造ったケミカルガーデンを連想するような風景である。

登別温泉街を見学

 

地獄谷

周囲はかなり硫黄臭い  右 間欠泉

 地獄谷を見学した後は、ついでだから第一滝本館に立ち寄って外湯と洒落込むことにする。第一滝本館は登別温泉でもトップクラスの巨大なホテルで、あらゆる泉源からひいた浴場が並ぶ大浴場が最大の売りで日帰り入浴も受け付けている。

  第一滝本館

 とにかく巨大な温泉。その中に癒しの湯(ナトリウム・カルシウムー塩化物泉(中性低張性高温泉))、きずの湯(酸性ー含硫黄(ナトリウム)塩化物・硫酸塩泉)、熱の湯(ナトリウム・カルシウムー塩化物泉(弱アルカリ性低張性高温泉))、万病の湯(酸性ー含硫黄・鉄(II)ー硫酸塩泉)、鬼の湯(ナトリウム・カルシウムー塩化物泉(中性低張性高温泉))、美人の湯(ナトリウム・カルシウム・マグネシウムー塩化物・炭酸水素塩泉)、美肌の湯(酸性ー含硫黄(ナトリウム)硫酸塩泉)の7種の湯の浴槽があるのではしご。私的には美肌の湯あたりの柔らかい肌当たりが好み。

 

 日帰り入浴でゆったりとくつろぐと、さらに温泉街を散策。途中で杉養蜂園に立ち寄り、風呂上がりに頂くハチミツソフトがうまい。

左 街角の間欠泉  中央 閻魔堂  右 ハチミツソフトでマッタリ

 プラプラとホテルに戻った頃にはちょうど夕食時。レストランに繰り出すこととする。このホテルの夕食はバイキング形式。正直なところ夕食バイキングには全く期待しておらず、まあ最悪でも伊藤園ホテルよりマシなら良いぐらいのつもりで臨んでいたのだが、案に反して料理は意外に良く、腹一杯に頂いた。

 

 夕食を終えると部屋に帰ってボンヤリ。困ったことに部屋が暗すぎるので原稿入力などの作業には向かない(そもそもインターネット接続が出来ないが)。結局はボンヤリとテレビを見て(首藤奈知子アナが司会の世界遺産番組)、夜食の二食団子を平らげるとそのままいつの間にやら眠りについてしまう。

   

夜食の二色団子

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は6時に自動的に起床すると、まずは朝風呂。7時から朝食バイキングに行くと、NHKの堀北真希のドラマが終わった頃にチェックアウトする。なおここの温泉だが、それなりに効果のある湯なのであるが、その分肌当たりが強いので要注意。私はそれが大体予想が付いたので後で身体を洗い流していたが、それでも手指などは後でガサガサになった。

 

 朝の登別はひんやりとしている。暖房の効いた(いささか効きすぎだが)待合室でしばしバスを待つと、登別駅へと移動する。今日からは周遊切符の道央ゾーン券を使用しての移動になる。5日間エリア内乗り放題は良いが、特急の自由席しか使えないのが曲者である。

 

 登別からは苫小牧までスーパー北斗だが、4分ほど到着が遅れているとかで、凍えるほど寒いホームで待つことしばし。また到着した車両も大混雑。自由席は通路にまで人があふれている状態である。以前にも苫小牧−登別間で立たされた記憶があるのだが、この路線は常に馬鹿混みのようである。

    

苫小牧駅に到着

 苫小牧に到着するとまずは重たいトランクを預けるためにホテルへ。今日の宿泊ホテルはドーミーイン苫小牧。駅からやや遠いのが難点である。

 

 トランクを預けて駅に戻ってくると日高線の視察である。日高線はその名の通り日高地方を走る路線で苫小牧と様似を結んでいる。ただ正直なところ気が重い。というのは終点の様似までは片道3時間半。往復だと7時間も列車で揺られることになる。鉄道マニアではないはずなのに何をやってるんだろうという気持ちも湧いてくる。

 

 とりあえず様似は何もないところだと聞いているので、売店でパンを仕入れてから改札を通るが、駅内で弁当を売っていたのでこれを購入しておく。とにかく腹が減っては何とやらである。

 

 しばらく経ってホームに単両のキハ40が入ってくる。ガラガラのローカル線かと思っていたら意外と乗客がいて車内は満員に近い。

 

 しかし沿線は苫小牧を出るとすぐに全く何もなくなる。次の駅である勇払までは結構距離がある。また日高線は海沿いの路線というイメージを持っていたが、実際には海が見えるのは断続的で、ところによっては完全に山の中のところもある。

  沿線風景

 鵡川で小集落があり、ここで対向車と行き違い。この後は海沿いを走る部分もあるが、これが海岸線のギリギリというとんでもないところ。海が少し荒れたら波を被りそうである。今日はやや天気が荒れ模様なので、途中で列車が止まらないだろうかということが心配になり始める。

