展覧会遠征 映画編

 

 この週末は映画を見るために繰り出した。二本立て上映・・・ではないが、二本連続鑑賞である。


「さよならの朝に約束の花をかざろう」

 

 悪い映画ではない。作画はそれなりに綺麗し、ストーリーに山場も泣かせどころもある。ただ終わってみると何も残らない。いろいろと細かいところに残念感が漂う作品である。

 大長編をダイジェストにしたようなバタバタした展開は、ストーリーに観客がついて行くことを阻害するし、また重要キャラクターになると思われたキャラが結局はストーリーに全く絡まないなど「?」な展開が非常に多い。しかし一番の問題はキャラクターの感情が分からないということ。キャラクターの描写に深みがないだけでなく、行動の一貫性も見られない。例えばあれだけ娘にこだわっていたレイリアが、最後になるとその娘をあっさりと捨ててしまったり、母たる存在だったマキアを女性として意識し始めたことで混乱したエリアルという本作品の中心キャラでさえ、いつの間にやらあっさりと他の女性と結びついていたりなど、説明不足を通り越して「なぜそうなる?」と言いたくなる展開が多すぎる。

 作品中でキャラが生きていないから、結果としてこの作品が何を伝えたかった作品なのかが全く不明になってしまっている。そういう辺りが全体に漂う「残念感」の原因である。


 シナリオ面で特に不満が多々残る作品であった。例によっての妄想企画で「もし私がこの作品の脚本を担当していたら、こういう展開にする」。

 

 敵軍上陸の乱戦の最中、レイリアを救出しようと城内に潜入するマキアとクリム。マキアはクリムと一旦別れ、脱出の手段の確保に移動する。城外でその姿を見かけたエリアルはマキアの後を追いかける。さらにそのエリアルを見つけて後から追いかけていくディタ。(ちなみにディタは私のシナリオではエリアルとはまだ恋人関係未満。エリアルがマキアについての感情を整理できていないことと、ディタ自身がそのことに気づいていてやや身を退いていることが原因)。

 

 レイリアを廊下で見つけるクリム。「レイリア、一緒に行こう!」と声をかける。しかしレイリアは「駄目、だって私はもう・・・。」と半歩あとずさり。クリム「過去はもうどうでもいい。僕たちイルクの民は長命だ。これからの長い時間をみんなと一緒に暮らそう。新しい毎日を織っていこう。イルクの村で生き残ったみんなが待ってる。」。レイリア「だけど、あなたはそれで良いの?」クリム「僕はもう過去は見ない。これから未来を紡いでいこう。僕は君の笑顔をもう一度見たいだけだ。」レイリア「しかし私には娘が。」クリム「彼女も連れて行けば良い。みんな歓迎してくれるはずだ。」レイリアの目からこぼれる涙。一瞬ためらった後、わずかに頷いてクリムについて行く。そこに現れるイゾル。クリムはレイリアをかばって剣を抜く。二人の様子とその表情を見て何が起こっているかすべてを一瞬で察するイゾル。剣を退くと一言「さあ、こちらへ。」

 

 マキアに追いつくエリアル。「あなたはどこに行くつもりなんだ。」マキア「私はあなたの前から去ります。ごめんね。勝手にお母さんぶって。私はエリアルのおかげで頑張れたけど、結局はエリアルの気持ちを分かってなかったね。」エリアル「そんなことはない!俺はあなたを守りたくて・・・まだ力が足りないかもしれないけど、これからあなたを全力で一生守る。」マキア「ありがとう・・・だけどあなたはやはり私から離れるべきなのよ。あなたはこれからあなたの人生を歩いて行く必要がある。」エリアル「どうしてあなたはいつも・・・。」マキア「だって私はあなたのお母さんだから・・・。」「お母さん・・・」うつむいて小さな声でつぶやくエリアル。顔を上げると「分かったよ。母さん。」マキア「幸せになってね。」エリアル「ありがとう。母さん。」

 

 メドメルの元にやって来るレイリア達。メドメル「あなたは・・・もしかして私のお母様?」抱き合う二人。レイリア「メドメル。ごめんなさい。今までお母さんらしいことが何も出来なくて。」メドメル「いえ、お母様が今までどれだけ苦しい思いをしてきたかは私も分かっています。」レイリアを目で促すクリム。レイリア「さあ、あなたも一緒にイルクの里へ行きましょう。」メドメル、一瞬困惑した表情を浮かべてから、何かを決心したような表情で「いえ、私はここに残ります。」レイリア「どうして?」メドメル「私はイルクの能力を全く引いていないと聞きました。お母様と一緒にイルクの里に行っても皆と一緒にはなれないと思います。それに、私はこの国の王女としてこれからの責任があります。」レイリア「だけどそんなあなたがすべてを・・・」メドメル「いいえ。私を産んでくれてありがとう。お母様。私はあなたの娘であることを誇りに思います。お母様はこれから幸せになってください。」メドメルの決意の強さを感じて頷くレイリア。メドメル「イゾル、二人をお願いします!」メドメルに一礼すると二人に続いて部屋を出て行くイゾル。三人を見送った後、家臣に叫ぶメドメル「付いてきて!私にはやることがあります。」

