展覧会遠征 名古屋編8

 

 どうもここのところ体調が悪い。心身共に疲労が溜まっている状態である。体の活力が著しく低下しているのを感じる。こんな時は栄養補給と休養と気分転換が必要。栄養と言えば・・・うなぎ。と思いついた途端に私の頭の中は鰻で一杯になってしまった。鰻と言えば名古屋、ちょうど名古屋でこの週末にイベントもあることだし・・・というわけで突然に思いついたのが今回の遠征。

 

 愛国者の私は政府の方針に従って個人的プレミアムフライデー。大阪まで移動すると、そこからはぷらっとこだまで名古屋まで。何しろ今回の遠征は唐突に決めているので予算が乏しい。旅費の節約は必須課題である。

 

 ぷらっとこだまは席が固定されている上に、そこに大勢の客を押し込めるのでとにかく狭っ苦しい。狭い座席に押し込まれつつ名古屋へ移動する。

 

 7時頃に名古屋に到着。昨日の夜は関西では豪雨だったし、名古屋も今朝はかなりの雨と聞いていたので天候が心配だったが、名古屋は雨もなく晴天。やはり私の日頃の行いの良さがこういうところで報われるか。

 この駅名を見ると歌わずにいられないのが関西人

 ではまずは名古屋に来た最初の目的を達成しておくことにする。名古屋駅から地下鉄を乗り継ぐと浄心へ。ジョ、ジョ、ジョ、ジョーシンと例によってのテーマソングを口ずさみながら向かうは「しら河」。店内は既に待ち客がいる状態なので30分ほど待たされる。

 注文したのはいつものように「上ひつまぶし」。これに肝吸いをつける。さらに今日はガッツリと鰻を食べたい気持ちなので、「うなぎの白焼き(ハーフサイズ)」を加える。

 

 まずは白焼きから出てくる。蒲焼きと違ってあっさりした風味がまた良い。うなぎの香ばしさを堪能できる。醤油とわさびで頂くうなぎが美味。

  

 次がひつまぶし。例によってストレート、薬味付き、出汁茶の3種で頂くが、それぞれ風味が異なり最高。最後はさらに出汁茶で締め。満足の夕食である。ただ支払いはしめて4670円也。財政的にはかなりキツい。

 夕食を終えるとホテルに向かう。今日宿泊するのは名古屋クラウンホテル。ここの売りは天然温泉と名古屋飯の朝食。とりあえず今は温泉でくつろぎたいという気持ちが強いのと、たまたま安価なプランを見つけたことが選択の理由。

 

 伏見駅から歩くが、久しぶりに来るとこのホテルは意外と駅から遠い。ホテルに着いた時には暑さもあって汗だくなので、まずは大浴場で汗を流すことにする。このホテルが都会の真ん中で掘り当てた天然温泉である。単純泉とのことだが、成分はナトリウム−炭酸水素塩が多いようだ。また鉄分も多いのが特徴で、それが白っぽい湯の濁りにつながっている。加熱・循環・塩素消毒ありだが、それでも湯はなかなか良好。鉄分が加わっていても真っ赤っかでないということは、湯の鮮度はそう悪くはないと思われる。

 

 風呂から上がってマッタリすると早めに就寝することにする。とにかく最近は疲れている。

  

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時半に目覚ましで目覚める。よく寝たはずだが体が重い。最近は毎朝この調子だ。

 

 テレビをつけてみるがろくなニュースがない。稲田大臣の失言なんて問題外。そもそもこの人物、失言のデパートと言われるぐらい失言が多いのだが、実際は失言ではなくて本人の思想信条から発している言葉だからたちが悪い。そもそも政治家としての資質など全くない人物なのに、安倍のネトウヨ仲間というだけで重用されたのだからこうなるのも当たり前。とにかく安倍の周辺を見ていると、馬鹿にはやはりろくなお友達が出来ないということがよく分かる。

 

 これも一年前ぐらいなら、「政府に都合の悪い情報は放送してはいけない」と言っていた腰巾着会長がNHKのニュースなどは差し止めたんだろうが、その腰巾着もクビになったので、今はNHKでも加計学園や稲田の失言など普通にニュースで流している。多分安倍は今頃、「なんでこんなニュースを流すんだ!会長を呼び出せ!放送免許を取り上げろ!」と官邸で喚いているだろう。

