展覧会遠征 大阪・奈良編2

 

 8月と言えば大抵のオケも夏休みでコンサートがほとんどなくなる時期でもある。そんな中、この日曜はフェスティバルホールで大阪フィルのコンサートが開催されるとのことであるので、それに参加することにした。ただコンサートの開演は午後5時。そこでコンサート前に奈良まで出向くことにする。


「白鳳−花ひらく仏教美術−」奈良国立博物館で9/23まで

  

 白鳳時代とは大化の改新(本展では乙巳の変の記述を使用)から平城遷都までに当たる時代を指す。百済滅亡に関連した白村江の戦いで惨敗、大陸の脅威を間近に感じつつ急いで中央集権国家の体裁を整えつつあった時代に当たる。

 この時期の仏像は、中国の影響を受けつつそれを消化しようとしている時期のようである。造形的にシンプルなのと、頭と上半身がバランスからするとかなりデフォルメされているのが印象に残るが、これはダビデ像の頭が大きめなのと同様に、下から見上げる視線を想定しているのではないかというように思われる。

 圧巻だったのは国宝の月光菩薩立像。流れるような体の線が優美で、それでいて堂々とした力強さも感じる逸品である。また鼻筋の通った端整な顔立ちがどことなく日本人離れしていてエキゾチックである。


 今日は朝食も摂らずに奈良に飛んできたので腹がかなり減っている。そこで遅めの朝食兼クールダウンと洒落込みたい。例によっての「天極堂」に立ち寄る。ただこの店、客数の割に店が小さいのが難点で、最低でも30分は待たされる。それにしても遙か昔に食事が済んでいるにも関わらず、行列を目にしても平気で無駄話を続けているオバハンの精神の構造は永遠の謎である。

 30分以上待ってようやく席に着くことが出来る。まずは腹を軽く満たしたい。注文したのは「くずうどんのセット(1600円+税)」

  

 くずのとろみの付いたうどんのつゆが美味い。また夏にはショウガも効いている。これにはごま豆腐が付いているのだが、こちらもクズが入っているのかやけに粘りがある。私は基本的にはごま豆腐は嫌いな人間だが、このごま豆腐はいける。そしてこれにくず餅がついている。これのうまさは言うまでもない。出来立ててほの温かいところが良い。

 朝食の後は「くずあんみつ(750円+税)」を注文する。このメニューは私があんみつというデザートに以前から抱いていた「寒天が不味すぎる」という不満を解消したメニューである。寒天でなくてくず餅になっているので、これがしっとりと美味い。あえて難点を挙げるとしたら、クズ入りのアイスが少々固いことぐらいか。

 朝食を終えたところでさらに美術館にもう一軒立ち寄る。


「百花繚乱 中国リアリズムの煌めき」奈良県立美術館で9/23まで

  

 中国全土から作品を集めた「全国美術展」から選抜した作品を展示。驚異的とも言える細密描写のリアリズム絵画が中心。

 古より中国の伝統工芸の人間離れした精密さには驚かされるが、絵画でもその流れを汲むのか、唖然とするような精密でリアリティ溢れる作品が多い。

 その一方で伝統的な山水画の影響などが垣間見えていたり、なかなかに面白い。やはり西洋とも日本とも異なる独自の感性が滲み出ている。


 それにしても暑い。折角クールダウンしても、少し外を歩いただけですぐに汗が滲んでくる。とりあえずこれで奈良での予定は終了なので、バスでJR奈良まで移動するとそこから大阪に戻ることにする。

 

 大阪では天王寺で下車。何だかんだしている内に午後3時前になっている。さすがにうどんでは腹が持たないので昼食を摂ることにする。立ち寄ったのはMIOの中にある「プチグリルマルヨシ」「ビフカツランチ(1380円税込み)」を頂く。

 関西人にとってカツと言えばビフカツが常識。さすがに大阪にはまともなビフカツを食べさせる店が多い。ソースとカツがマッチしていて美味。

  

 さてこれからどうするかだが、コンサートは開演5時の開場4時なので今からだとまだ早すぎる。そこでハルカス美術館に立ち寄ることにする。


「生誕100周年トーベ・ヤンソン展〜ムーミンと生きる〜」ハルカス美術館で9/27まで

  

 ムーミンの作者として知られるフィンランドの画家、トーベ・ヤンソンの作品を集めた展覧会。

 展示作品はムーミンのみならず、彼女の初期の絵画から他の絵本原画などまで多彩であり、彼女が愛した別荘「夏の家」の再現モデルまで展示している。

 画家としての彼女の作品はシュルレアリスムやらマチスなど諸々の影響がかなり滲んだ作品。色彩の華やかさがかなり特徴的だが、正直なところ絵画としてはそう特別に面白いとは感じない。

 やはり彼女の本領はムーミントロールなどの児童文学の方により現れているように思える。ムーミンに代表される独特の造形、一つ間違えればグロテスクになりかねない一歩手前でファンタジーの域に留まっているバランスが絶妙である。


 これで大体4時前。まだ早すぎるが、かといって立ち寄る当てもない。結局はフェスティバルホールに入ってしまって、中でボンヤリと「夢の扉」を見ている内に開演時間がやってくる。コバケンの人気か、大フィルの人気か、三大交響曲の人気か、それとも夏休みでライブ禁断症状が出た者が多かったのか、理由は不明だがあの馬鹿でかいフェスティバルホールが満員御礼である。

  

 座席はステージ間近の左寄りというあまり良くない場所。どうもこのホールではまともな座席を取れたことがないが、それは私が大フィルの定期会員ではないためだろう。来年はどうしようか?


三大交響曲の夕べ

 

指揮 小林研一郎

大阪フィルハーモニー交響楽団

 

シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D.759「未完成」

ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

ドヴォルザーク/交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界より」

 

 定番過ぎるほど定番の曲を並べた演奏会。曲が定番過ぎるためか、コバケンの指揮もいわゆるコバケン節はやや抑えめで、比較的オーソドックスなものに納まっていたように思われる。やはりコバケン節が完璧に炸裂するのは、手兵だった日フィルとの組み合わせの時だけなのか。

 大フィルの演奏については安定感のある手堅いもの。あまりにも手堅すぎてやや面白味に欠ける感もないではなかったが、まずまずの名演であったと感じた。


 ライブ禁断症状を癒やすには十分な内容のコンサートであった。満足して帰宅の途につくのである。

 

 

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