展覧会遠征 大阪編13

 

 いよいよ年の瀬も押し迫ってきたが、この週末は阪神地区のコンサートの連チャンと相成った。まずはザ・シンフォニーホールでの関フィルのコンサート。今シーズンの締めは年末の定番の第九である。

 

 昼前に家を出ると、大阪に到着したのは昼過ぎ。昼食をどこで摂るか迷ったが、ラーメンの気分でもカレーの気分でもなかったので、最近に出来た「讃」を訪問、「うどんとカツ丼のセット(880円)」を注文する。

  

 うどんは所謂讃岐うどんらしく、腰のある麺。それは良いのだが、この時にかけうどんを頼んだのが失敗だった。讃岐うどんの最大の弱点(と私が考えている)の通り、出汁が非常に貧弱。これは讃岐らしく生醤油うどんなどで食べるのが正解だったのか。カツ丼の方はこの店のはチキンカツ。この店は木酢鶏なるものも売りにしているのだが、このカツでは残念ながら普通の鳥とどう違うかは判然とせず。

 

 昼食を終えるとホールに入場する。チケットは完売とのことで、場内はほぼ満員に近い状態。関フィル人気というよりは、第九人気なのだろうか。


関西フィルハーモニー管弦楽団「第九」特別演奏会

 

指揮]大友直人

[ソプラノ]並河寿美

[アルト]福原寿美枝

[テノール]二塚直紀

[バリトン]小森輝彦

[合唱]田辺第九合唱団

[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

 

ベートーヴェン:「エグモント」序曲 作品84

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱付」

 

 大友らしいオーソドックスな演奏。安定感は抜群にあるのだが、個性には乏しい無難を絵に描いたような演奏でもある。関フィルの演奏も非常に安定していたし(例によって管がやや弱いという感はあるが)、田辺合唱団も相変わらずの熱演であった。というわけで不足のある演奏ではないのだが、特別な面白味もなかったのが本音。


 コンサートを終えるとホテルに、と言いたいところだが、わざわざ大阪まで出てきたのだからついでに映画でも見ておきたい。と言うわけで梅田のナビオへ。映画の時間までに1時間ほどあるので、階下のレストラン街をウロウロ。「とろ麦」牡蠣フライの定食を夕食に摂ることにする。

 牡蠣フライに小鉢が添えてあってヘルシーイメージ。麦ご飯で頂くとろろはなかなかうまく、今日のように疲労が溜まっている時には最適。牡蠣ととろろで二重の栄養補給である。

 

 夕食を終えると映画館に入場。以前からこの映画は見に行くつもりだった作品である。

 


「ローグワン」

 

 スターウォーズシリーズの第一作は帝国の超兵器であるデススターを破壊する話だったが、そのデススターを破壊するために必要な設計図を反乱軍がいかにして入手したかを物語るエピソード。スターウォーズシリーズの外伝的な作品である。

 ヒロインはデススターの建設に無理矢理協力させられた科学者の娘で、彼女と父親との物語がストーリーの縦線になり、作戦のために彼女と行動を共にする仲間達との交流がストーリーの横線になる。その過酷な生い立ちからやや人間不信気味の傾向がある彼女が、次第に仲間達と打ち解けていく辺りの展開がなかなかに見せる。

 またスターウォーズ本編では今ひとつ超兵器としての存在感を示せていなかったきらいのあるデススターが、本作ではまさに恐るべき超兵器としての威力を発揮しまくっており、その辺りが映像的な見せ場の一つにもなっている。これだけの威力の超兵器となれば、確かにどれだけの犠牲を払っても破壊しないといけないと同盟軍が躍起になるのも納得というものである。

 ただ、正義を振りかざしてやや暴走気味の登場人物達と、その正義の執行のための死屍累々の展開は、今時の世の中を考えるとジハードを連想させかねない危険性もなくはない。本作の最後も、結局は大破滅の中の一縷の希望という展開になっている。そういう点では決して爽快とは言い難い作品でもあった。

