展覧会遠征 名古屋編4

 

 この週末は名古屋方面に繰り出すことにした。大阪からの移動にはぷらっとこだまを使用する。そのつもりで先週の京都方面の遠征の際にチケットは入手済みである。

 

 金曜日は大阪へ出張、仕事を終えるとそのまま新大阪からこだまで名古屋に移動することにする。新大阪で発車時間までに夕食を摂ると鼻歌を口ずさみながら新幹線ホームへ。ちなみに私が仕事モードの時の鼻歌は「シャインズマン」が多い。レッド・グレイ・セピア・サーモンピンク・モスグリーンの地味な色の方々である。

 

 ここまでは予定通りだったのだが、ホームに到着すると列車の発車時間が遅れるとのアナウンスが。駅員のやりとりが漏れ聞こえてきたところによると、どうやら出発予定の車両が故障のために車両差し替えがあったようだ。結局は車両がホームに到着したのが本来の発車時間。こだまはダイヤでの優先順位が最下層なので、そのまましばしホームで待たされることに。結局は新大阪駅を出たのはダイヤより10分遅れ。車内は混雑がひどいが、見ていたら大半の乗客がぷらっとこだまの乗客の模様。さながら貧民列車である。名古屋には各駅停車で1時間以上かかって到着。

 

 金曜の夜の名古屋は人出も多くて華やかな空気。私もその中でこれから夜遊び・・・という体力も気力も財力もないし、そもそもそういう趣味がない。真っ直ぐにホテルに向かう。宿泊ホテルは私の名古屋での定宿・名古屋クラウンホテル。以前に来た時にはかなり宿泊者が少なかったが、今回は時節柄なのか外国人団体を中心に非常に宿泊客が多い。

 

 部屋に入ると途中で購入したサラダで小腹を満たしてから大浴場へ。ここは温泉大浴場があるのが最大の魅力で、それが私がここを定宿にしている理由。仕事の疲れをゆっくりと癒すのである。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 疲労がたまっているのかその晩は爆睡し、翌朝は7時前に起床する。朝風呂で目を覚ますと、レストランで朝食をガッツリと頂く。この充実した名古屋飯朝食バイキングもポイントは高い。

 名古屋飯バイキング

 さて今日の予定だが、愛知県芸術劇場コンサートホールで開催される名フィルのライブチケットを押さえてある。開演が午後4時からなので、それまでは名古屋市内の美術館を回る予定。美術館は大体10時前後に開館なので、今日はゆったりとした朝を送る。

 

 9時過ぎにチェックアウトすると、地下鉄のどにちエコ切符を購入。これで地下鉄が乗り放題の上に、諸々の施設での優待を受けることができる。まずは身軽になるために一旦名古屋まで移動してコインロッカーにキャリーを放り込む。

 キャリーをロッカーに置くと、再び伏見に取って返し、名古屋市美術館へ向かう。しかし途中でヒビトとムッタのポスターが気になり、美術館よりも先に科学館に入館することにする。

 

 科学館のチケット売場には長蛇の列ができている。何事だと思えばプラネタリウムのチケット待ちのようだ。どうやら特別展とプラネタリウムのセット券もあるようだし、私もついでにプラネタリウムを見ていくことにする。

 


「夢と感動の宇宙展」名古屋市科学館で5/24まで

 展示内容的には昨年に東京で開催された宇宙博を大幅に縮小したようなものであり、副題に「宇宙兄弟」ムッタとヒビトが挑んだ空へとあるように、宇宙展と言いつつも実質は「宇宙兄弟展」である。宇宙博が「宇宙兄弟」と全く無関係の博覧会にもかかわらずそこかしこから「宇宙兄弟」の影がちらついていたのと違い、こちらはもろに宇宙兄弟を前面に出しつつ世界の宇宙開発の最前線を紹介する内容になっている。

左 月面車  中央 ISS実験モジュール  右 はやぶさ

左から アメリカの船内宇宙服、船外作業服、ロシアの船内宇宙服、船外作業服

 展示内容はJAXAの宇宙飛行士募集要項などといったマニアックなものから、ISS実験モジュールの複製、はやぶさの小型模型などといった定番どころまで。また宇宙兄弟にも登場したニーモ訓練の紹介などもある。特に面白かったのがソユーズの帰還用カプセルの展示。これが非常に狭いもので、ユーリ・ガガーリンが飛行士に選ばれたのが、彼のその優秀な能力のみならず、157センチとかなり小柄であったということが大きいということを、ヒビトやムッタとの等身大パネル比較で紹介している。ムッタが宇宙を目指したのがソユーズの時代なら、飛行士にはやっさんが選ばれていたということか。

左 ソユーズの帰還用カプセル  中央 中はかなり狭い  右 等身大ガガーリンとヒビト、ムッタとの比較


 売店には宇宙食の他にこういうものも

 特別展を見学した後は、プラネタリウムの開演時間まで館内の常設展示を見学。体験しながら科学を学習できる秀逸な内容で、こういうのに子供の頃から触れていたら将来有望な研究者が現れそうだ。プラプラと展示を一回りしている内にプラネタリウムの開演時間が来る。

  

 プラネタリウムは結構地味な内容。名古屋の現在の星空を紹介しつつ、ハッブル望遠鏡の紹介を加えた内容。ただナレーターが小さめの声でボソボソ喋る上に、暗い中でリクライニングシートに横たわっていると、気をつけないとウトウとしてしまいそう。実際にどこからかいびきの音も聞こえてくる。

