展覧会遠征 函館・札幌編
まだまだ冬の寒さが厳しい時である。しかしこの三連休はあえて極寒の北海道を目指すことにした。目的は札幌雪祭り。瀬戸内育ちの私にはそもそも雪が珍しく、一度は見学してみたいと思っていた祭典である。もう私も人生の先がそう長いわけでもなく、やはり一生のうちにこれは見ておく必要があるだろうという考え。
交通機関は当然ながら飛行機である。ただこの時期は札幌便は混雑する上にそもそも旅割などの安売り切符がない。そこで往路は関空から函館空港に上陸することにし、帰路は雪祭り終了後の12日に新千歳から飛ぶことにした。
金曜日の仕事を終えるとホテルに移動する。明日の朝は早いので前泊である。宿泊するのは日根野のベストウェスタンホテル関西エアポート。大浴場があることと、会社の福利厚生割引で安価に利用できることで選んだホテルである。
ホテルにチェックインするととりあえず夕食のために外出。しかし日根野周辺にはあまり飲食店はない。やむなく近くのイオンモールに出かけ、フードコートで夕食。ヒレカツ丼セットを頼む。
どう考えても栄養が炭水化物に偏っているのが気になるところ。また今の私はこの丼飯をそのまま食べるわけにはいかない。ただここのところの食事制限のせいか、半分も食べたところでもう十分という気になってくる。皮肉なことにあまりおいしくないのが食事制限に有効に効いている。
サラダで野菜補給 このままでは栄養バランスが悪いので、食品売場でサラダと明日の朝食を買い求めて帰る。ホテルに戻ると先ほどのサラダを腹に納めてから大浴場で入浴。風呂上がりにマッタリしたところで持参したマービー甘納豆とマービーマンゴープリンで一服。
血糖値抑制の切り札マービー
夜も更けてくると眠気が襲ってくる。大阪駅から日根野駅まで1時間ほど関空快速の中で立ち続けだったのがこたえたようである。そこで明日に備えて就寝することにする。
☆☆☆☆☆
翌朝は5時半に起床、昨日イオンで購入したきんぴらゴボウに切干大根とおにぎりで朝食を済ます。朝食を終えるとさっさと荷物をまとめてホテルをチェックアウト。ホテルの送迎バスで関空に向かう。
今日の朝食
関空から飛ぶのは初めてだが、やはり伊丹空港と比べると寂れている感が否めない。やはり関空と成田はいらない空港のようだ。昨今の冷え込みで天候が気になっていたところだが、函館便は時間通りの運行のようだ。さっさと手荷物検査を済ませるとipadをWi-Fi接続して目的地の調査で時間つぶし。こういう時にipadのありがたみを感じる。気がつけば搭乗手続きが始まっていた。
函館便は満席のようだ。冬の北海道便ということで乗客の着ぶくれもあって、それでなくても広くはない737の機内はいかにも狭苦しい。機体が上空に到達するとここでもipadで時間つぶし。今日はやや天候が荒れているようで、函館空港着陸の際には結構機体が揺れて気持ち悪い。
それでもなんとか無事に空港に到着。さすがに機体を降りた途端に大阪とは寒さが全く違うことが分かるが、それを警戒して防寒装備は万全を期しているので、寒さに震えるというほどではない。到着した函館は若干雲はあるもののほぼ晴天。ただ辺り一面は完全に雪景色で、これは瀬戸内生まれの私には目にしたことのない光景。
函館駅は雪景色
空港からはシャトルバスで函館駅方面へ。函館ではラ・ビスタに宿泊予定であるので、ベイエリアまでバスに乗車する。
久しぶりのラ・ビスタである。相変わらずこの辺りは華やかな観光地ムード。とりあえずチェックイン手続きだけを済ませて荷物を預けると、駅までの送迎タクシーに便乗して函館駅に移動する。
正直なところ今回の遠征では函館を目的地にしていたわけではないので、函館での予定は全くない(笑)。もっともそれでもついでならと頭に思い描いているプランはある。しかし何よりもまずは腹ごしらえである。函館駅周辺で食事というと函館朝市が妥当。
函館朝市では謎の雪だるまがお出迎え 函館朝市は観光客で賑わっている。私が目指したのは以前にも訪問したことがある「むらかみ」。私にうにの旨さを初めて教えてくれた店である。注文したのは迷う余地もなく「生うにB定食(1365円)」。
