展覧会遠征 東京編2

 

 先週は名古屋日帰りであったが、今週は東京遠征を実行することと相成った。目的は東京地区で開催中の展覧会を押さえるためである。

 

 行動開始は金曜日の夕方。最近の東京遠征では定番となっている東京前泊である。仕事を終えると新幹線で東京に直行する。宿泊ホテルはお約束のホテルNEO東京。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は5時過ぎに起床。美術館を回るだけならこんなに早く起きる必要などないのだが、わざわざ前泊までしているのだからついでに東京地区鉄道視察も実施してやろうという考え。今回は視察対象はJR鶴見線。

 出典 JR東日本HP

 JR鶴見線は川崎の沿岸工場地帯を走る路線。そもそもは沿岸工場地帯の貨物輸送用路線なので、全長は短いのに支線が多いのが最大の特徴である。以前に扇町までの本線は視察しているのだが、海芝浦・大川といった支線の視察がまだ。と言うのはこれらの支線は沿線企業の通勤路線であり、ダイヤがかなり特殊であるからである。要は朝と夕方の通勤タイム以外は列車が皆無。そこで通勤客にあわせての早朝出発となった次第。

 JR鶴見線ホーム

 JR鶴見駅に到着すると、駅内改札を経由して鶴見線ホームへ。海芝浦行きの列車はまもなく到着。土曜日であるにも関わらず、いかにも通勤客と言った風情の乗客で車内は結構混雑している。

 列車が到着

 列車はJR京浜東北線を高架で越えると南進。沿線は最初は住宅地だが、鶴見小野以降は工場が主になる。浅野は海芝浦方面の支線と安善方面への大川線・本線とのホームが分離したV字型のホーム構成になっている。

 

 ここを過ぎると沿線は工場街のど真ん中。左手の窓からは海が右手の窓からは工場街が見える。そのうちに右手の工場が東芝になったところで終点の海芝浦。この駅は駅から出た途端に東芝の構内になってしまうので、東芝の従業員など以外は駅から出られない。従業員らしい乗客がゾロゾロと駅から出て行くと駅内は閑散とする。私は構内で海の風景を楽しみながら次の列車を待つ。

海芝浦駅

左 関東の駅100選に認定されている  中央 海芝浦駅ホーム  右 すぐそこに海が見える

 20分後に到着した次の列車で折り返し。浅野駅で大川支線に乗り換える。次の安善駅(工場街向きの名前の駅だな)で本線と分かれるが、しばし本線と併走。本線の武蔵白石駅辺りからカーブで本線と分かれると、後は沿線風景は海芝浦線と似たようなもの。違いはこちらは線路沿いに道路が走っていること。終点の大川は工場街の真ん中で、付近の従業員らしき乗客がゾロゾロと降りていく。

浅野駅

左 沿線の風景  中央・右 大川駅

 これで鶴見線の視察は完了。大川では乗ってきた列車でそのまま鶴見まで帰還。東海道線で藤沢まで移動する。藤沢からは小田急江ノ島線の視察。小田急藤沢駅はJRの駅と隣接している。江ノ島線はその名の通り相模大野から片瀬江ノ島までをつなぐ小田急の支線だが、藤沢でスイッチバックになっている。なお以前に片瀬江ノ島−藤沢間及び相模大野−中央林間間は視察済みである。

 出典 小田急HP

 藤沢を出た列車は住宅街を北上。沿線風景は最初の辺りは傾斜地のやや郊外めいた住宅地であるが、やがていかにも東京近郊のベッタリとした住宅地になって極めて無個性。つまりは特に見るべきものはない。

 出典 東急HP

 中央林間で下車するとここから東急田園都市線に乗り換える。東急田園都市線は既に視察済みだが、その支線になるこどもの国線を視察しておいてやろうという考え。長津田まで移動するとこどもの国線に乗り換え。ここでは一端改札を出る形になる。

左 こどもの国線ホーム  中央 列車が到着  右 車内風景

 こどもの国線はその名の通り、遊園地であるこどもの国へのアクセス路線。そのために乗客は圧倒的に子供連れ。平日の朝と夕には増発があって中間駅の恩田で列車交換があるようだが、土日とデータイムは完全にパターンダイヤで一編成のみが往復運転しているようだ。二両編成ロングシートの車内は子供連れで満員でいささかうるさい。

 沿線には田んぼも

 列車は長津田を出るとすぐに急カーブにさしかかるので、最初はかなりトロトロと走る。やがて沿線から住宅が減り、なんと田圃が見えてくる。ただ宅地開発は既に田圃のそばまで迫っている。終点のこどもの国が近づくとまた住宅が見えてくるが、どことなく田舎ムードがあるのは事実。