 

 例の出会い系記事で高らかに自民党広報誌宣言をした読売新聞でさえ、これだけ大騒ぎになってしまうと記事にしないわけにいかないので右往左往しているのが紙面から伺える。なるべく大した事件ではないかのように印象操作したいという苦労が記事の文面から滲んでいて、なかなかに趣深い記事になっている。

 

 一息ついたところで朝風呂に。湯の温かみが体にしみ入る感覚。やはり今回はこのホテルを選択して正解だった。

 

 入浴後には朝食。このホテル自慢の名古屋飯バイキングである。これがまたボリュームのあるバイキング。朝からガッツリと頂いておく。

 名古屋クラウンホテル名物の名古屋飯バイキング

 10時頃にホテルをチェックアウトすると、まずは栄に移動。今日は栄の愛知県芸術劇場のコンサートホールで開催される名古屋フィルのコンサートを聴きに行く予定。ただし開演は16時からなのでそれまでに諸々の計画がある。

 

 とりあえず栄のコインロッカーにキャリーを放り込むと、名鉄栄町駅まで移動する。今日はまずは瀬戸市を訪問する予定。そもそも今回名古屋遠征を計画した理由の一つが、朝日新聞で見た記事。ついこの前、テレビ東京の「なんでも鑑定団」で曜変天目茶碗が発見されたとのニュースがあったが、その鑑定に真っ向から異を唱えたのが父の代から曜変天目を研究してきたという長江惣吉氏。その長江氏の研究の成果という曜変天目を瀬戸市美術館で展示するということである。

 

 なおこの曜変天目、後に奈良の大学で鑑定したら染料等の成分が出なかったので、長江氏が言っていたタイプの贋作ではないなどという発表があったが、この分析結果というのがよく見れば見るほど疑問がある内容。それに長江氏らによって指摘されている問題点はこれだけではない。どうもこれは持ち主の知り合いという分析者が、偽物という結果にされるとまずいと慌ててデータをとった気がする。どうも大人の事情がありありだ。

 

 またテレ東の対応もまずい。何がまずいと行っても「国宝級の曜変天目発見」とニュースリリースしてしまったことがまずい。バラエティ番組内だけなら「この番組の独自の鑑定結果」という言い分で押し通せたのかもしれないが、ニュースリリースしてしまったとなると報道としての信憑性が問われる。父の代から曜変天目を研究しているという長江氏が「こんなお粗末なものが曜変天目と認識されては一大事」とBPOに訴えたのも分かる。まあこれに対してのBPOの「鑑定の能力はありませんから」という理由で拒絶という腰の退けた対応が非常に情けなかった。事の本質は茶碗の真贋ではなく、テレ東がニュースとして流した内容が誤報であった可能性が高いにも関わらず、それの検証を全くしないというところにあるのに、BPOの拒絶理由は全く的外れである。

 

 テレ東としては番組の信頼性とか鑑定士の名誉とかで引っ込みが付かなくなってしまっているのだろう。しかし鑑定士にしても専門外の分野なら間違うこともあるし(そもそもこの鑑定士は書画の方が専門で、茶道具は専門ではないということを別件で聞いたことがある)、テレビ局が誤報を認めないのはまずいだろう。何やら「この茶碗を偽物にしてはいけない」という大人の事情が垣間見えるようで胡散臭い。周りが忖度しまくっている印象だ。もしかして持ち主が安倍の知り合いか何かか?(笑)

 

 名鉄で終点の尾張瀬戸までは30分程度。沿線は名古屋の郊外住宅地というところ。名鉄瀬戸線は他の路線から孤立した路線だが、無駄なカーブがあちこちにある線形の悪さが気になるところ。最高速度は80キロだがそれを出せる箇所がほとんどないようである。

 

 尾張瀬戸駅で降りると、そこから瀬戸市美術館まで10分程度歩く。美術館は丘の上にあるのが嫌なところ。バスは1日に数本という様子なので使い物にならない。ちなみに名鉄バスのカラーは、関西人としては京阪バスと間違いそうになる。

 関西人的にはこのカラーリングは京阪バス

 美術館は丘の上でホールと並んで建っている。


瀬戸市美術館

  