例によってうにが1パックまるまるついている。B級品と言うだけあって色目は若干悪い。しかし味の方は本物である。うにの甘みを十分に堪能できる。ちなみにこのメニューは仕入れに応じて数量限定なので、私と次の客のところで売り切れてしまったようである。ついていた。
若干色目は悪いが味は本物
うにを堪能したところでさらに追加注文。「うに入りだし巻き(1050円)」を頼む。これが非常にコクのあるだし巻き玉子という風情で実に美味。
私が店を出る時には・・・ 昼間からたっぷりとウニを堪能した。これで函館に来た目的は達成・・・というわけではない。路面電車に乗車すると五稜郭を目指す。
雪がぱらつき始めた
やはり函館に来たからには五稜郭。それも雪の五稜郭を見てみたいと思った次第。ただその前に函館美術館に立ち寄ってコレクション展を見学。長谷川りん次郎の作品が数点展示されていたのが収穫。
函館美術館
数年ぶりで五稜郭タワーに登る。入場料金はいささか高い(840円)が、五稜郭の星形を確認しようと思うとやはりここに登るしかない。雪の五稜郭はなかなかの絶景。さらには函館市街の雪景色もかなり美しい。雪は地上の人間の営みの醜さをすべて覆い隠してくれるという言葉があった意味を実感する。
雪の函館市街と五稜郭 タワーから降りると函館ジェラートを頂く。紫芋と小豆と抹茶の和風三点盛りである。カロリーが気になるが、今日は朝食がかなり抑えめであったから帳尻は合うだろう。
タワーを出ると雪の五稜郭を徒歩で見学。何やらイベントがあったのか歌声が聞こえてくる。素人のど自慢大会でも開催しているのかと思ったら、どうもご当地アイドルかなんかのイベントだった模様。いわゆるAKBもどきのようだが、段々と日本の芸能界のレベルが低下しているのを感じる。今や芸能界のみならず、スポーツ界、政界、経済界、すべて小者ばかりで器量を感じさせる人材がいない。世襲制、商業主義など諸々の要因が考えられるが、日本という国自体の衰退が始まっているように思われる。
五稜郭の見学を終えるとバスで戻ることにする。バス停に行くとどうやらアジア人観光客らしい男女に空港行きのバスの時間を英語で聞かれる。時刻表を見たところ、10分ぐらいで到着するようなのでその旨を伝える(などと言えば私が流暢に英語で対応したように聞こえるが、実際は「Airport Bus? Thirteen Twenty. Wait here.」なんて調子の完全に片言である)。何人かは不明だが、私が聞き取れる英語で話しかけてきたということは、あちらも英語がネイティブではないと思われた。
バスは結局は10分ほど遅れて到着。「This bus goes to airport. Goodbye!」と彼らを見送ると、私はさらに遅れてきた函館行きのバスに乗車して駅に移動する。函館駅では明日以降の切符を引き取るためにみどりの窓口に立ち寄るが、観光客が大行列を作っていてかなり待たされる。駅内は観光客でごった返しているが、アジア人観光客も多い模様。垢抜けない格好で団体行動しているのが中国人観光客、家族か個人単位で行動していて一見しただけでは日本人と区別が付かないのが韓国人観光客である(よく見ると女性の目元の化粧が日本人よりも派手なのと、一見して整形していると分かる顔が多いのも特徴)。例の尖角の問題で中国人観光客が激減していると聞いているが、ここを見る限りではそういう風には見えない。まあどこの国でも妙な愛国心を暴走させて騒ぐのは底辺層であり、海外旅行が出来るような層はむしろ日中ビジネスで儲けている者が多いので、自ずと考えも変わってくるだろうとは思う。
無事に切符を入手するとホテルに入るためにプラプラと函館の町を散策する。函館の雪道を歩くのに雪靴を調達する必要があるかと思っていたのだが、今日はパウダースノーが積もっているせいか意外と足下が滑らない。気をつけてさえいたら雪国育ちでない私でも不自由なく歩けそうである。15分程度でホテルに到着する。
ホテルの窓からの風景
