展覧会遠征 京都編16

 

 この週末は京都方面に遠征。しかし記録的と言われる猛暑の中、夏の厳しさでは有名な京都。今から大変なのが予想される。

 

 出発は土曜の午前。京都駅には11時過ぎに到着するが、駅に降り立つや否や体にしみこんでくる熱気。その上に異常な混雑。満員のサウナの中をトボトボと歩いているという心境。正直なところ駅に降り立って5分で早くもヘロヘロである。

 

 こんな中ではとにかく屋外に長時間いるのは避けたい。とりあえず店が混雑する前に昼食を摂ることにする。立ち寄ったのは「東洋亭」「東洋亭ハンバーグのランチ」にプリンとアイスコーヒーを加えて注文。例によって店内の混雑がひどいので、厨房は大車輪で回っているにも関わらず料理が出てくるまでに30分以上待たされる状態。

   

 ようやく出てきた料理は相変わらずトマトが美味いし、ハンバーグも美味い。そしてプリンが美味い。こういう美味い飯だとこの暑さでもしっかり食える。満足して昼食を終える。

 それにしても暑い。黙って立っているだけで目眩がしてくる。こんな中をうろつくのはまさに命取りになりかねない。今日の予定は3時からびわ湖ホールでオペラだが、まだ時間が早い。と言ってもどこかに行く気など全く起きないことから、さっさと今日の宿泊ホテルであるチェックイン四条烏丸に向かうことにする。

 

 このホテルは週末は12時からチェックイン可能。これは実にありがたいところ。とりあえず部屋に入って、シャワーで汗を流してから冷房全開で体を冷やす。これでようやく人心地である。

 

 結局は1時間半ほど部屋で休んでから出かけることにする。地下鉄と京阪を乗り継いでびわ湖ホールへ。

 


びわ湖ホール・新国立歌劇場提携オペラ公演 プッチーニ「トスカ」

 

トスカ キャサリン・ネーグルスタッド

カヴァラドッシ ホルヘ・デ・レオン

スカルピア クラウディオ・スグーラ

アンジェロッティ 久保田真澄

スポレッタ 今尾 滋

シャルローネ 大塚博章

堂守 志村文彦

看守 秋本 健

羊飼い 前川依子

合唱:新国立劇場合唱団 / びわ湖ホール声楽アンサンブル

児童合唱:大津児童合唱団

指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 

 一見して感じるのはセットの豪華さ。新国立歌劇場から運んできたのだろうか。なかなかに大がかりなセットを組んでいて、それを場面によって組み替えてくるので見応えがある。びわ湖ホールの機能を最大限に生かしてのセット組みは初めて見たように思う(今までの公演は他のホールでも使用することを考えて、1ステージだけのものを使い回していたのばかり)。

 歌唱陣は中心となる3人に実力者を揃えて堂々たるものを聞かせてくる。テナーのデ・レオンは第3幕で圧巻の歌唱を聞かせてくれた。またソプラノのネーグルスタッドは若干の線の細さを感じないでもなかったが、それでも十二分の実力。そしてスカルピノを演じた巨躯のバリトン、スグーラが堂々たる卑劣漢ぶりで舞台を盛り上げた。三人三様の人間ドラマを見事に描き出している。

 また東京フィルの演奏も劇的効果が抜群で舞台を盛り上げていた。ヴィオッティの指揮はこの作品のツボを心得ている見事なもの。久々に密度の高いステージを堪能できた。


 なかなか大盛況であり、カーテンコールもかなりの盛り上がりであった。ただ気になったのは、上演中にストロボを炊いて何度も撮影をするという信じがたいことをした観客がいたこと。最近は異常にマナーの悪い客が出てきていることが知られているが、こんな観客は永久出禁にしてもらいたいところ。ホール側も異常な観客は遠慮せずに追い出して、ホールの環境を守ることに配慮してもらいたい。

 

 なおホールにスポンサーの叶匠寿庵の売店が出ていたので、お土産の菓子と夜食の水ようかんを購入する。

   

 帰りも京阪で。途中で浜大津駅で乗り換え待ちをしていたら、ホームに到着したのは団体貸し切りのビアホール列車。京阪はこんなのもやってるのか。私は酒は飲まないが、これは面白そうではある。夕方になっても異常な暑さだし、飲めない私でも何か冷たいものをぐっと一気にいきたくなる。「冷やし飴列車」でも運行してもらえないだろうか(笑)。

 

 さて夕食だが、気分としてはラーメンを食べたい。そこで四条の「一風堂」に行こうと思ったのだが、現地に到着すると20人以上の待ち客がいる。確かにここのラーメン屋はうまいが、そこまでして行かないといけないような店でもない。馬鹿らしくなったので他の店を探す。20mほど先の「ラーメン魁力屋」が空いていたのでここに入店。いろいろなラーメンがあるようだが「コク旨ラーメン」の味玉入りの大盛りにチャーハンをつける。

 背脂の浮いたコクのあるスープに腰のある細麺。スープと麺のバランスが良く、私の好みのタイプのラーメン。またパラパラのチャーハンも平凡ではあるが私好み。十二分に満足できるラーメンである。やはり口コミサイトとかばかりに踊らされる輩には、少しは自分で開拓しろと言いたくなる。

 

 夕食を終えるとホテルに戻る。ジットリと汗をかいたのでまずは大浴場で入浴。手足を伸ばしてしばしくつろぐ。これがこのホテルの良いところ。

 

