展覧会遠征 京奈編2

 

 8月は夏休みのオケが多く、コンサートはほとんどない。しかし月末が近づいてきてようやくコンサートが再開となった。まず最初に出向くのはNHK交響楽団の演奏会。いわゆる夏のどさ回りシリーズで、今年は近畿のようだ。滋賀・奈良・西ノ宮と回るようだが、日程の関係で土曜の奈良公演に参加することにする。

 

 土曜の午前中に家を出るとJRで一気に奈良まで移動する。奈良に到着したのは昼頃。奈良は久しぶりだが、相変わらず夏の奈良は暑い。とりあえず今日宿泊予定のスーパーホテルLohasJR奈良駅にキャリーを預けると、まず昼食を摂ることにしたい。とは言うものの奈良駅前はあまり良い店は知らない。と言うわけで毎度工夫のないことながら、奈良駅の「天極堂」に立ち寄って「冷やし葛うどん」を頂く。

   

 ツルリとしたのどごしがたまらない。腰があって実に美味。明らかにボリューム不足ではあるが、軽く頂くには最適のメニュー。もっとも本当は2杯ぐらい食いたい・・・。

 

 昼食を終えるとついでにデザートとして「冷やしぜんざい」を頂く。小豆が良い味だが、さりげに入っているくず餅がやはり美味い。くず餅は冷えてもカチカチにならずに適度な弾力があるのが良い。それにしても奈良に来るといつも天極堂に立ち寄っている気がする・・・。

 昼食が終わったのでバスで博物館方面に移動する。今日のコンサートは3時から奈良県立文化会館で開催なので、それまでに博物館や美術館を回っておくつもり。

 


「糸のみほとけ−国宝 綴織當麻曼荼羅と?仏−」奈良国立博物館で8/26まで

    

 日本人は昔から仏画や仏像など、ありとあらゆる形で仏の姿をこの世に残そうとしていたが、その一環が刺繍によって描かれた仏画。本展ではそのような刺繍作品を多数展示。

 最初は奈良時代ぐらいから作られ初めていたようだが、さすがに最古の作品となるともうボロボロで何が何やら分からない。一応形をとどめだすのは平安時代ぐらい。今では色褪せてくすんだ姿になってしまっているが、往時にはさぞや煌びやかで美しい姿だったのだろうと思わせる。実際に一部復元した作品の展示なども行っていたが、絵画よりもさらに煌びやかであるのは確かである。

 中には経文を刺繍しているものもあり、見た目は筆で書いているのと区別がつかない。ここまで来るとあえて刺繍をしている意味がやや不明だが、一針一針念を込めて作成するのに意味があるのだろうか。

 いつもとはやや観点の違う展覧会であり、なかなかに面白かった。


 博物館の展示を見終えたところで2時前。もうホールに向かっても良いんだが、その前にホールの隣の美術館にも立ち寄る。

 


「美の新風 −奈良と洋画−」奈良県立美術館で9/17まで

    

 奈良ゆかりの洋画家の作品から、奈良を舞台にした作品まで、奈良にちなんだ洋画を展示している。

 中で私が一番興味を感じたのはやはり明治期の洋画作品。必死で模索をしながら真面目に作品に取り組んでいるのが滲み出ていて好印象。これが大正期になるといわゆるモダーンの潮流が現れてくるのだが、こうなると玉石混淆。そして昭和以降になるともうどうでも良いというのが本音だったりする。


 既に2時半ぐらいになったのでホールに入場する。今日のコンサートはチケット完売とのことで会場は大入り満員。N響の人気なのか、夏休みでコンサート禁断症状に駆られた者が多かったのかは定かではない。なお私は今回はホール1階中央付近の良席を確保している。最初はぴあでネット購入しようとしたのだが、座席選択がないせいでホール最前列などというクラシック的には糞席(ロックや演劇なら特等席だろうが)ばかりが指定されるので、ネット購入を諦めてぴあの窓口まで出向いて購入した次第。あの頃はチケットの動きがかなり悪かったのだが、その後に大河ドラマの前後にCMなどを見るようになったので、一気にチケットが動き出したのだろうか。

   


NHK交響楽団演奏会 奈良公演

 

指揮:下野竜也

ピアノ:リーズ・ドゥ・ラ・サール

 

ニコライ/歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18

ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」

 