こどもの国駅

 遊園地に用はないので長津田に引き返すとJR横浜線に乗り換えて橋本まで移動。今度は京王相模原線の視察である。

 出典 京王電鉄HP

 京王の沿線も住宅地であるが、多摩センター近辺はいかにも新興住宅地的。ここでは多摩モノレールが上に見えている。またしばし小田急多摩線と併走する部分がある。

 

 調布に到着するとここで本線に乗り換え、東府中を目指す。東府中からは支線で府中競馬正門前へ。この路線は競馬場のアクセスのための路線なので、当然のように車内には競馬新聞を持ったオッサンが多く、独特の底辺臭が漂うことになる。ギャンブルをするから底辺になるのか、底辺だからギャンブルをするのか、鶏と卵のようなものである。なおデータによると、競馬でよく勝っているという者でも回収率は90%もいかないとか。つまりは競馬をすればするほど確実に損をすると言うことである(そもそもそうでないと競馬関係者を養えない)。つまりは競馬で儲けようと思う者は数学もできない頭の持ち主ということで、そういう者がどうなるかは・・・言うまでもない。なお呆れたのは競馬雑誌を片手にした子供連れまでいたこと。まさに底辺エリート教育である。そんなに自分の子供を底辺に固定したいのだろうか?

府中競馬正門前駅

 府中競馬場正門前で降りても、当然のように私は競馬場なんかには用はない。さっさとそれを迂回して西武の是政駅を目指す。ここまで来たのだから西武多摩川線もついでに視察する予定。

 出典 西武鉄道HP

 競馬場の横を突っ切ると是政駅までは20分程度で到着する。府中自体は普通の町なのだが、やはり競馬場のせいで雰囲気が・・・。なお是政から西武鉄道に乗車すると、次の駅が競艇場前だったのにはのけぞった。府中はギャンブラーのパラダイスか? だとしたら私とは相性最悪である。

是政駅

 西武多摩川線はかなりゴチャゴチャした住宅地の中を走る路線。多磨駅では大量の乗客が乗り込んでくる。終点の武蔵境駅はJRの駅と隣接しているが、この路線自体は西武の他の路線からは完全に分離した奇妙な形。西武はやたらに支線が多いと言われているが、確かにそうである。

 

 ところで多磨駅と聞いた時「多摩?」と驚いたのだが、よく見ると字が違っていた。なお関西人の私にとって分かりにくいのが多摩という地名で、多摩と言われてもどこを指しているのかが分からない。最近になって分かってきたのは、青梅市の奥にあって多摩川上流部の山間部の地域は奥多摩。多摩川中流の多摩丘陵にある古めの新興住宅地が多摩市。そして西武の多磨駅は多摩川の対岸で府中市多磨町だそうだが、これも元々は同じ多摩だろう。推察するに、そもそもは東京の西側の田舎地域はまとめて「多摩」だったのが、人口増加に伴って細分化されたのだろう。

 JR武蔵境駅の隣に西武の車両が見えている

 武蔵境でJRに乗り換えると隣の三鷹まで移動する。都内私鉄の視察はここまで。これからは東京遠征の本題である美術館訪問である。実は今日の最初の目的地はここである。三鷹で美術館と言えばジブリ美術館だが、何も私は再訪問するつもりはサラサラない。今回の目的地は三鷹市美術ギャラリー。もう昼時なので美術ギャラリーの一階下の飲食店で昼食に鶏すき焼き定食を食べると美術ギャラリーに向かう。

 この日の昼食


「華麗なるインド−インドの細密画と染織の美−」三鷹市美術ギャラリーで6/23まで

 インド独自の芸術であるミニアチュール絵画(細密画)を中心とした展覧会。

 ミニアチュールとはそもそも仏教経典の挿絵を起源にしているとのことだが、とにかく小さい絵でそれにも関わらず非常に精密な線で細かい書き込みが為されている。絵柄的にはいかにもインドというイメージ通りのもの。西欧絵画や中国とは感覚が全く異なる。個人的にはエジプト絵画に近いセンスのようなものを感じた。特にインドに対しての思い入れはない私でも、それなりに楽しめる作品が多い。

 染織についてはインドを代表する産業とのことだが、さすがに布は私の守備範囲外。フーン綺麗ねで終わるしかなかった。


 三鷹での用事を終えるとJR中央線で新宿まで移動する。次の目的地は副都心のビル街の中である。

 


「オディロン・ルドン−夢の起源−」損保ジャパン東郷青児美術館で6/23まで

 