  海がすぐそこに迫っている

 中間地点の静内が沿線最大の集落。遠くにはマックスバリューも見えている。今までで乗降客が一番多く、弁当などを仕入れに車両を出る者も数人。ここで列車はしばしの停車。

静内駅でしばし停車

 静内を過ぎると山中のルートが多くなる。本桐でまた対向車と行き違い。ようやく山を抜けて集落に出ると浦河。ここからは駅ごとにパラパラと降車があるという状態で終点の様似に到着する。これで日高線の視察は終了。意外に乗客が多いというのが一番印象に残った。ただとにかく長い。そして沿線風景に変化がなさすぎ(延々と何もない山が続いたと思うと、今度は延々と海が続くだけだったり)でとにかく退屈。路線としては沿線の小集落を接続するのが主要な役目で、観光路線としてはかなり弱い。

様似駅に到着

 確かに終点の様似は何もないところだった。とりあえず列車が折り返すまで1時間弱あるので、その間に苫小牧で購入した「ホッキ飯」を頂く。ホッキの乗った海鮮かやくご飯といったところだが、ホッキが柔らかい上にご飯がかなり美味。これはかなりうまい弁当である。

    

 弁当を食い終わってから駅の周辺をウロウロ。しかしやっぱり何もない。そのうちに天候も怪しくなってきたので駅に戻る。

 

様似駅前

ブラッと見に行った海はかなり荒れていた

 帰りはひたすら退屈なルート。疲れが出てきてウトウトと半分眠りながらの行程となる。途中から本格的に雨が降り始め、苫小牧に戻ってきた時にはかなりの雨。

 

 ホテルにチェックインしたがとにかく疲れた。面倒なので夕食はホテル近くの洋食屋でビーフシチューのコース(2835円)を頂く。ただ残念ながらやや苦味のあるデミグラスソースは今ひとつ私の好みと合わなかった。

 

 ホテルに戻るとドーミーインお約束の温泉大浴場でマッタリ。ようやく生き返ったような気がする。その後は溜まった洗濯物を片づけたり、この原稿を打ったり、ドーミー名物夜鳴きそばで小腹を満たしたりなどしつつ11時頃まで。急激に眠くなったところで前後不覚の眠りにはいる。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は目覚ましで6時に目を覚まされる。眠い目をこすりながら軽く身支度してから朝食へ。燃料を補給したらまず朝風呂。今日の予定だが、当初の予定と大幅に組み変わったせいで全く何もなくなってしまい、札幌に移動するだけ(笑)。そこで極めてゆったりした朝になってしまった。本来の予定は昨日は登別から夕張に立ち寄って苫小牧で一泊、今日は日高線で様似に寄ってから札幌というものであった。しかし先日の夕張線路盤流出事故によって夕張線が運行休止。そこで今日の予定だった日高線視察を繰り上げたので、今日の予定が全くなくなった次第。

 

 堀北真希のドラマが終わった頃にホテルをチェックアウト。外は結構の雨だったのでこの中をトランクを引きずりながらの移動は大変だと思っていたが、タクシーによる無料送迎があるようなのでそれを利用する。さて札幌への移動だが、昨日スーパー北斗で痛い目にあって懲りているので、スーパー北斗を避けて室蘭発の特急すずらんを使用することにする。私の狙い通り、すずらんの自由席はそれなりに混雑はしていたものの難なく空座席の確保はできた。

 特急すずらん

 新札幌で下車するとここからは地下鉄で移動することにする。札幌の地下鉄は3つの路線が大通を中心に放射状に出ている形になっている。この中の南北線は以前の訪問時に視察済みであるが、東西線と東豊線は未視察であるのでそれを視察しておこうという考え。とりあえず地下鉄の土日フリー切符であるドニチカを入手するつもり。

 旅の友ポメラと北海道ではお馴染みのうらら緑茶

 東西線の新さっぽろ駅はJR新札幌の近くの地下にある。この辺りは新都心開発でもしているのかビルが多い。水族館があるらしいのでそれをのぞこうかと思ったら、手前のデパートの入り口に長蛇の列。バーゲンでもあるのかと思ったら、どうやらアンパンマンショーの模様。アンパンマンには興味ないのでスルーして水族館に行くが、こちらも入口の前に親子連れが長蛇の列なので馬鹿らしくなって引き返す。いずこもGWで安く子供を満足させるために世のお父様が苦労しているようである。

   

JR新札幌駅と水族館

 東西線は新さっぽろでの乗客はそう多くないが、駅が進むに連れて乗客がかなり増えていく。その乗客が大通で総入れ替え。大通を過ぎると終点の宮の沢までにパラパラと乗客が減っていき、終点の宮の沢では乗客はそう多くはない。なお宮の沢はバスターミナルに接続しているが、他に特に何があるというところではない。ただこのバスターミナルまで完全に地下経由で行けるのと、バスターミナル自体が閉鎖構造になっているのはさすがに北国である。