 

 プラネタリウム後もさらに展示を一回り。予想以上に面白かったので、結局はここでプラネタリウムも含めて2時間以上滞在してしまった。まあどっちみち今日はあまり予定がなかったのだからちょうど良い。科学館を後にすると次は向かいの美術館へ。


「若林奮 飛葉と振動」名古屋市美術館で5/24まで

  

 彫刻家、とは言うものの現代彫刻系であり、いわゆる普通の彫刻作品ではなくてスクラップ的なものを並べたり、庭園を含めた空間アート的なものを行っているようである。

 とは言うものの、私の目には極めてありがちの今時のアートもどきというようにしか映らず、あまり面白味を感じられなかった。私の感覚でいえば、先ほどの科学博物館の展示の方がよほどアートであった。


 予想以上につまらなかったので、結局はここでの滞在時間は20分もなかった。

 

 さてもう昼を過ぎている。次の移動の前に昼食にしたい。この近くといえばすぐに浮かぶのは山本屋本店。しかしこの暑い日に味噌煮込みうどんか? と思ったりもしたのだが、他に代案も浮かばず、面倒くさくなったのでそのまま入店。かしわ入り煮込みうどんを頂く。

 しっかりしたうどんが相変わらず。今やすっかりこの味に馴染んでしまった。デザートに黒蜜アイスを頂いてから店を後にする。

 昼食を終えると次は栄に向かう。栄にある巨大ビルが愛知県芸術劇場で、ここの10階に愛知県美術館が、4階にコンサートホールがある。コンサートホールの開場は15時15分なので、その前に美術館の方に立ち寄る。


「『月映(つくはえ)』展 ― 田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎」愛知県美術館で5/31まで

  

 月映とは田中恭吉・藤森静雄・恩地孝四郎の3人が作成した自摺木版画本である。折しも大正時代の創作版画運動の時代の中で、一つの流れを作ったという。しかし田中恭吉は結核に倒れて23才で逝去、「月映」自体も出版としては成功せず、7号でその刊行は最後となる。本展ではその「月映」の全点を展示すると共に、出版に先駆けて作成された私家版(現在1部しか現存していない)を展示している。

 日本で最初に抽象絵画に走ったと言われている恩地孝四郎の作品が「月映」ではもっとも特徴的であり、これが「月映」全体の雰囲気を決めているように思われる。また田中恭吉のまさに自身の死を見つめながら命を削りつつ作成したと感じられる作品が胸を打つ。元々の彼自身の持ち味なのか、それとも死に直面した人間に特有の尖った感覚なのかは分からないのだが、繊細で痛々しく、それでいて希望に向かおうという様が作品から滲んでいる。例えば「冬虫夏草」という作品などは一種のメタモルフォーゼであり、ここには自身の再生の思いも含まれているのではなどと感じてしまうのである。


 美術館をウロウロしているうちに15時をすぎたのでコンサートホールの方に向かう。エレベーターでコンサートホールに到着すると、ちょうど開場時刻。私の席だが、二階席の4列目とのことなのだが、場所的には二階席というよりも、実質的には1階席の一番左端という場所。一階席の席数が少ない奇妙な構造のホールである。パイプオルガンが設置してあることからクラシック専用ホールと思われるが、その割には残響はさしてない。


名古屋フィルハーモニー第423回定期演奏会

 

円光寺雅彦 (指揮/名フィル正指揮者)

リチャード・リン(ヴァイオリン)

市原愛(ソプラノ)

 

コルンゴルト: 組曲『シュトラウシアーナ』

コルンゴルト: ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35

マーラー: 交響曲第4番ト長調

 

 ここのところ何かと見かけるコルンゴルトだが、曲調的には後期ロマン派の曲のような印象。またところどころ映画音楽を思わせるようなチャーミングな音楽である。

 メインはマーラーの4番。重めの曲調が多いマーラーの交響曲の中では珍しく曲調が軽めで、爽やかささえ感じることで有名な曲である。

 リチャード・リンのバイオリンは、殊更にテクニックを誇るタイプでなく、流暢な演奏という印象。軽やかなこの曲にはあった演奏である。なおテクニックに関してはアンコール曲のパガニーニの方で披露していた。

 市原愛のソプラノは美しくはあるのだがいささかパワー不足に感じられた。オケがガツンガツンと鳴らしすぎるところがあるので、どことなくバランスが取れていなかった。

 円光寺の指揮は極めてオーソドックス。イメージとしては淡々としたというもの。オケをうまくまとめるタイプだが、実力以上を引き出そうというタイプには感じられなかった。あまりに正攻法過ぎて印象が地味。

 名フィルの演奏に関しては弦にもう一段の精度、管にもっとデリカシーが欲しいという気がした。例えばマーラーの4番の四楽章などは、ソプラノと管の掛け合いのような部分があるのだが、ここで管ばかりが前に出てしまってソプラノをかき消してしまうようなケースが見受けられた。もう少しコントロールして、音量を上げるのでなく音色を厚くする方向に向かってもらいたいところ。


 コンサートを終えると帰宅。当初予定ではコンサート終了後に名古屋で夕食を摂って帰るつもりだったが、やや遅めの昼食として味噌煮込みうどんをガッツリ食ったせいか、今からどこかに夕食を食べに行くという気分にならない。そこでエクスプレス予約を早めの便に切り替えて、弁当を購入してから帰宅することにしたのである。

  夕食の近江牛弁当

 

戻る