展覧会遠征 伊丹・神戸編

 

 この週末は美術館巡り。灼熱地獄の中を車で出かけたのである。山陽道を疾走し、伊丹に到着すると市営駐車場に車を置く。こういう時は地下駐車場の方がありがたい。


「写楽と豊国〜役者絵と美人画の流れ〜」伊丹市立美術館で8/30まで

   

 江戸時代の浮き世と言えば、庶民に大人気の歌舞伎を取り上げた役者絵が評判を呼ぶ。その中でも注目を浴びたのが独自の大首絵を流行られた写楽、さらに新進気鋭の豊国などである。本展ではこれら写楽や豊国を中心に、同時代の浮世絵を集めて展示。

 浮世絵版画だけでなく、肉筆画もあったのが興味深かったところ。また役者絵に関しては現代の劇画に通じるドラマチックな表現なども多々見られ、この辺りは単なる美人画などよりは非常に興味深かった。

 ただ展示作の状態が必ずしも良いものばかりではなく、中にはかなり脱色してしまっているようなものなども多数あったのがやや残念。


 伊丹の次は神戸まで長駆する。それにしても今日は暑い。凍結おーいお茶を購入していたのに、あっという間に融けてしまっている。

 


「舟越桂 私の中のスフィンクス」兵庫県立美術館で8/30まで

 木彫り像に大理石の玉眼、異様に首の長いフォルムは非現実的でなりながら、それでいて今にも動き出しそうな妙なリアルさを秘めた独特の人物像。極めて特徴的で印象的な彫刻で知られる舟越桂の展覧会。

 極端に縦に引き伸ばしたように見える人物フォルムからも覗えるように、彼は具象彫刻家でありながら、必ずしも写実を目指しているわけでない。それが時代と共に顕著となってきて、ついには人体は単なるモチーフの一部となってしまい、人物の胴体が山になったり、腕が見当違いの場所に付いていたり、さらには首が二つあったりなどと言った異形の像が現れるようになる。

 表題にあるスフィンクスとは雌雄同体の半人半獣ということで、これが彼の創作意欲を刺激する元になったらしい。時代が下ると共に作品がカオスになっていっている。これが彼独自の表現しようもないリアルさから、妙なグロテスクさと美しさが同居する独特の世界になっている。

 好きか嫌いかはともかくとして、とにかくインパクトはかなりある。悪趣味の極みとも言えなくもないのだが、単にその一言だけで切り捨てられない魅力もあるから不思議ではある。


 何とも奇妙な作品群であった。一つ間違うとホラー寸前である。

 

 次は同じ美術館内で開催中の別の展覧会に。それにしてもこの建物、設計が悪いせいで無駄にあちこちと歩かされる。全くこの設計者(安藤忠雄設計である)は実用建設を作られたら使い物にならないものばかり作る。こんな人物にデザイン選定を任せたのも今回の国立競技場騒動の一因になっている。だから彼には建物ではなくてモニュメントだけ作らせておけと言っているのに・・・。

 


「天野喜孝展 想像を超えた世界」兵庫県立美術館で8/30まで

 タツノコプロで「ガッチャマン」「タイムボカン」などのキャラクターを手がけ、後にはFFなどのゲームデザインや小説の挿絵などで好評を博し、その独特のアート表現で人気のある人物の展覧会。

 当然のように最初はガッチャマンから始まり、次がバンパイアハンターDなどの小説の挿絵、そしてFFなどのゲームデザインというように、彼の作品を大まかに時代を追って各ジャンルにまたがって展望できる。その独特な表現や世界観は好き嫌いは分かれるところだが、それでも圧倒されることは否定できない。

 最終コーナーは彼の新作シリーズで、ここは撮影可。何とも見ていると頭がゴチャゴチャしてきそうな強烈な色彩と描き込みが爆発している作品が多く、会場を後にする時には軽い目眩がしてしまった。


 今日の兵庫県立美術館は強烈な展覧会の二本立てだった。灼熱地獄の中を移動した肉体的疲労と、強烈な作品群に当てられた精神的疲労でグッタリと疲れてしまった。精神的に気合いを入れないと頭が持って行かれそうである。ここまでの体験は初めて。

 

 

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