左 ドニチカを入手  中央・右 新さっぽろから地下鉄で

左 宮の沢に到着  中央・右 改札から地下伝いでバスターミナルに到着

  宮の沢から大通に引き返すとホテルにトランクを置きに行く。今日の宿泊ホテルはルートイン札幌中央

 

 チェックイン手続きだけ済ませてトランクを預けると、東豊線の視察の前に昼食を摂っておくことにする。ホテルの近くにラーメン横町があるのでそこをウロウロ。結局は目に付いた「二代目萬来軒」に入店。「味噌ラーメン(800円)」を注文する。

 極めてオーソドックスなラーメン。しつこすぎない味噌スープに若干縮れのある麺が合っている。また意外と野菜類が入っていて食べ応えもあり。

   

 腹を満たしたところで雨の中を豊水すすきの駅まで歩く。それにしてもひどい雨。少し歩いただけでずぶ濡れになってしまう。

  豊水すすきの駅

 駅に到着するとまずは福住まで乗車。しかし車内はまるで通勤ラッシュ並に混雑している。なぜこんなに? しかもなぜそれにも関わらずたった四両編成なの? 頭の中に疑問符が一杯湧きながら終点の福住へ。駅は降車客で大混雑である。その時「札幌ドーム→」という案内標識ですべての理由が理解できる。この駅は札幌ドームアクセス駅で、今日はこれから日ハムのデーゲームが開催されるというわけ。

福住駅で下車した乗客は一路札幌ドームへ

 札幌ドームに向かって、雨の中を目を輝かせた老若男女が連なって歩いている。彼らの表情を見ているとスポーツというものの力を感じる。競技場に連なって歩く団体は京都競馬場の近くでも見たことがあるが、あっちとは大違いである。あっちは全員がくわえタバコのオッサンで、しかも例外なく目つきが死んでいた。あの風景に命名するなら「亡者たち」か「ザ・底辺」と言ったところ。やはりギャンブルとスポーツの違いだろう。

 

 福住から折り返すと終点の栄町まで。ここも何と言ったことのない場所。近くに陸自の基地があるらしいが、兵器オタではない(というかむしろ対極の立場)私としては興味がなし。なお不思議なのは南北線終点の麻生にはダイエーがあったが、ここにもダイエーがあること。

今度は終点の栄町で下車

 これで札幌の地下鉄視察完了。といっても例によって地下鉄を視察したところで虚しさしか残らない。さてこれからの予定だが・・・全く何もない。ここ数日疲労が激しいし、雨はひどいしということで、まだ早いがホテルに入ってしまうことにする。ホテルはすすきのの真ん中にあるので、周辺は歓楽街などだが「客引き行為は法律で禁止されています」の放送が常にかかっている。昼間は普通の繁華街だが夜は別の顔があるんだろう。ただそっちの方は「歩く道徳教科書(笑)」と言われている私には全く興味がない。

 

 ホテルに入るとまずは大浴場へ。体の温まったところで近くの寿司屋「すしざんまい」に夕食へ。しかしメニューを見ると結構価格が高く、私が満腹まで食べたら5000円近くなりそうである。そこで2000円程度で切り上げて、結局は近くのケンタでフィレサンドを買って帰る羽目に・・・何をやってるんだか。

   

夜食と共に夜は暮れていく

 結局その日はそのままマッタリと暮れ、眠くなったところでさっさと寝てしまう。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝も6時に起床、ホテルで朝食を摂ると7時過ぎぐらいにチェックアウトする。今日は旭川までの移動だが、新得回りの大移動になる。先の北海道遠征で視察する間がなかった富良野周辺の富良野線や根室本線を視察しようという考えである。新得までは特急スーパーとかちで向かう。この路線と言えば昨年に釧路行きのスーパーおおぞらが炎上事故を起こして問題になった路線でもある。

 

 この路線は以前にも乗車しているが、とにかく札幌を出るとすぐに山で、南千歳を過ぎてからは本格的に山続きになる。新得までは駅の数こそ少ないが、その駅間距離が半端でないので路線図で見るのと実際の距離との感覚のギャップが一番大きい路線でもある。なお先にスーパーおおぞらが事故を起こしたのもこの山の中とか。車両に最も負荷のかかる地域であるからそれも一因だろう。しかし正直なところ、こんなトンネルの中で列車が止まって炎上したらどうしようもないなという考えが頭をよぎる。とにかく事故のないことを祈るのみ。

 

 途中で新夕張を通過。本来はここで夕張線に向かうはずだったんだが・・・。ここを過ぎると列車はさらに深い山の中を走行し、とりあえずは無事に新得に到着。ここで根室本線を行く快速狩勝に乗り換える。快速狩勝はキハ40の単両編成。JR北海道でよく見る寒冷地仕様車両である。内部のセミクロスシートはほぼ満席で意外と乗客がいる。