 象徴主義を代表する幻想的な絵画で知られるルドンの展覧会。彼の初期の作品や関連する画家の作品等も併せて展示されている。

 ルドンは画家を志して教育を受けるが挫折、結局は故郷のボルドーに戻ってから放浪の画家として知られた版画家のロドルフ・ブレダンに版画の指導を受けたとのこと。このロドルフ・ブレダンの作品も展示されているが、緻密な表現が圧巻の作品。ルドンの版画も併せて展示されているが、ブレダンのものに比べると稚拙さが目立つ。

 以前から彼の作品を見た時に気になってはいたのだが、本展で改めて確信したのはこのルドンの絵画技術の稚拙さ。彼はその独自のグロテスクさを秘めた幻想性を持つ絵画で人気を博したが、絵画技術としてはむしろ稚拙であると言わざるを得ないだろう。

 なおルドンの幻想の原点の一つは顕微鏡の世界への興味だとか。なるほど微生物の世界なら彼の感覚も何となく理解できる。ルドンという画家の原点を知るには最適の展覧会であった。


 本展を見て感じたのは、やはりルドンとはインパクト勝負の画家なのかということ。その時に頭によぎったのは、最近話題のコミック「進撃の巨人」。

 

 新宿での用事を終えると次の目的地へ。JR山手線で渋谷に移動すると、そこからバスに乗車する。それにしてもやはり渋谷駅は例の工事のせいで以前に比べて格段に使い勝手が悪くなっている。

 


「百花繚乱−花言葉・花図鑑−」山種美術館で6/2まで

 

 花鳥画というジャンルがあるぐらい、花の絵は日本画でははずせない題材である。その花の絵を集めた展覧会。

 日本画は装飾性を含んだ作品が多いのだが、やはり題材が題材だけに本展ではひときわ装飾的な絵画が多い。絢爛豪華で煌びやかである。ただその分、深みに欠けるようなきらいもないでもない。

 本展で圧巻だったのは速水御舟の「名樹散椿」。背景の金地が全く何のニュアンスも含まない正真正銘の無であるのには思わず飲まれた。


 再び渋谷に戻ってくると今度は地下鉄を乗り継いで次の目的地へ。この頃になると大分体もへばってきて、荷物の重さが体に染みる。

 


「フランス国立クリュニー中世美術館所蔵 貴婦人と一角獣展」国立新美術館で7/15まで

 

 1500年頃の制作とされる「貴婦人と一角獣」はタペストリー芸術の至宝とも言われている。本展はこの名品が日本で初公開される展覧会である。

 タペストリー以外にも同時代の工芸品なども展示されているが、実質的には上記のタペストリーのみの展覧会に近い。しかしこれが圧倒される作品。何よりもこの作品をタペストリーで編んだという労力には唖然とする。中世は芸術的には不毛の時代とも言われるが、工芸の点での発展はかなりのものがあったのかもしれない。


 再度渋谷に戻ってくる。本来ならさっきと順序を入れ替えた方が楽なのだが、あえてこの順序にしたのは美術館の閉館時刻の関係。もう既に夕方になってきている。それにしても渋谷は以前からうるさい町だが、最近は日の丸を掲げた明らかにおかしな連中が闊歩していたりする。どうも以前に比べて嫌な雰囲気の町になってきた。

 


「現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展」BUNKAMURAで6/16まで

 

 現代スペイン芸術を代表するリアリズムの巨匠・アントニオ・ロペスの展覧会。

 リアリズムにこだわる彼は、絵画においても光の再現のために決まった時間に決まった絵を描いていたとか。そのために完成までに何年もかかった絵画も少なくない。ただその作品は呆気にとられるようなリアリティである。特に凄まじいのはスペインの風景を描いた一連の大作。よくまあここまでという言葉が出てくる。

 リアリズムにこだわった結果、彼は絵画表現にとどまらず、立体表現なども駆使しているようである。人体の復元などもあったが、とにかくこだわりがかなり強い。それが彼の独自性であり、最大の武器なのだろう。とにかくインパクトの強い芸術家である。


 ようやくこれで今日の予定は終了である。後は夕食を摂ってホテルに帰るだけ。ただ疲れ切っているのか夕食を考えるのも面倒になってきている。どうしようか考えながら駅までプラプラ歩いていると、以前にも入店したことがある「元祖くじら屋」が目に付いたので入店する。「くたばれシーシェパード(食肉利権屋と人種差別主義者の飼い犬)!」

 注文したのは「チーズ鯨カツの定食」。鯨の赤身はやや淡泊であるから、それにチーズを加えてコクをつけた逸品。チーズと鯨肉のバランスが絶品。

  