部屋に入ると着替えて最上階の展望大浴場に直行する。これがあってこそのラ・ビスタである。まだチェックイン時刻の3時直後ということもあって風呂にはそう人は多くない。内風呂で体を温めると源泉掛け流しの露天風呂に移動する。外は顔が凍り付きそうな寒さ。おかげでいくら浸かっていてものぼせることはなさそうで、いつまでも入浴していられる。泉質自体は海のそばのナトリウム−塩化物泉という微妙なものであるが、それでもこの快適さは何者にも代え難い気がする。
体を温めた後は部屋でネットをしながらマッタリとする。お昼は結構ガッツリ食べたつもりでいたのだが、何やら空腹になってきた。5時頃になったところで早めではあるが夕食に出かけることにする。
夕食であるが遠くまで出かける気も起きない。結局はホテルの目の前の回転寿司「まるかつ水産」に行くことにする。
注文したのはキハダマグロの腹身、生ニシン、寒鰤、タラ白子のポン酢、ホタルイカ、アン肝、ホタテ貝柱、真鯛、八角の9点。以上で支払いは3410円。寿司はまあまあ良いのだが、相変わらずの観光地価格の店である。CPとしては悪いと言わざるを得ない。
夕食後は赤煉瓦倉庫街を散歩がてらにフラフラと回る。しかしやはりここはオッサンが一人でうろつくところではない。ロマンチックな演出が、余計に独り身の寂しさを際だたせる。こんなところをウロウロしていると、「一体自分の人生は何だったんだろう?」とフォースの暗黒面に落ちそうになるので早々に撤退することにする。セブン−イレブンに立ち寄ってからホテルに帰ってくる。
部屋に戻るとセブン−イレブンで仕入れたサラダをがつついて夕食で不足していた野菜分を補給。一服した後で再び大浴場へ出向く。今度は先ほどと違って浴場は大勢でごった返していたが、それをかき分けて極寒の露天風呂へ。体から湯気が上がるぐらいにサウナで暖めてから外の雪の中に飛び込むのがフィンランド式入浴法と聞いたが、確かにそういう入浴法もありなのかもしれないという気がしてくる。もっとも心臓に問題があれば自殺行為ではあるが。
この晩もサラダ
風呂から上がるとセブン−イレブンで仕入れたデザートを頂く。カロリーは気になるが、今日だけでもかなり歩いているので許容範囲だろう。さらに夜が更けた頃には持参したマービーデザートも出してくる。こうしてサイレントロンリーナイトは更けていく。
☆☆☆☆☆
翌朝は5時半に起床すると6時に朝食バイキングに出向く。ラ・ビスタの朝食バイキングは海鮮物たっぷりの豪華なもの。「日本で一番朝食がうまいホテル」などという呼び名もあるらしい。日本一かどうかは知らないが、私が泊まったことがあるホテルの中では確かに朝食バイキングがかなり豪華な部類に入る。カロリーは気になるもののとりあえずガッツリと食べておく。
朝食後は大浴場で入浴。例によっての身を切られるような寒さの中での露天風呂。あまりに快適すぎてくせになりそう。
入浴後は一休みしてからチェックアウト。駅まではタクシーで送迎してもらう。函館駅は観光客で一杯。私の乗車する特急北斗は指定席もグリーン席も満席の模様。私は事前に計画を立てて早くからチケットを手配していたので問題ないが、もたもたしていたら席を確保できないところである。
特急北斗
札幌までは3時間以上の長い旅になる。とにかく北海道は広い。ipadでヒストリアを見ながら時間をつぶすが、途中でしんどくなってきて気がつくとウトウトしていた。
疲れきった頃にようやく札幌に到着する。しかし駅に降り立った途端に函館とは寒さの次元が違うことに気づく。私としては万全の防寒仕様で来たつもりであり、実際に函館では寒さは全く感じなかったのだが、ここではダウンジャケットを通して寒さが直接に体に染みてくる。こういう体験は始めてである。
まずはホテルに移動する。今日宿泊するホテルはドーミーイン札幌ANNEX。雪祭りのせいでホテル確保に難儀する中でようやく押さえたホテルである(価格も通常時期よりもかなり割高)。最寄りのすすきのまでは地下鉄で移動することにする。それにしても雪祭りのせいか札幌駅は観光客でごった返している。
ドーミーイン札幌ANNEX
札幌は寒さの次元も違うが、そもそも道路の状態がまるで違う。道路の上が圧雪のアイスバーンで舗装されている状態であり、気を緩めると足元が滑るし、キャリーは路面を削るので役に立たない状態。とにかく瀬戸内生まれの私には未体験の領域で、普通に歩くだけでも尋常でない用心が必要。