  新夕張駅

    新得で富良野線に乗換

 新得を出た列車は最初はそのまま西に向かって戻っていくルート。途中から石勝線と別れると北上を始める。最初はとにかく沿線はひたすら山である。それを少し抜けると落合。しばしは空知川の右岸と左岸を目まぐるしく移動しながら富良野盆地に向かって降りていく。そのうちに正面に見えた雪の残った山脈が段々と左手に移ってきて、辺りがそれなりに集落らしくなるのは山部以降。ここまで来ると富良野はすぐである。

すごい風景の中を:抜けて富良野に到着する

 富良野に到着するとこのまま根室線経由で滝川を目指す狩勝を下車、5番ホームの富良野線の車両に乗り換える。富良野線車両はキハ150型で、豪雪地帯でのキハ40型の出力不足を解消するために開発された車両という。セミクロスシートの車内は満員である。

   富良野線に乗り換え

 沿線は最初は富良野盆地の中を右手に十勝連峰を眺めつつ走行することになる。そのうちに段々と山間になっていって美瑛。ここから乗り込む乗客も多数。その後は山間をひたすら走るルート。旭川の手前からは急に路線は直線路線となって沿線は郊外の雰囲気が漂うようになる。この辺りから車内は急激に混雑し始める。そしてグルッと回り込むような形で旭川に到着する。

左 根室線と別れる  中央 上富良野駅  右 美瑛駅

 時間はまだ昼過ぎである。旭川駅のロッカーにトランクを置くと次の目的地へと向かうことにする。次は旭川動物園に立ち寄るつもり。閉園も取りざたされた弱小動物園が、行動展示という新たな概念を取り入れて一躍大観光名所になったという、プロジェクトXの世界で知られる動物園である。

  旭川駅に到着

 旭山動物園へは駅前からバスが出ている・・・というものの、駅前がまだ整備工事中でバス乗り場はやけに遠い。迷いつつバス乗り場に到着した時は、まさにちょうどバスがやって来た直後であった。

 

 旭山動物園へはバスで40分程度。結構距離がある。ただ時間が中途半端なのかバスの乗客はあまり多くない。しかも大半の乗客が動物園までに降車し、終点の動物園まで乗車したのは数人程度。GWでの大混雑を予想していた私には「?」である。

 

 しかし現地に到着するとそこは大混雑だった。自家用車や観光バスが大量に来ており、近くの無料駐車場なども満車になっている状況。園内も観客で賑わっている。なお入場料は800円。1000円で年間パスポートがあり、旭川市民は割引もあるというから、さすがに公共施設だけあってかなり良心価格。てっきり2000円程度はボッタクられるだろうと思っていたのだが・・・。

   

 旭山動物園は旭山の斜面にあり、敷地はイメージよりも遙かに狭く、園内の傾斜は結構キツいというあまり恵まれているとは言いがたい立地条件にある。ただその傾斜を逆手にとって、動物の檻を立体的に見せる工夫がされておりこれにはなかなか感心する。

野鳥の森の鳥たち

猛獣とエゾシカ

猿類

守本奈美・・・じゃなくてカピパラにペリカンにキリン

シロクマにアザラシ

水中を飛ぶペンギン

 ただ残念なことに私の来園時はちょうど雨が結構降っており、野生の動物たちは体力の消耗を防ぐために雨宿りの最中で、活発に行動する動物は一部に限られていた。それでも水中を飛ぶペンギンや円筒を抜けていくアザラシといった見物のいくつかはキチンと見学することが出来た。なおシロクマは発情期と言うことで体調管理のためにモグモグタイムは中止との放送が流れていた。なおこのシロクマの繁殖行為が確認されたというニュースを見たのは後日である。

 

 確かにかなり楽しめる施設として工夫されているという印象であった。ただこの傾斜は小さな子供にはツライらしく、途中でへばってしまっている子供も多数見かけた。途中で休憩をしながら半日ぐらいかけてゆっくり見るというのがここの正しい楽しみ方なんだろう。またそのための施設は整備されている。ただそもそもせっかちな私にはそういう楽しみ方は性に合わない。

 

 1時間ほどで動物園の見学を終えるとバスで駅に戻ることにする。しかし往路と違って帰りのバスは満員。40分のバスの車内を立ち詰めはかなり体力を消耗することになってしまった。やはり午前中からバスで来て長時間滞在する観客が多いということか。確かに内部はレストランや土産物屋も完備していてかなり商売熱心という印象を受けた。もっとも私個人としては、獣の臭いがする場所で食事をする気にはならなかったが。実際、これだけ観客のことを考えているこの施設でさえ、獣の臭いは隠し切れていなかった。私が子供の頃、とにかく動物園といえば臭い場所というイメージを持っていたのはその通りなんだろう。

 

 駅に戻ってくるとトランクを回収、今日の宿泊ホテルであるホテルパコ旭川にチェックインする。荷物を置くと急に空腹が身に染みてくる。そう言えば今日は昼食を摂っていない。そこで町中に繰り出すことにする。

 