 

 廊下を走るレイリアとクリムにイゾル。その前に現れる敵兵。イゾルが剣を抜いて応戦する。「ここは私が。二人は早く先に。」レイリア「イゾル!」イゾル「王妃様、申し訳ありませんでした。せめてこれからはお幸せに。」

 

 ドラゴンの元にやってきたマキア。マキア「古の古き種族よ。もしあなたの心の中にまだ大空があるのなら、私たちを助けて。」その声に応えてかすかに静かなうなり声を上げるドラゴン。

 

 城外に出てきたメドメル。小声で呟く「お母様、私に勇気を。」そして大声で叫ぶ「私はこの国の王女です。ただちに戦いを止めなさい。メザーテは降伏します。しかしこの国の民に危害を加えることは絶対に許しません。」敵味方双方の兵士が一瞬凍り付くが、凜とした威厳に打たれて双方の兵士が膝をついて頭を下げる。メドメル「さあ、私をあなたたちの司令官のところに連れて行きなさい。」

 

 城外に出たレイリアとクリムの元にドラゴンに乗ったマキアが現れる。「マキア!」「レイリア!」ドラゴンに乗って飛び立つ三人。

 

 三人を乗せたドラゴンが飛んでいく。それを目にしたイゾル。小さな笑みを浮かべると剣を投げ出して両手を上に上げて目を閉じる。そのイゾルに斬りかかろうとする敵兵。しかしその時に「戦闘中止、ただちに戦いを止めろ!」という声が遠くから聞こえてきて敵兵の動きが止まる。目を開けてふっと自嘲気味に笑うイゾル。

 

 飛んでいくドラゴンを見送っているエリアル。物陰から現れるディタ。「本当にそれで良かったの?」エリアル「ああ、男の子がいつまでも『お母さん』だとおかしいだろ・・・。」ディタの肩を抱きしめるエリアル。

 

 この後は後日談的なシーンがいくつか。国民の先頭に立って復興に努めるメドメル、エリアルの子を抱くディタの姿、イルクの里でのレイリアとクリムなどが描かれる。そして最後は映画の本編と同じくエリアルの最後に立ち会うマキアで終わり。

 

 まあベタなパターンではありますが、私ならこういう展開を持ってきましたね。ほとんど出番のなかったメドメルがやけに立派な「王女様」になっている気がしますが、やはり「子供は成長して親元から巣立っていきながらも想いを引き継いでいく」というテーマ的なものを出したい気がしました。それとやはりイゾルはこのぐらいの見せ場を作るべきキャラ。また狂気に駆られて無意味に自滅しただけのようなクリムのキャラは今ひとつ納得がいかなかったし。

 

 久々に妄想大作を書いてしまった。結局は何だかんだ言っても、私は生涯に一つもまともに創作できなかったのであるが・・・。この辺りに空しさを感じてしまう。

 

 で、この日に鑑賞した次の作品はこれ。


劇場版Infini-T Force/ガッチャマン さらば友よ

 

 本作では完全にガッチャマンこと健が主人公になっていて、前作でのヒロインだった笑の存在感はかなり薄くなっている。で、健が同じく時空を飛ばされたコンドルのジョーと共に、狂気に駆られたかのように見える南部博士と戦うというオールドファンにとってはなかなか衝撃的なストーリーが本作。

 とは言うものの、前半部分には前作のダイジェストが含まれているせいで本編はさして長くもなく、内容的にもCGを駆使した動きが中心でストーリー的にはあまり深みはない。また南部博士のキャラに今ひとつ説得力がなく、目的もその行動原理も異常というだけで極めてちぐはぐであったのが致命的ではあった。どちらかと言えば、時空を超えて暗躍するベルクカッツェ辺りが敵の方がむしろ作品的にはまとまりも良かったのではという気もする。


 なおオールドファンとして引っかかるのは、おっさん呼ばわりされるぐらいの年になっていても健とジュンの関係に何の進展もなかったようであること。そもそも科学忍者隊が全滅した時の健の反応も「それは違うだろ」という違和感があった。

 

 そう言えば健だけでなく、ヒーロー全員に一応彼女的なポジションの女性がいたはずなのだが、ヒーローに女はいらないとばかり、全員なかったことになっているのもこのシリーズ最大の違和感。なんか全員が寄ってたかって女子高生に熱を上げているように見えてくる。

 

 

 

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