札幌市街の様子
ホテルのチェックイン時刻はまだなので、とりあえずホテルに荷物を預けると昼食に向かうことにする。昼食を摂ることにしたのはホテル近くの「瑠玖」。海鮮居酒屋といった店である。日替わりでカレイの煮付け定食があったのでそれを注文。
魚が良いのかなかなかにうまい。外食が続いている場合はこういう家庭料理的なものがありがたい。腹が減ってきていたのでさらに「あさりの酒蒸し」と「ホッキの刺身」を追加注文。いずれもうまい。これで支払いは1830円。かなりCPの良い店である。
昼食を終えたところで大通りの雪祭り会場を目指す。会場は大勢の観光客でごった返している。とりあえず人の流れに乗って会場を一回り。しかし正直なところ思っていたよりも雪像は少なく、露店のほうが多いという印象。しかもアイドルっぽい輩(ご多分に漏れずAKBみたいな雰囲気の連中)のコンサートをやっていたりとうるさい。しかも警察官に取り囲まれながら「朝鮮人は出て行け」とか「日韓断交」とか社会人経験皆無であることをさらけ出したスローガンを掲げて行進している連中まで現れる始末。それにしても働きもせず(その気すらもない)税金を納めもしていない連中が愛国心を掲げて、日本で働いて税金を納めている連中に出て行けとはなんとも奇妙な話である。情けないがこれもいわゆる日本人の劣化の象徴。
左 タイの宮殿だとか 中央 新歌舞伎座もお目見え 右 よく分かりません・・・
左 ホワイトアルカパ 中央 初音ミクまで登場 右 で、こういうものもあります
左 お馴染みちびまる子 中央 外国からも雪像参加 右 一般作品です
左 滑り台は子供に大人気 中央 ステージになってます 右 伊勢からも観光PRに参戦
左 スノボー会場もあり 中央 見慣れたこいつもいました 右 トウガラシの化け物かと思えば、テレビ塔のマスコットだとか 雪像には市民が作ったと思われるものもあったが、トトロやドラえもんやアンパンマンなど結構版権ものが多かったのが気になるところ。すぐに壊す雪像だからOKなんだろうか? しかしジブリはともかく、強欲なディズニーなんかだったら使用料を徴収に来るだろう。まあその危険は承知しているのか、それとも単に人気がないだけなのか、例のネズミの像を見かけることはなかったが。人気キャラクターは上記の三者だが、意外なところではなめこ(現在アンドロイドアプリで大人気とか)が結構多かった。
左 ピカチュウに 中央 バイキンマン 右 そして何故か冷凍みかん 会場を西から東まで一回りしたが、私の期待があまりに大きすぎたのか正直なところイマイチの感は否めない。それならそれで以前なら縁日食い歩きに徹したのだが、今はそれも封じられている状態。結局は1時間少々の見学でホテルに戻ってきてしまう。
ホテルに戻ると大浴場で入浴。かなりホッとする。入浴後はしばし部屋でボヤーッとしていたが、このままでは時間が無駄だと感じ外出することにする。
向かったのはもいわ山。札幌郊外にあり、市街を一望できるという山である。山上にはロープウェイで登れるようになっている。今まで何度か札幌に来たが、どうしても時間の都合などで立ち寄れなかったところである。今回はここから札幌の夜景を楽しもうという考え。
路面電車に乗車するとロープウェイ入口駅を目指す。しかし道路が雪で狭くなっているせいで車が軌道上にはみ出しており、電車が走るのも一苦労である。警笛で車を蹴散らしながら強引に走行するイメージ。
ロープウェイ入口駅では多くの乗客が降車する。どうやら私と目的が同じらしい。駅の近くからはロープウェイ山麓駅まで無料シャトルバスが出ているのでそれに乗車。ロープウェイ駅までは距離的にはそう遠くないが、かなり強めの登り坂であり、確かにこの積雪下ではバスで移動するのが無難である。
シャトルバスでロープウェイ乗り場へ
昨年春に新装なったというロープウェイは、函館山のものを思わせるような巨大なゴンドラである(定員66名とのことだから、実際は函館山の125名の半分だが)。これが通常時は15分間隔で運行されている。ロープウェイ山麓駅にはツアーバスの乗客も来ているので大勢の乗客でごった返している。満員のロープウェイが高度を上げるとすぐに眼下に札幌の夜景が広がり始める。