 曜変天目について研究している長江惣吉氏の作品を展示。長江氏によると、曜変天目の色彩は酸性ガスによる表面反応によって発生した表面の微細構造で起こるらしい。つまりは着色されたものではなくて構造色であるということか。

 彼の作品は確かに曜変天目独特の色彩を帯びており、光の当たり方によって色彩が変わるという特徴がある。確かに美しい器であり、この色彩に魅了されるものが少なくないのも頷ける。


 長江氏によると復元については現状は9割というところとのこと。ただ曜変天目の技法の一番の肝の部分は分かってきたようだ。これのために中国の建窯から土を取り寄せているとのこと。そこまでやっている研究者でもあるだけに、あんな適当な器を曜変天目なんて言われると黙っていられなかったんだろう。私だって、ベルリンシンフォニカーの演奏をベルリンフィルの演奏だと言って流されたらBPO(ベルリンフィル)に訴える(笑)。

 

 美術館を見学して駅の辺りまで戻ってくると、駅前にある瀬戸蔵を覗く。ここは瀬戸物の販売をしていたり、2階には博物館があって瀬戸物に関する展示や、なぜかかつての尾張瀬戸駅を復元したものが展示されている。陶器博物館と歴史博物館をごちゃ混ぜにしたような奇妙な施設である。

瀬戸蔵の中にはなぜか尾張瀬戸駅が復元されている

 その後は寂れきった銀座通り商店街(各地で非常に多い名前だ)をプラプラと抜け、深川神社を参拝。ここの本殿は市の有形文化財に指定されているとのこと。

銀座通り商店街に深川神社

 なおここの参道筋にある「田代」なるうなぎ屋が有名とのことだが、私が通りがかった時には昼前にしてもう行列が出来ていた。どうも既に昼の部は一杯の模様。どうせ私はうなぎは昨日たらふく食っているしパス。

 

 この日の昼食は商店街の東端にある「みそかつレスト サカエ」で摂る。一応洋食店ということになるようだが、メニューは揚げ物中心で名前の通りみそカツがメインのようだ。私は「みそカツ定食(1350円)」を注文。

  

 正直に言うと私はみそカツという料理は苦手だ。とんかつに味噌を組み合わせるとえぐすぎるのである。しかしここのは味噌の甘味がとんかつの脂と混ざり合ってまろやかな味わいになってなかなか上々。みそカツも意外といけるもんだと驚いた次第。

 

 名古屋飯の昼食を終えると駅に戻ってくる。ところで瀬戸市は今、将棋の藤井四段の件で非常に盛り上がっているとか。そう言えば商店街にも飲食店にも藤井四段に纏わる垂れ幕の類いが見られた。さて藤井四段の快進撃はどこまで続くやら。ここまで来ると果たして誰が連勝を止めるのかの方が話題になってくる。

  

町中は藤井四段フィーバー

 瀬戸での用事は終わったので名古屋に戻ることにする。途中の公園らしきところにインチ臭い天守が見えるが、これは旭城なる由来の明らかではないインチキ天守らしい。どうも愛知はこの手が多い。

 旭城のインチキ天守

 栄まで戻ってくると地下鉄で金山の名古屋ボストン美術館へ。この美術館は以前から閉館の噂が何度もあったが、とうとう今度こそ本当に閉館が決まってしまったらしい。何度も訪問したことがある美術館だけに残念。来館者数が伸びなかったとのことだが、利用者の一人として言わせてもらえば、ボストン美術館の姉妹館と名乗っている割には、今ひとつ主旨の不明なパッとしない企画が多すぎたように感じられる。またそれにも関わらず展示替えが少なく、年間で企画展がせいぜい3回まで(2回の時が多かった)というのは、来館者数が伸びないのも当たり前では。これでは展覧会が好きな者でも、年間訪問回数は3回までになる。

 


「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」名古屋ボストン美術館で10/15まで

 

 時代の最先端の風俗を反映していたパリジェンヌに纏わる、絵画、ドレスなどの類いを展示。

 当時のパリの風俗を知るには良いのだろうが、絵画などの面では特に見るべき作品もなし。ドレスの類いも決して展示数は多くはなく、どことなく中途半端な印象を受ける。


 結局は今回も本音としては「今ひとつ主旨の不明なパッとしない展覧会」だっというところ。ここの企画で良かったのは、ルノワールのダンスが来た時ぐらいかな。

 