 立ち寄ったのは近くのビルの地下にあるラーメン屋「梅光軒本店」。旭川ラーメンの有名な店とのことだが、有名云々は私にはどうでも良いことだ。一応、札幌ラーメンは味噌ラーメン、旭川ラーメンは醤油ラーメンと聞いているので、「醤油ラーメン(800円)」を注文する。

 コクのある鶏ガラ系のコクのあるスープがなかなか美味。また鶏ガラに魚介系を混ぜてあるのか、その後味が口に若干残る。縮れ麺はスープとなかなか合っており、厚手の焼き豚が柔らかくて旨い。決して高級な味ではなく、ややジャンクな印象もある味がいかにもラーメンというメニューらしい。そういう意味で普通に旨いラーメンである。

 

 かなり遅めの昼食を済ませてホテルに戻ってみると、PHSに留守電が大量に到着しているのに気づく。確認してみると自宅からである。私は明日レンタカーで富良野方面を回るつもりで予約をしていたつもりだったのだが、どうやらその予約を間違って今日にしていたようで、レンタカー屋から「まだ来ていない」という電話が自宅の方にかかったようである。そこで母が私に電話をしたが、ちょうど今日はPHSの圏外を旅行中。電話がつながらないことでパニックになった母が大騒ぎしていた模様。とにかく自宅にはすぐに連絡を取ったが、あわや警察に捜索願いを出されるところであった。

 

 とんだドタバタであったが、とりあえず自宅の方にはなにも行方不明になっていたわけではないことを説明、レンタカー会社の方には平身低頭で事情説明、取り合えず車の予約を変更してもらった(実に申し訳ない限り)。

 

 降って湧いた大騒ぎにようやく決着をつけると、一息つくために地下の大浴場で入浴。なおこのホテル、地下浴場にも関わらず「露天風呂」の表記があるので奇妙に思ったが、確かに露天風呂はあった。どちらかというと穴蔵風呂という雰囲気ではあったが。

   

 入浴を済ませると先ほど買ってきた旭山プリンで一息。一服すると今度は夕食に行くことにする。と言っても先ほど遅めの昼食を摂ってからそんなに時間は経っていない。しかしやはり夕食をキチンと摂っていないと夜になって空腹を抱えることが必至。何を食うかを考えるのも遠くに出かけるのも面倒になったので、近くの「とんかつ井泉2条店」「特ロースカツ定食(2100円)」を頂く。

   

 この店は以前の北海道遠征の時に5条店の方に入店しているのでその実力は知っている。とんかつというメニューの性質上、特別な驚きはないが、一定以上のレベルを余裕でクリアしているまずまずの店である。つまりは無難な選択。

 

 夕食を済ませてホテルに戻ると眠気が襲ってくる。明日は車を運転する必要があるので意識朦朧というわけにはいかない。それにしても相当疲労が体にたまっている。今日はかなり早めに床に就くことにする。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時前に目覚めるとまずは朝食、最上階のレストランでのバイキング朝食はまずまずのもの。とりあえず腹一杯にするとすぐに荷物をまとめるとチェックアウト、旭川駅にレンタカーを借りに行く。

 

 車は急遽手配してくれたらしき旧型マーチ。しかし新型マーチみたいなアイドリングストップなどの変な仕掛けがない分、こっちの方が個人的には運転しやすい(交差点でブレーキを踏む度にエンジンが止まるのは結構イライラする)。これで富良野に向かって突っ走る。それにしてもさすが北海道、真っ直ぐな道がひたすら伸びているだけという道路が多く、油断しているとスピードが上がりやすくなる。しかしこれが曲者で、北海道の道が道路状況に比べて明らかに制限速度が遅いのは、道警が格好の狩り場にするため。国道脇に移動レーダーが潜んでカモを狙っているというわけである。特に「わ」ナンバーは狙い撃ちされるというのは有名な話。私とてむざむざ道警のしのぎに協力する気などないので、ここは無難に速度を落として走行。当然のように後ろから地元ナンバーがすぐに追い上げてくるので、後ろに車が着いたら即座に道路脇に車を停めてやり過ごすことになる。しかし道路に対して明らかに不自然な速度なのでストレスがたまる(高速道路を徐行しているようなものである)。そこで考えを変える。かなり風景が壮観なので、こんな風景をかっ飛ばしたのではもったいないと考えることにして、風景を楽しみながらのんびりとドライブと洒落込む。

すごい道に笑っちゃうような風景

 それにしてもつくづく笑ってしまうような風景。目の前に広がる大平原にその背後に見える雪をかぶった山脈。関西生まれの私には「あり得ない」ような光景である。一体ここは本当に日本なのかという疑問が湧いてくる。

 

 そのうちに目の前に「トリックアート美術館」なる看板が見えてくる。とりあえずここに入館することにする。

 

 内部にはその名の通りのトリックアートが多数展示してある。内部は撮影可。実際、肉眼で見ると平面であることが感じられるのだが、これがカメラのファインダーを通すと区別が付かなくなるのである。良くできてるなと感心することしきり。