ロープウェイのキャラクター 札幌人のキャラクターセンスって・・・
ロープウェイに乗り込む ロープウェイは5分ほどで中腹駅に到着する。ここは土産物屋が並んでいるがそれはパスしてもーりすカーに乗り換える。もーりすカーは上下二段式のケーブルカー。かつてはここはリフトだったそうだが、冬の札幌でリフトはツライだろう(だから冬には雪上車を運行していたとか)。今は密閉式のゴンドラで快適に登れる。1分ちょっとで展望台を備えた山頂駅にすぐに到着する。
中腹駅でもーりすカーに乗り換え 山頂駅に登るとまずは夜景見学。天候が懸念されていたが(山麓駅から乗車時に「天候の関係で夜景が見えない可能性があります」と警告を受けていた)、そんな不安は払拭するように見事や夜景が広がっている。やはり日頃の行いが良い者はこういう時に現れるようである(笑)。函館山の夜景はもろに眼下に市街が広がる印象だったが、札幌の夜景は手前の山々を隔てて少し離れたところに広大な市街が広がっている。札幌の夜景は光がオレンジ色なのが特徴的だが、これは札幌市が雪の中でも視認性の良いオレンジ色の該当の導入を進めているからだとか(確かに白色だと雪で乱反射して大変なことになりそうだ)。
ちなみにロープウェイ内での説明によると、この藻岩山からの夜景と函館山からの夜景、さらに小樽の天狗山からの夜景が北海道三大夜景だそうな。とかく日本人は三大○○が大好きなようだ。ちなみに日本三大夜景に挙げられているのは函館山の夜景と六甲山からの神戸の夜景、さらに長崎の稲佐山からの夜景だそうな。このうち函館山の夜景は以前に、六甲山からの夜景はガキの頃に何度も見ているが、長崎の夜景はまだ見たことがない。なお藻岩山展望台には「幸せの鐘」なるものが設置されており、恋人達の聖地として売り込んでいるようだ。函館山の夜景がカップルで訪れると破局になるという都市伝説があるのと対照的。それともその都市伝説自体が札幌市関係者によるネガティブマーケティング工作なんだろうか。
幸せの鐘
夜景は美しいが戸外は身を切られるように寒い。夜景を堪能すると屋内に戻ってプラネタリウムを鑑賞することにする。別段なんということのない内容であったが、プラネタリウムは結構好きである。
プラネタリウムを鑑賞するともーりすカーとロープウェイを乗り継いで降りてくる。往路よりも復路の方が団体客などで混雑しており、ロープウェイの運行本数も増やしたようである。山麓駅からはシャトルバスで路面電車の駅に戻るが、電車を待っている間に寒さで震えるような状態。万全を期していたつもりの防寒装備も札幌の夜を凌ぐにはまだまだ甘すぎたようである。
路面電車でホテルの近くまで戻るが、ホテルに戻る前に身体を中から温めるべく夕食を摂ることにする。血糖値が少々気にはなるが、やはり札幌と言えばラーメンを食べないわけにはいかないだろう。ホテルの近くの「初代一国堂」に入店する。注文したのは「醤油ラーメンセット(980円)」。
鍋に入ったラーメンが運ばれてくる。麺は太めでスープはコク系。チャーシューはなかなかに旨い。特別に印象に残る程のラーメンでもないが、特に不満が残るようなラーメンではなくボリュームもある(それが今の私にはつらかったりするが)。
次にセットの餃子と炒飯が出てくるが、炒飯の量を見た途端に「これは全量を食べるわけにはいかない」と感じる。炒飯の味付けが結構私の好みだったために、痛恨の思いで半量程残す。これは常に食欲と勿体ない意識の両面から攻められる行為だ。
夕食を済ませるとコンビニに寄ってからホテルへ。例によってサラダで不足の野菜分を補うと、大浴場で今度は身体を外から温める。身体を温めた後は非常用の防寒着として持参していたトレーナーをさらに下に着込んでから夜の札幌の町に再度出撃する。
昼に雪祭りを一周した時にはやや期待はずれ感があった上に、人間的に最底辺の連中まで目にしたことで精神が毒されたのか、いささか気分が沈んでしまっていた。しかしその沈んだ気分ももいわ山の夜景で完全に癒されていた。そこでライトアップされた夜の雪祭りに再び参戦しようとの考えである。