 大分機嫌が良くなってきたので、さらに追加注文する。少々張り込んで「にたり鯨の尾の身の刺身(2000円)」を注文。これがまた舌でとろけるような絶品物。マグロのトロとも違い、馬刺とも違い、牛肉とも違う、とにかく極上の逸品である。

 なかなかに堪能した。何となく頭の中で漠然と「肉が食いたい」というイメージがあったので、それにピッタリのチョイスだったようにも感じる。コストは少々かかったが、今回はそれには目をつむる。

 

 地下鉄を乗り継いでホテルに戻ると大浴場で入浴してから早めに床につく。とにかく今日は疲れた。東京遠征ではとにかく歩くことが多いが、今回は府中での移動も効いて二万歩越え。正直なところかなりのダメージが来ている。明日のことを考えるととにかく体力の回復が必要である。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時過ぎまで爆睡。今日は上野地域を中心とした美術館の掃討戦なので時間的にはやや余裕がある。買い込んでいた朝食を摂ると、荷物をまとめてチェックアウトしたのは9時前である。上野駅でロッカーにトランクを放り込むと東京都美術館に急ぐ。しかしいつも以上に上野に人だかりがあるのでなんだと思えば、国立西洋美術館前に大行列が出来ている。今日で「ラファエロ展」が最終日なので、駆け込みの客が殺到しているようである。私も時間に余裕があればもう一回立ち寄っても良いと思っていたのだが、これを見て諦めることにする。

 


「レオナルド・ダ・ヴィンチ展−天才の肖像」東京都美術館で6/30まで

 展示のメインはレオナルド・ダ・ヴィンチの手稿。その内容は芸術分野だけでなく土木・数学などの自然科学分野にまで及んでおり、彼の多才ぶりを目の当たりにすることが出来る。とは言うものの、要は彼が残したメモの展示ということであるから、展覧会としてはあまりに地味でマニアックに過ぎる。強烈なダ・ヴィンチファンなら垂涎ものなのかもしれないが、そこまで思い入れのない私の場合はフーンで終わってしまう。

 さすがに主催側もこれだけでは地味に過ぎることは感じているのか、併せて彼の油彩画「音楽家の肖像」も展示してあるのだが、この絵も個人的にはイマイチ。あの「受胎告知」を見た時に感じたようなオーラは感じられず、今一つ冴えない絵という印象。むしろダ・ヴィンチの影響をもろに受けた同時代の画家の作品の方が面白かった。なおダ・ヴィンチ登場前と登場後の時代のスケッチを比較できる展示もあったが、それを見るとダ・ヴィンチの登場は絵画の表現技術に大きな影響を与えたことが伺え(ダ・ヴィンチ単独の影響ではないかもしれないが)、彼が天才といわれる所以について納得は出来た。


 予想以上に地味な展示内容だったので見学はサクッと終わってしまった。上野地区の次の美術館へと移動する。

 


「夏目漱石の美術世界展」東京藝術大学美術館で7/7まで

 

 文豪・夏目漱石であるが彼は美術にも造詣が深く、作品の中で美術作品について言及していたり、美術批評を行ったり、さらには同時代の芸術家とも交流があったりなどしていた。その漱石の美術世界に注目しようという展覧会。

 展示作品は洋画から日本画まで幅広い。とにかく漱石の趣味の広さがよく分かる。また併せて彼の美術批評などの文も展示してあるが、実際には彼の批評は根本的に好き嫌いに根ざしているということも分かって面白い。


 絵を見るだけでなくて文章を読む必要があるので、見学に思った以上に時間がかかってしまって既に昼前。次の目的地に移動することにする。次の目的地へはメトロ銀座線で移動。三越前で降りると駅のすぐそばである。

 


「河鍋暁斎の能・狂言画」三井記念美術館で6/16まで

 幽霊などの化物画のイメージの強い河鍋暁斎だが、その卓越した画力はもっと正統派な分野でも発揮されている。本展は暁斎が手がけた能・狂言画を展示している。

 正統派な分野だけに暁斎独自の意表を突く外連味は見られないが、その代わりに彼の確かな画力を確認することが出来る。ただよく見ると随所に彼らしさはあり、動きのある場面の表現などは彼の風俗画を連想させる。また個人的に面白かったのは彼の鶴亀図。鶴の一部だけ描いた画が、超巨大な怪獣のように見えて驚かされた。


 そろそろ昼食時である。面倒なのでこのビルの地下の飲食店街で探す。入店したのは「博多地料理蔵人」「まかない丼(900円)」を注文する。なんで東京で博多地料理だと思うが、それが東京という土地。居ながらにして日本中の料理を食べることが出来るグルメ都市とのことだが、実際のところはほとんどが単なる劣化コピーである。そして東京の郷土料理と言えるものは皆無。この歪んだ人工都市らしくはある。