 美術館を出ると近くの展望テラスから十勝山系を鑑賞。つくづくあり得ないような光景。あまりに雄大で、あまりに美しくて、なぜかこういう風景を見ると私は笑ってしまう。

 

 後ろを振り返ると観覧車が立っている。あれに乗ればさらに風景を楽しめそうだということで乗り込むことにする。しかしここで私は重大なことを一つ忘れていた。それは「私は高所恐怖症である」ということである。最近は飛行機での旅行などをしているのですっかりそのことを忘れていたが、私はある特定の条件が揃うと今でも高所恐怖症を発症するのである。その特定の条件とは、まず自分の乗っている足場が信用できないこと(建物が老朽化していたりなど)、ビルの高さぐらいの高度(これを越えると現実感覚がなくなってかえって恐くなくなる)である。不幸なことにこの観覧車は見事にこれらの条件を満たしていた。観覧車に乗ってゴンドラのギシギシという怪しげな音を聞いている内に高所恐怖症が発症し、一気に心拍数が上昇したのである。もうこうなると心の叫びは「早くここから出してくれ!」なのだが、泣き叫んだところでどうなるわけでもない。そこでとにかく冷静になるために理性を働かせる。まず以前にガッテンの高所恐怖症の回で放送していた「高所恐怖症の者は時間が経つほどさらに不安が増すと考えてパニックになるが、実際には時間が経つと人間は状況に慣れて落ち着いてくるものである」という知見を思い出す。さらにいくらギシギシと不安な音を立てているゴンドラでも常に整備はしてあるはずであるので、今ここでゴンドラが落ちる確率は、私が突然に美女から「実は以前からあなたのことをお慕いしておりました」と告白される確率よりもさらに低いということを考えたのである。そうこうウダウダしているうちにようやくゴンドラは最高点を過ぎて下降に入り、不安の方も大分治まってきたのであった。

  この高さが嫌

 ようやく恐怖のゴンドラから脱出すると、そもそもの目的地だった後藤純男美術館へと車で移動する。目的の美術館は正面に十勝山系が見える風光明媚な田園の中にある。思わず「この風景だけでもそのまま絵になるわな・・・」という言葉が出てくる。

 後藤純男美術館

 後藤純男氏の絵画は日本画であるが、かなり精緻な描き方をしているのが特徴。寺の絵画などが多々あったが、張りつめた空気感を出すのに腐心したとのこと。確かにその試みは成功しており、ああいう場面に漂う一言では表現できない独特の空気というものの再現には成功している。さらに個人的に興味深かったのは、金泥を岩の表現にうまく使っていたこと。あの素材は使い方を間違えると下品になりがちなのだが、実に巧みな使用であった。

 

 絵画を鑑賞した後は、美術館内の喫茶で十勝連峰を見ながら一息。時にはこういう余裕も人生には貴重である。

絵になる風景を眺めながらのひととき
 

 さて次の目的地だが、富良野風景画館なる美術館があるというのでそこまで移動することにする。途中の峠で展望台兼の駐車場があったので再び風景鑑賞。非常に山が綺麗である。後で聞いた話だが、これだけ綺麗に山が見えるのは地元でも年に数回ぐらいしかないとか。やはり日頃の行いの良い者にはそれなりの報酬があるものである(笑)。

 

 峠を反対側に下っていったところに風景画館がある。元々小学校だったという建物が風情がある。どうやら窓口は画家ご自身がされているようで、絵画の構図などについて興味深い話を伺った。これは今後写真撮影にも応用できそうである。

  富良野風景画館

 さて実のところこれで当初考えていた予定はほぼ終わってしまった。しかしまだ車を返却するまでには3時間以上ある。どうしたものかと考えた時に、やはりこういう時には温泉かという考えに至る。カーナビで検索をかけたところ、十勝連峰の麓に複数の温泉があるようである。十勝連峰に向かって車を走らせ、吹上温泉白銀荘に立ち寄ることにする。ここまで来ると山がすぐそこに見えている。それにさすがに若干肌寒い。さっさと入浴することにする。

   

 泉質は酸性−ナトリウム・カルシウム−塩化物・硫酸塩泉とのこと。ただし登別温泉ほど刺激があるという感じではなく、もっと柔らかい感じのするお湯である。またここは開放感のある露天風呂があるが、開放感がありすぎて駐車場から丸見えで少々落ち着かない。

 

 温泉で身体を温めると後は昼食。と言ってもこの周辺には飲食店の気配は皆無。そこでカーナビで検索をかけると洋食店を発見、そこを目指して案内に従って車を走らせる。

 しかし思っていたよりもかなり距離を走らされることになり、到着した先は美瑛になっていた。この辺りは別荘地的な雰囲気で、今まで私が行った中では軽井沢に雰囲気が近い。案内された店は自家製ソーセージの店で、私が到着した時には満席。しばし待ったが全く客が回転する気配さえないので、それ以上待っていても時間の無駄と判断して引き返すことにする。