左 タイの宮殿 中央 新歌舞伎座もライトアップ 右 やっぱりよく分かりません・・・
左 メロン熊 中央 初音ミク 右 海外勢
左・中央 外国からも雪像参加 右 ちびまる子ライトアップ
左 何かスポーツ関係のマスコットらしい 中央 トトロに 右 なめこ
左 アンパンマンに 中央 カービィ 右 そしてまたなめこ 結論から言えば「札幌雪祭りは夜の方が本番」であった。暗闇の中でライトアップされた雪像は、昼の白っぽい中でボンヤリとたたずむ雪像よりも格段に存在感を増すし、今年の雪祭りに導入された「プロジェクションマッピング」(雪像に映像を投影することで効果を増す)はかなり効果的であった(アウディのプロモーションを鑑賞)。ただ混雑のために問題が発生した模様で、メイン会場でのプロジェクションマッピングが「安全のために中止」とのアナウンスがなされていたのが非常に残念であった。
アウディブースの プロジェクションマッピング
夜の札幌 ライトアップが終了する22時前まで夜の雪祭りを堪能してホテルに戻ると、再度大浴場で身体を温め、その後すぐに床についたのであった。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時前に起床すると向かいの本館で朝食。この朝食バイキングもボリュームタップリの豪華なもの。ドーミーの北海道は飯が旨いようである。カロリーは気になるが、あまり食事を抑えすぎると寒さに勝てない。今日も朝からガッツリ頂く。
さて今日の予定だが、北海道地区に残されたもう一つの宿題を解決する予定。現在のところ北海道の鉄道で唯一未視察で残されているのが石勝線の視線である夕張線。実は先の北海道遠征の際にここの視察も予定に入っていたのだが、視察予定の数日前に雪解け水による路盤流出事故が発生して全面運行停止になってしまったという経緯がある。今回はこの残された宿題も解決しておくつもりである。
新夕張まではスーパーとかちで移動する。列車ダイヤの都合で10時台の出発のとかちなので、朝風呂を浴びてしばしホテルでマッタリしてから出かけることにする。
新夕張までは特急で1時間程度。札幌方面行きの特急は混雑しているようだが、この時間帯のこの方向の特急はあまり混雑していない。新夕張へは予定通りに到着する。
旅のお供はうらら緑茶とぽっぽ饅頭 新夕張駅で乗換待ちが30分程度。駅前を散策しようかとも思ったが、駅前にはかつての旧名・紅葉山駅の看板があるだけで特に何もなさそうな気配なので止めにする。
左 新夕張駅駅舎 中央 駅前風景 右 駅構内 夕張行きの列車はキハ40系の単両編成がワンマン運転されている。JR北海道エリアでよく見かける寒冷地仕様の二重窓車両である。隣のホームに新夕張止まりの列車が到着してから、乗換客を待って十数人の乗客を乗せて発車する。
夕張線の沿線は明からさまに人口が少ない。終点の夕張以外では集落は清水沢周辺ぐらい。かつての炭坑で賑わっていた頃に比べると、恐らくは見る影もないのだろう。かつては石炭輸送で賑わっていたと思われるこの路線も、今では日に数本の列車が往復するのみ。平行する道路もあることから乗客は限られるだろうことは想像に難くない。終点夕張には30分弱で到着する。これで北海道地区の鉄道は完乗。しかしさして深い感慨はないというのが正直なところ。例によって一抹の虚しさがつきまとう。
左 沿線風景 中央 沼ノ沢駅 右 終点手前の鹿ノ谷駅
終点夕張駅の風景 夕張駅前には巨大ホテルが建っている。このような大型投資が結果として財政の破綻につながってしまったようである。どうも石炭産業という重厚長大産業が中心だっただけに、大鑑巨砲主義に陥ったような気がする。夕張メロンなどは全国的ブランドになったのだから、もっと血道な地域興しをしても良かったような気がするのだが、まあ石炭のような巨大産業の後釜が夕張メロンだけでは心許なかったのは分からないでもない。しかし結果として、夕張は全国に先駆けて財政破綻した自治体第一号として知られる羽目となってしまった。今ではそのツケは住民サービスの大幅な低下などの形で跳ね返ってきていると聞く。