 映像的には非常に良く出来ているし、ストーリー展開もエンターティーメントとして計算ずくなのは覗え、この辺りはさすがにスターウォーズシリーズを名乗るだけのものではあるとは感じられた。ただやはり中途な位置から始まって中途な位置で終わるストーリーは単編としてはツラい部分はある。そういう点でもあくまでスターウォーズシリーズを補完する作品という位置づけ以上でも以下でもない作品ではある。


 作品としてはまずまずというところか。ただこの内容はアメリカンには受けるかな? どうもスターウォーズのこの前の作品といい、鬱展開になってきているような気がする。ルーカスが第6作まで作ったところで「後の話は面白くないから作る気がない」と言ったとかいわれているのもあり得るような気がする。

 

 映画を終えるとホテルに入ることにする。ホテルは例によっての大阪での定宿ジーアールホテル江坂。ホテルへの行きがけに八天堂のクリームパンをおやつに購入、イオンで夜食を仕入れてからのチェックインである。

 

 この晩は大浴場で体を癒やしてからやや早めに就寝することにする。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時頃に起床、8時頃にレストランで朝食を摂ると、朝風呂を浴びたりなどマッタリしながら、チェックアウト時刻の11時ギリギリまでウダウダとする。今日の予定は西宮でのコンサート以外にはほとんどないので、急ぐ理由がない。

 

 ホテルをチェックアウトするとコンサートの開演時刻までの間に美術館に一カ所立ち寄ることにする。


「世界遺産 ポンペイの壁画展」兵庫県立美術館で12/25まで

 ヴェスヴィオ火山の噴火によって一夜にして火山灰に埋もれたローマの都市ポンペイ。多くの犠牲者を出した未曾有の惨事であったわけだが、この町が火山灰に埋もれたことによって、ローマの都市のありのままの姿を後世に伝えるタイムカプセルの役割を果たすことになった。本展はこのポンペイで発掘された建造物を飾っていた壁画を通して、当時のローマ人の生活に迫る。

 驚くべきは色鮮やかな壁画がかなりの部分そのまま残っているということ。鉱物系の顔料を使用して壁画が描かれていたことから、火山灰の熱を受けても壁画が消えることがなかったようである。そこに描かれているのは神話の世界を題材にしたものが多いが、中には部屋を広く見せるためのトリックアートのようなものや、単なる幾何学模様など意外に多彩である。

 ローマ人は人生を楽しむことを知っていたと言われているが、確かにこれらの壁画にもその精神は現れているようである。多神教による多様な神々の世界は、後の一神教支配下の息が詰まるような中世社会とは異なった、自由さを感じさせるものである。

 壁画を通して、ローマ時代の人々の息吹のようなものを感じられるような気がした。なかなかに興味深い展覧会であった。


 美術館を出てきた時には昼時を大分過ぎている。ホールに行く前に昼食を摂っておきたい。石屋川駅の近くの「とんかつ富義」とんかつA定食を頂く。老夫婦が経営している店なので万事がゆったりしたところがあるが、とんかつ自体はなかなかうまい。町のとんかつ屋としては上々だろう。ただこの店、果たして何年後まで営業しているだろうか。私もこの年齢になると、行きつけの店が店主の引退で廃業などという例にいくつも直面している。そんなところに寂しさを感じる今日この頃である。

  

 昼食を終えたところで阪神と阪急を乗り継いで西宮に移動する。このコンサートは12月には珍しく第九ではない。


第93回定期演奏会 アルミンク&クンウー・パイク 華麗なる第3番

 

指揮 クリスティアン・アルミンク

ピアノ クンウー・パイク

管弦楽 兵庫芸術文化センター管弦楽団

 

ハイドン:交響曲 第70番 ニ長調

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調

ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調

 

 万事がオーソドックスに終始した印象の演奏である。アルミンクの演奏はメリハリをつけようとしているように感じられたのだが、そうなるとPACの粗さのようなものが表面に出てきてしまって、今ひとつ雑な印象の演奏になってしまった。ブラームスなどはもう少し緻密さとネットリした感触が欲しいところ。


 どことなくPACの弱点が現れたかなという印象を受けた演奏であった。オーソドックスすぎるドイツナンバーというプログラムも、PAC向きではないのかもしれない。

 

 これでこの週末の予定は終了、帰宅と相成ったのである。

 

 

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