 

ダム湖の近くで休憩

 もう行くところもないし、仕方ないので富良野方面に向かって車を走らせる。途中でダム湖の近くで休憩などを取りつつゆっくりと走ったが、富良野に到着したの返却予定時間の1時間前。しかしこれ以上粘っても意味がないので、さっさと車を富良野駅に返して徒歩で飲食店を探すことにする。

  富良野駅

 しかし富良野駅前は私の想像以上に店が少なかった。結局は見つけた寿司屋「福寿司」で昼食を摂ることに。しかし北海道のど真ん中の富良野で寿司って・・・。まあ寿司自体は悪くなかったですが・・・。

   

 かなり遅い昼食を済ませると富良野駅からの移動になる。ここからは根室線の残りの区間である富良野−滝川を経由して札幌入り。新得方面からやって来たキハ40単両は既に乗客が一杯いる状況で、富良野から乗り込んだ客ですぐに満席になる。富良野を出て次の島ノ下を過ぎると沿線はすぐに深い山の中になり、延々とトンネルが続く。次の野花南(のかなん)駅はまさに山の中、この後も列車は山間を空知川に沿って進んでいくが、沿線にはさほど大きい集落はなくいかにも北海道な風景。やがて盆地に出たと思えばまもなく滝川である。富良野線に比較しても沿線にはさらに何もないという印象が強い。

 

 これで現在運休の石勝線の夕張支線を除けばJR北海道完全制覇である。また地下鉄なども視察済みなので北海道エリア鉄道完全制覇の一歩手前。夕張線は今回はどうしようもないので後日の宿題か・・・って私は公式には鉄道マニアではないことになっているのだが・・・。それにしても北海道エリアの鉄道はとにかく長い、遅い、変化がないという路線が多く、これを乗り続けるのは結構の苦行。やっぱりこれを苦行に感じるのは私が鉄道マニアでない所以か。

  滝川駅

 滝川からはスーパーカムイで札幌へ。先ほどの列車からこれに乗り換える乗客はかなり多く、根室線が富良野周辺からの札幌へのアクセス路線に利用されていることがよく分かる。到着したスーパーカムイはかなり乗客が多かったが、どうにか座席を確保できる。すると今までの疲れが一気に襲ってきて、ウツラウツラしている内に札幌に到着する。

 

 札幌に到着するとまっすぐにホテル入り。今日の宿泊ホテルはドーミーイン札幌。いつもはよくドーミーインを使用する私だが、本遠征はGW中ということもあって、ドーミーインは予約を受け付けていないか特別価格で高くなりすぎていたりで(非常に良くない傾向である)、本遠征では苫小牧以外は使用していない。今日は5/6でGW最終日(つまりはもうGWは終わってる)からこそ予約できたという次第。

  狸小路商店街

 ドーミーイン札幌は狸小路商店街のアーケードの中にある。まさに繁華街のど真ん中である。とりあえずチェックインするとすぐに隣にあるラーメン屋「喜来登」に夕食に繰り出す。注文したのは「みそラーメン(700円)」

 しばらく待った後、ネギを山盛りにしたラーメンが出てくる。味は結構あっさり目。やや太めのしっかりした麺がまた旨い。ここもなかなかに旨いラーメン屋。うーん、北海道のラーメンは侮りがたい。

今日の夜食

  夕食を終えるとホテルで入浴してマッタリ。ここのホテルの大浴場には一人浴槽の小さな露天風呂が付いており、そこでゆったり。今日は宿泊客もそう多くないようで混雑していないのでくつろげる。風呂で疲れを抜いた後は再び繁華街に繰り出してコンビニなどで夜食を購入。後はテレビでも見ながら夜のリラックスタイム。そのうちに眠気が来るので床につく。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は目覚ましで目が覚める。身支度するとレストランで朝食。朝食はバイキングだが、ご当地食としてジンギスカンがある。しかしジンギスカンは朝から食べるメニューか? これ以外では飲み物にカツゲンがあったのがいかにも北海道。カツゲンは北海道ローカルの乳酸飲料で本土で言えばヤクルトのようなものだが、実際にはヤクルトよりも硬質でややクセのある味。

 

 さて今日の予定だが、夕方の新千歳からの飛行機で帰るのでそれまではフリー。夕張線が復旧すれば夕張方面に繰り出すつもりだったが、残念ながら現時点で路線は未だ復旧せず。こうなると普通に考えると札幌市内観光辺りが妥当だが、私のパターンの美術館は月曜日には休館だし、正直なところ行く先がない。小樽は先の遠征で訪問済みで、改めて訪問するほどの理由もないし・・・。そこで思いついたのは「クラーク像でも見に行くか」ということ。確か有名なクラーク像は羊ヶ丘展望台にあったはず。調べてみると札幌駅からバスが出ている模様。そこでホテルをチェックアウトすると札幌駅まで送迎して貰い、そこでバスを探す。しかしバスターミナルに行ってもそれらしいバスはない。惨々迷った挙げ句にバスの案内所を見つけたのでそこで聞くと、別のバス会社の窓口を紹介される。結局は札幌駅前を右往左往する羽目に。