左・中央 駅前の超巨大ホテル 右 ホテルの裏はゲレンデ 夕張線にもっと本数があれば1時間程度は散策でもするところなのだが、何しろ次の列車は3時間後。こんなまともな駅舎もない駅で3時間もつぶしようがない。冬の夕張に用があるわけでもなく、しかも美術館は昨年の雪で倒壊してしまっていることから現地滞在8分で引き返してくる。駅前がそのままゲレンデになっているのでスキーの趣味でもあったら一滑りしてくるところだが、生憎と私にはそんなブルジョアな趣味はない。
ガラガラの普通と満員の特急を乗り継いで再び札幌に帰ってきたのは午後2時頃。とりあえず昼食を摂る必要がある。ラーメンでも食おうかと駅ビルのラーメン横丁をのぞくが、どの店も長蛇の列で馬鹿らしくなってやめにする。結局は行列の出来ていないそば屋で鴨蕎麦を頂くことに。
さて今日の予定であるが、もう雪祭りは十分なので美術館の方に行くことにする。地下鉄を乗り継いで北海道立近代美術館を目指す。地下を移動する分には問題ないのだが、地上に出た途端に道路が雪のバリケード状態で歩くのが難儀。また地下通路から地上に出る直前は気圧の差のせいか凍り付くような風が吹いてきて凍死しそう。札幌にはホームレスはいないんだろうか? どう考えてもそんなはずはないのだが。
目的地の北海道立近代美術館はほとんど雪に埋もれていた。
「AINU ART ―風のかたりべ」北海道立近代美術館で3/24まで
北海道の先住民であるアイヌ人の文化的な遺産を展示した展覧会。さらにはその流れを汲む現代作家による作品も併せて展示する。
アイヌ人と言えば、野蛮な未開の狩猟民族という本土式の偏見に満ちた視点を持ちがちなのであるが、ここに展示された品々を見ると、彼らが独自性の高い高度な文化を所有していたことが分かる。恥ずかしながら私も彼らの文化がここまで洗練されたものであるとは全く知らなかった。厳しい自然環境の中で狩猟民族として自然と共生してきた姿が彼らの文化からは伺える。
現代作家達による展示もかなり興味深いものであった。圧巻はその卓越した木工技術。木彫り彫刻の類についてはよくもここまでというほどの作り込みに圧倒された。
正直なところ特に期待を持っていた展覧会ではなかったのだが、予想外に楽しむことが出来た。こういう新しい出会いがあるから展覧会は楽しい。
これで今日の予定はもう終わり。実のところもう札幌において考えていた予定は全くない。疲労も溜まっていることだし直接ホテルに帰ると、例によって大浴場でマッタリとする。
さて今日の夕食だが、北海道に来てから魚介類が多かったせいか、とにかく猛烈に肉が食いたくなってきた。頭に浮かんだのはトンカツだが、北海道でトンカツを食べるのもあまりに芸がない。そこで札幌と言えばと浮かんだのがジンギスカン。早速ネットで検索して目星をつけると夕方の繁華街に繰り出す。
当初目を付けていた店は生憎と休み。目的を失って繁華街をウロウロしていた時にたまたま目にした「ひげのうし」という店からビビッと来るものを感じたことから、ここに入店する。
焼肉屋といえばどうも一人客を想定していないような店も多いのだが、この店は一人客を想定したメニューをキチンと用意しているのが気が利いている。一人用の三種組み合わせのセットがあったのでそれを注文する。私が注文したのはジンギスカンとラムカルビ、さらにラム塩タン(札幌で塩タンと言えばラムらしい)。しばらくすると目の前に二台の炭火コンロが用意される。ジンギスカンとラムカルビはジンギスカン鍋で、塩タンは網で焼くとのことらしい。結構細かいこだわりが見える店である。
左 タン塩用の金網 中央 こちらはジンギスカン用 右 突き出しのタマネギと白ネギが乗りました ジンギスカンを頂くのは初めてなのだが、肉が良いのか意外な程にクセを感じない。羊の肉と言えばとにかく臭いというイメージを持っていたのだが、それは偏見だったのか。塩タンに至っては牛タンとそう区別がつかない。また突き出しのタマネギと白ネギが意外な程に旨い。これらがジンギスカンにこんなに合うとは。機嫌が良くなったところでさらにジンギスカンのハーフサイズを一皿追加して夕食を終える。ウーロン茶やライスセットなどを加えて以上で支払いは2810円。大同門なんかで焼肉を食べたらいくらかかるかを考えるとなかなかにリーズナブル。しかもこちらの方が満足度は桁違いに高い。