   

 刻んだ海鮮丼と言ったところだが内容的にはまずまず。とにかく東京で食事する場合は食べられれば良しとしているので、そういう点では特に不満はない内容。

 昼食を終えると次の目的地だが、ここはやや遠い。三越前からメトロ銀座線で青山一丁目まで移動すると、そこで都営大江戸線に乗り換え。次の目的地は練馬である。ただここまで来たのだからついでに大江戸線の視察。終点の光が丘まで乗車。しかし光が丘は特に何ということのない住宅地なので引き返して豊島園で西武に乗り換える。豊島園には遊園地があって、その真ん前が西武豊島園駅。豊島園−練馬は西武池袋線の支線になっていて、池袋との往復運行がされている模様。隣の練馬までは密集した住宅地の軒先をかすめるような路線。それを抜けて高架にはいると練馬駅。ここで乗り換えると隣の中村橋で下車する。目的地は駅のすぐ近く。

大江戸線光が丘駅には特に何もなし

左・中央 西武豊島園駅  右 中村橋駅に到着


「牧野邦夫−写実の精髄」練馬区立美術館で6/2まで

  

 レンブラントを尊敬し、写実の技を磨き上げつつ幻想的な絵画を描き続けた牧野邦夫の展覧会。

 レンブラントを尊敬しているせいか、やたらに自画像が多いのが特徴の一つだが、彼の写実絵画というのはただ単に事物を写し取るのではなく、そこから自由なイメージを派生させた幻想的(というよりもグロテスクでエロチック)な絵画を描き上げている。

 ややもすれば悪趣味にも見えるのだが、絵画の技量が高いのでそれでも作品として魅力あるものに仕上がっている。好き嫌いは分かれそうだが、インパクトが非常に強い絵画である。


 会期末だったせいか会場内は結構混雑していた。好きな絵とは言い難い部分もあるが、それなりに面白いと感じた絵画だったので図録を買っておこうかと思ったが、3300円とやたらに高かったのでさすがに止めにした。

 

 そろそろ本遠征も終盤である。しかし体力的にも限界に近づきつつある。最後の目的地へと折り返す。練馬で西武有楽町線に乗車するとそのままメトロ有楽町線に乗り継いで飯田橋へ。疲労が溜まっているので紀の善で一服したい気もあるが、時間に余裕がないのでJR総武線に乗り換えて目的地へと急ぐ。次の目的地は両国国技館の隣。

 


「ファインバーグコレクション展 江戸絵画の奇跡」江戸東京博物館で7/15まで

 

 アメリカの美術コレクターのファインバーグ夫妻が蒐集した江戸絵画のコレクションを展示する展覧会。

 江戸絵画の個人コレクション展覧会と言えば東北で開催中のプライスコレクション展を思い出すが、あちらに比べるとコレクションの内容が網羅的であり、あらゆる流派の江戸絵画を集めている印象がある。

 おかげで江戸絵画の百花繚乱ぶりを体感するには適した展覧会となっている。いずれのコレクションも水準が高いのは確か。ただプライスコレクションの作品ほど図抜けたものもなくて全体的におとなしめという感覚も同時に受けたのである。特にその印象は、若冲や蕭白などの奇想系と分類されている画家の作品で強く感じた。私から見るとやや品が良すぎるのである。


 それにしても疲れた。もう身体が限界に近い。暑さのせいもあって身体が火照ってきているので館内の喫茶「茶ら良」で抹茶ソフトのセットを頂いてクールダウン。ソフトの冷たさと甘さが身に染み、また熱い煎茶も意外と心地よい。

  

 先日の二万歩越えに続いて今日も既に一万六千歩。もう完全にグロッキー状態。当初予定では場合によってはもう一カ所立ち寄るつもりであったが、この状態ではとても鑑賞に身が入りそうにない。エクスプレス予約の新幹線を一時間繰り上げると、大丸で弁当を買い込んで帰宅することとした。

 

 東京地区の美術展を網羅しつつ、私鉄の視察も実行したのが本遠征であった。小田急、東急、京成、西武といった未視察路線が多い東京西部の路線のかなりの部分を押さえたのが本遠征でもある。ただその分、身体への負担が尋常でない程大きく、自宅に帰り着いた時にはヘトヘトになっていた。私が単なる鉄道マニアなら、東京私鉄乗りつぶしだけでもっと楽なんだが・・・。自分自身でも最近は遠征の主旨が不明になってきているのを感じずにはいられない。

 

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