 

 羊が丘展望台行きのバスは駅前バスターミナルでなく東急デパートの南から出ているとか。なぜ札幌で東急デパートというのも疑問だが、今や東急は不動産や百貨店が中心で鉄道会社ではないということか。そう言えば以前に高知東急がその芸名が東急の商標と引っかかるとして裁判沙汰にまでなったが、その時は「なぜ東急が高知と関係するの?」と思ったが、この調子だと高知東急デパートが出来ても不思議がないから問題になったということか。東急じゃなくて阪神あたりにしてたらまさか高知に出店なんてなかったのに・・・。

 

 バス停の場所が分からずにしばし迷ったが、ようやく東急デパートを発見。ちょうど東急デパートは開店時間だったが、入口のところで開店を待っていたと思ったお客の数人は店内に入る気配なし。どうやら東急デパートの入口のベンチがバス停の待合室の役割を兼ねている模様。

 

 羊ヶ丘展望台行きのバスは1時間に1本程度。しばらく待った後にようやくバスが到着。バスに乗車すると終点へは30分ほどで到着する。羊ヶ丘展望台は先に地下鉄で行った福住のさらに南。ここからバスでアクセスするという方法もあるらしい。到着した場所は「展望台」と称している割には標高はそう高くない。バス料金を払って下車すると、すぐにその場で入場料を取られるシステム。

   

 羊ヶ丘自身は特に何があるというほどの場所ではなく、一番有名なクラーク像が立っていて、他にはなぜか石原裕次郎の碑と日ハム選手の手形がある。なお手形については札幌ドーム開幕時のメンバーらしく、新庄や小笠原など今は亡き選手の手形も・・・。とりあえずクラーク像の前で定番の記念写真などを撮ったりする。後は雪祭記念館を覗いたら・・・することがなくなってしまった。これ以外ではレストランや土産物屋があるだけ。別に土産物を買う気もなく、ジンギスカンを食べたいという気もなく、結局はソフトクリームを食べただけで30分程度の滞在で折り返しのバスで帰ってしまう。正直なところ、入場料を取るほどの場所か?という疑問が湧くが、逆に言うと入場料を取らないと収入源がないということかもしれない。

左 なぜか石原裕次郎の碑がある  中央 日ハム選手の手形  右 これが新庄

左 本当に何もないところ  中央 羊が出てきた  右 ソフトクリームを頂く

 バスで札幌まで戻ってくるが、戻ってくるとすることがなくなってしまった(笑)。いや、正直なところ行っても良いところはあるのだが、さすがにもう疲労が極限まで溜まっていてその行動力がない。仕方ないのでとりあえず昼食を摂ろうと駅ビルの飲食店に入るが、それがまた壮絶なハズレ。料理に工夫もなければ店員にもやる気が全く見えないというとんでも店。考えてみるとこの札幌駅周辺の飲食店ではハズレしか引いていない気がする。これでさらに気力が衰えたので「早々と新千歳空港に行ってそこで時間をつぶそう」と最期の決断をする。

  この日の昼食

 結局はスカイライナーで早々と新千歳入りすると、空港ターミナルビル内の「万葉の湯」で夕方までの時間をつぶす。何をやってるんだか・・・。

  万葉の湯

 万葉の湯は立派なスーパー銭湯であり、しょっぱいお湯の露天風呂まで完備している。また休憩室が立派でありリクライニングチェアがズラリと並んでいるのはさすがに空港。乗換待ちなどの客がここで休養することも出来そうだ。風呂で身体を温めた後は私もここでしばし仮眠をとって疲れを抜くと、ついでに中の飲食店で軽めの夕食まで摂ってから空港のカウンターに向かったのである。

 

 当初から主旨が今一つ曖昧な遠征だったのだが、それを反映して特に後半になってからグダグダの内容になってしまった。やはり一番の計算違いは夕張線の突然の運休。雪で潰れた夕張美術館といい、どうも夕張周辺は計算不可能なことばかりが起こっている。さらに後半グダグダになった最大の理由は疲労の蓄積。やはり私の体力のなさと、睡眠時無呼吸症から来る微妙な睡眠不足の蓄積が原因。これは根本的な体質改善しかないと、休み明けから本格的トレーニングに取り組むこととなった。

 

 本当は今回で北海道の宿題はすべて完了するつもりだったのだが、結局は夕張線はリターンマッチをしないといけない羽目になってしまった。最終日にあえて札幌をほとんど回らなかったのは体力不足が大きな理由だが、どうせリターンマッチするならその時にネタを残しておく方が良いだろうという考えもあったのも事実。しかしそれにしてもいよいよ果てなき遠征といった趣になってきてしまっている。 

 

 

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