左 お肉到着 中央 早速ジンギスカンを 右 こちらはラムタン 腹を膨らましてホテルに戻ると、またもお約束のようにサラダで野菜を補給してから、再び入浴して身体を温める。この日はこのままホテルでテレビをボンヤリと見て過ごしたのだった。
☆☆☆☆☆
翌朝は7時頃に起床する。今日は最終日。昼の飛行機で戻らないといけない。来る前は冬の北海道なんて寒いだけではと思う気持ちもあったが、来てみると想像以上に堪能できた。かなり未練があるが旅はいつか終えないといけないものである。
例によって向かいの本館で朝からタップリ頂く。体重が増えているのではないかと心配になるが、今はそのことは考えないことにする。
朝食後は朝風呂。北海道は寒いからこそ風呂のありがたみがよく分かる。考えてみるとこの遠征は風呂に入りっぱなしだったような気がする。テルマエ・ロマエが「風呂に入るとつまらない争いなんてどうでも良くなる」という類のことを言っていたが、確かにそうである。朝鮮人が云々なんてつまらぬことで騒ぐよりも、まずはじっくりと入浴すればよいのに・・・そう言えば風呂にも入ってなさそうな奴ばかりだった。
入浴後は荷物をまとめるとしばし休息。9時前にチェックアウトしてタクシーで駅まで送迎してもらう。タクシーは当然のようにスタッドレスタイヤを履いているが、交差点で停まった後にタイヤが滑って四苦八苦。運転手の話では、全員がスタッドレスを履いているから雪面が磨かれてツルツルになるので、そうなるとどうにもならないのだそうな。また札幌でもやはり下手くそなドライバーは少なくなく、そういう連中が全体に迷惑をかけまくっているとか(二車線の道路の真ん中を走って一車線にしてしまうなんてこともあるらしい)。
駅に到着すると土産物を買い求め(白いブラックサンダーとかわけの分からない品も多かったが)、快速エアポートのuチケット(指定席券)を買い求める。今日も札幌は大混雑で、私と同様に今日帰る者も少なくないようである。uシートはすぐに埋まってしまい、私のチケットが最後だった模様。
白いブラックサンダー
新千歳空港は大勢の旅行者であふれかえっている。とりあえず昼食を摂ってからゲートに向かうが、手荷物窓口は長蛇の列。私のキャリーは機内持ち込みサイズなので直接荷物検査場へ。ただゲートを抜ける時は問題なかったが、私の便は満席の上に乗客の上着などもあって荷物が多いからと、キャリーは後で預けさせられることに。
空港レストランはCPが悪い 神戸空港までは2時間程を要して到着することになる。神戸でもやはり外は寒いのは違いなかったが、北海道の寒さを体験した私にはまるで甘っちょろいものに思われたのは確かであった。
結局は札幌の雪祭りをメインにしつつ、北海道での宿題を解決、さらには食いまくりの風呂三昧という遠征となった。北海道では天候が気になっていたが、幸いにも天候が大荒れになることはなく予定はほぼすべて達成できた。これもやはり私の日頃の行いの良さというものだろうか(笑)。なおもうこれで北海道での課題はほとんど果たしたことから、北海道に行くのは今回で最後になるだろうと思っていたのだが、今回の遠征で思いの外に冬の北海道が気に入ってしまい、機会があったらまた行ってみたいという気があるのは事実。ただかかる費用が半端でないのでそうそう簡単にはいかないだろうが。
なお帰還に際して一番気になっていたのは体重である。とにかく本遠征はやたらに食いまくったという印象があったので、体重が大幅に増加しているのは必至だと考えていた。しかし帰還して体重計に飛び乗ると、案に反して体重は減少していた。ウニにラーメンにジンギスカンはダイエット食だったのか・・・なんてことはあるはずはなく、大通公園を二回りして二万歩とか、とにかくやたらに本遠征では歩き回っていたことが幸いしたか。それに寒冷地なので体温維持のためだけでも代謝がかなり上がっていただろうことも想像がつく。冬の北海道はなかなか良いところである(笑)。
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