 風呂から上がれば小腹が減ってくる。どうやら夜食のお茶漬けサービスなるものがあるらしいのでレストランに行くが、どことなく対応が面倒くさそう。まさかお茶漬けサービスというのは、京都で言うところのぶぶ漬けの意味だったのか?(つまり、とっとと帰れという意味) とりあえず出てきた永谷園をさっさとかき込んで部屋に戻る。

   

 部屋に戻るとテレビでニュースを見ていたが、相変わらずろくなニュースがない(災害対策よりも利権目当てのカジノの方を優先するような政権ではろくな話はないのも当然)ので、持参したブルーレイで「美の巨人たち」を見ながらこの夜は過ごす。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時半に起床。かなり爆睡していた模様。目が覚めたところでレストランで朝食バイキング。ここのバイキングは野菜主体なので体には良さそうだが、あまりにあっさりしすぎな感はある。

   

 この日もかなりの暑さ。外をうろついても体調を崩すだけなのでチェックアウト時刻の11時まで室内で過ごしてからチェックアウトする。今日の予定は2時半から京都コンサートホールで京都市響の定期演奏会。それまでに京都国立近代美術館に立ち寄ることにする。

 

 地下鉄を東山で降りるが、もうそこは目眩のする灼熱地獄。美術館に歩いて行くだけで死にそうだ。とりあえずせめて燃料を入れておかないとヤバそうなので、美術館に行く前に昼食を先にすることにする。「枡富」に入店して「鴨せいろそばの大盛(1600円)」を注文する。

  

 そばもつゆも文句なし。なかなかに美味いそばである。この暑さでもこういうそばなら食欲が湧く。価格は高めだがこれは京都の常。

 

 食事を終えると美術館へ。今日が最終日ということがあってか、館内はかなりの混雑。

 


「横山大観展」 京都国立近代美術館で7/22まで

 後期になって前期と作品替えが行われているが、8割方の作品は入れ替わっており、別の展覧会といった趣。もっとも展示の流れ自体は変わっておらず、大観の同時期の別の作品に入れ替えている形。

 今回つくづく感じたのは、とにかく画風の変遷も激しければ、結構様々なタイプの絵画を手がけるなということ。最初期のかなり細かい画風から、朦朧体に変化し、その間には明らかに洋画に近い描き方をしたりなど。また己の画風を確立してからでも、勢いでサクッと描いたような絵もあったりととにかく幅広い。

 なかなかに興味深く見ることが出来た。横山大観の作品がこれだけ一堂に集まる機会もそうそうないだろうことを考えると、なかなかに貴重な体験でもあった。


 美術館を終えるとホールに行く前に宇治金時ドーピングで体を冷やしておくことにしたい。とにかく灼熱地獄で体が過熱しておかしくなりそうである。おつむがプスプスとオーバーヒート寸前。氷冷でもしないと熱暴走しそうだ。神宮通に「瑞庵」なる喫茶店を見つけたので立ち寄り、「宇治白玉金時(900円)」を注文。

  

 かき氷には最近流行のふんわり系と、昔ながらのザクザク系があるが、ここのかき氷は後者。またお茶が結構濃いのはさすがに京都。平凡であるが過不足ないかき氷。氷の冷たさで生き返る気持ちである。やっぱり夏はこれに限る。

 

 ようやく復活したところで地下鉄で北山に移動する。ホールに着いた当初は結構空席が多かったのでさすがにこの灼熱地獄では客の入りに影響しているかと思ったが、下野のプレトーク中ぐらいから客がバラバラとやって来て、最終的には9割方の座席が埋まっていつもの通りの入りとなった。

 


京都市交響楽団 第625回定期演奏会

 

[指揮]下野 竜也(常任首席客演指揮者)

[Pf]野田 清隆

 

シューマン(野本洋介編曲):「天使の主題による変奏曲」からテーマ

尾高惇忠:ピアノ協奏曲

ブルックナー:交響曲第1番ハ短調 WAB 101(リンツ稿・ハース版)

 

 一曲目はシューマンのピアノ曲をオーケストラ用に編曲した作品。美しい曲ではあるが、演奏がややゴチャゴチャした印象を受ける。

 尾高のピアノ協奏曲はいかにも現代音楽らしくキラキラした音色が目立つ曲。しかし残念ながら私には面白いとは感じられない曲であった。

 ブルックナーの1番は後の彼の作品に通じるブルックナー節とも言うべき特徴が現れつつも、全体的に若さが漲った印象がある曲。下野がプレトークで「若気の至りで詰め込みすぎている」という類いのことを言っていたが、確かに特に両端楽章がいかにも詰め込みすぎでゴチャゴチャと落ち着きのない感がある。そのような弱点も抱えた曲なのであるが、下野はそれを適切に整理しつつ興味深く聴かせる演奏をしてきていた。京都市響の演奏にも冴えがあり、この曲に関してはなかなかの演奏であった。


 珍曲マニア・下野らしいプログラムではあったが、どうなんだろうか。評価は難しいところである。実際に尾高のピアノ協奏曲などは私も正直なところ眠くなったし、場内を見渡すとかなりの観客が完全に落ちていた。

 

 ブルックナーの一番ではいかにも彼らしい旋律と感じたのは第三楽章。この楽章を聴いた途端に私の頭の中では勝手に四角と三角が戦闘を始めてしまい、銀河の歴史がまた一ページになってしまった。

 

 それにしても疲れた異常な暑さが体の芯に染みてしまった印象。這々の体で帰宅したのであるが、帰ってからも妙な体のほてりとだるさは続いてしまったのである。

 

 

 

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