 次は松坂屋に立ち寄ることに。


「近現代日本絵画展」松坂屋美術館で7/9まで

 近現代の日本の絵画を展示。日本画から洋画まで様々、主立った画家の作品を一人一点の割で展示してある。

 日本の絵画史の上で名前を挙げるべき画家の作品はほぼ網羅されている。また各人の特徴を反映した作品が多いので、教科書的に各画家の作風を知るには良い。もっとも私としては殊更に珍しい作品はなかったのであるが。


 初心者向きかなという印象の展覧会で、そういう点ではデパートが開催しているのは正解なんだろう。

 

 展覧会の後は喫茶にでも立ち寄りたかったのだが、もう時間に余裕がないし待ち客が2組もいるようなので諦めてホールに移動することにする。ホールに到着したのはちょうど開場時刻ぐらいだが、開演までの間にここの10階の愛知県美術館に立ち寄り、常設展の方だけを鑑賞(特別展の方は東京で鑑賞済み)。つい最近、この美術館にバルテュスの「白馬の上の女性曲馬師」寄贈されたとのことなので、それを見るのが目的。

 

 クセのある人物表現はいかにもバルテュス。作品タイトルからもっと躍動感のある絵かと思っていたが、描かれているのはステージ上の曲馬師ではなく、舞台裏という雰囲気で妙な静けさが漂う絵画。この不気味なまでの静けさというのもいかにもバルテュス。

 

 目的の絵画を見終わったところでさっさとエスカレーターで4階に降りる。今日のコンサートはこのホールで行われる名古屋フィルの定期演奏会。直前になってドタバタとチケットを手配したため良い席は残っておらず、一階の前の方の端の方という決してコンディションが良いとは言い難い席である。

 


名フィル第447回定期演奏会

 

小泉和裕(指揮/名フィル音楽監督)

シュテファン・ドール(ホルン)*

 

モーツァルト: 交響曲第40番ト短調 K.550

R.シュトラウス: ホルン協奏曲第1番変ホ長調 作品11*

R.シュトラウス: 交響詩『ドン・ファン』作品20

R.シュトラウス: 交響詩『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』作品28

 

 シュテファン・ドールのホルン演奏は音色も多彩で技術的にも安定感がある。かなり巧みな演奏であるが、オケもこの演奏にうまく合わせていた。

 小泉の指揮の下、名フィルの演奏はなかなかに元気が良いという印象。アンサンブルに所々雑なところがないではなかったが、トータルで見ると明るくて元気な音色が非常に楽しめる演奏つながっていたと思われる。


 このホールに来るのは2回目ぐらいだが、かなり反響が強いホールであることに驚いた。ザ・シンフォニーホールやサントリーホールよりも反響が強く、これ以上反響が強くなるといわゆる風呂屋になってしまう。これはかなり好みの分かれるところに思われる。

 

 ところでここのホールは今月末から改装のために閉鎖されるようだが、改装するならまず第一はトイレだろう。さすがに今時ほとんどが和式トイレであるのは閉口した。一つだけの洋式トイレもウォシュレットもついていないし。これは今時前近代的である。

 

 コンサートを終えると名古屋での予定は終了。後は帰るだけだが、その前に夕食を摂っておきたい。ひつまぶし、みそカツと名古屋飯コースをたどったのなら、やはり最後は味噌煮込みうどんに行くべきだろう。名古屋駅に戻ると高島屋にある「山本屋総本家」を訪問する。既に行列が出来ていたが、時間に余裕があるので待つことにする。待ち時間は30分程度。

 「親子煮込みうどんの一半」にご飯をつけて注文。相変わらず太くて硬い麺が名古屋的。関西人ならこのうどんの硬さには怒るべきなんだろうが、もう慣れた。最初の時には濃すぎると思った赤味噌の味も今ではかなり馴染んだ。私も大分名古屋に染まってきたのか。こうやって名古屋飯フルコースを体験すると、もう一週間ぐらいは赤味噌を見たくなくなるのだが、1ヶ月ぐらい経つと不思議とこれが懐かしくなってくる。

  

 久しぶりに濃厚な味噌煮込みうどんを堪能すると、新幹線で家路についたのである。

 

   

これは名古屋土産、かなり甘いけどうまかった

 

 

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