 一曲目からメリハリの強い演奏。軽快で楽しいこの曲を勢いとノリで演奏したという印象。しかしソロパートなども安定感があり、N響の技術の高さが光っている。

 ラ・サールのピアノは相変わらずガツンガツンとかなり強いタッチの演奏。以前にやや雑という印象を受けた彼女の演奏の本質はあまり変わっていないようだ。ただ本公演に関しては、ともすれば勝手に走りそうになるソリストをバックの下野とN響がかなりのパワーで支えたので曲が破綻することなくドラマチックな好演となった。

 運命は下野がN響をかなり煽ってのパワフルな演奏。とかく地方公演では流したぬるい演奏をしがちと言われるN響の手綱を下野がうまく締めていたように感じられた。アンサンブルも鉄壁で乱れがなく、16編成のパワーでバリバリ通しまくる豪快な運命であった。下野とN響はかなり相性も良さそうである。


 なかなかの好演。久しぶりに上手いN響を聴かせてもらったというところ。長身のラ・サールと背の低い下野が並んだ図は少々滑稽ではあったが、指揮台に乗った下野はその小さい体を最大限に動かして大きな指揮を行っていた。彼は以前から指揮台に立つと体が一回り大きく見えるのであるが、今回は特に大きく見えた。

 

 それにしても会場の奈良県文化会館は極めて音響の悪いホールで反響はほぼゼロと言っても良い状態だが、さすがに日本有数の悪音響ホールであるNHKホールで演奏し慣れているN響は、そんな悪条件をものともせずにガンガン鳴らしてきた。そう言えば16編成という通常よりもやや大きい編成もそういう意味があるのではなどと思ってしまう。

 

 公演終了後はホテルまで三条通をプラプラしながら夕食を摂る店を探す。かなりの賑わいだが特に外国人が多いのが目に付く。それに西日のまぶしさと蒸し暑さがツラい。

 

 夕食は途中で見かけた「うなぎの川はら」に入店することにする。「鰻丼の竹(2130円)」を注文。

  

 パリッと焼き上がったうなぎは関西風。味はまずまず。鹿児島産うなぎを使用しているのは結構だが、明らかにボリューム不足であるのはご時世柄価格を考えると仕方ないか。ここでもまともにうなぎを食べようと思うと最低でも3000円は必要なようである。今はうなぎの完全養殖実用化を祈るのみ。

 

 夕食を終えると「御菓子司菊屋」で夜のおやつを購入してからホテルに戻る。それにしても暑かった。部屋に入るとさっさと着替えて大浴場に入浴に行くことにする。ここのホテルは天然温泉大浴場があるのが最大の魅力。ホテル内大浴場の飛鳥の湯はナトリウム・カルシウム塩化物泉。加温・循環なのでやや塩素の臭いがするのは仕方ないか。奈良の中心で温泉があるだけ良しとするべきだろう。久しぶりに結構歩いたせいか腰の調子がやや怪しいので、腰を中心に体をほぐしておく。

  

 部屋に戻るとテレビなどを見ながらしばしマッタリ過ごすが、9時を回った頃に腹具合が寂しくなってくる。今日は昼食が圧倒的にボリューム不足だった上に、夕食が時間が早くて軽めだったのでこれは仕方ないか。着替えるとラーメンでも食べようかと駅前に繰り出す。しかし最初に考えていたラーメン屋は目の前で閉店になってしまったので、駅前で見かけた「麺屋龍」に入店する。この店は事前に食券を購入する形式。「濃厚ラーメン(750円)」を注文する。

 店内は異様に狭い。カウンター席の後ろを通り抜けるのがギリギリで、閉所恐怖症の者なら息が詰まるかもしれないほど。しばらく待った後に出てきたのは、クリーミーでこってりしたスープのラーメン。コクはあるが決してしつこくはない。細麺が良く合っている。味としてはなかなか美味い。ただボリュームは少なめ。

 

 とりあえず夜食には最適のラーメンであった。腹が適度に膨れたところでホテルに戻ると、この日はまもなく就寝する。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時半に目が覚める。とりあえず朝食に行くが、朝食会場は大混雑している。ホテルの宿泊人員に対してレストランスペースが狭すぎるようだ。またスーパーホテルは概して朝食メニューに難があるが、ロハスを名乗っているここのホテルは通常のスーパーホテルよりはやや良いとは言えるが、パンとサラダ中心のメニューには食べるべきものがあまりない。

 

 朝食を終えると朝風呂に。やっぱりここのホテルの最大のメリットは立地と共にこの大浴場である。これで朝食がもっと良くて、宿泊料がもう少し安くなればもっと私の利用頻度も上がりそうだが・・・。

 

 チェックアウト時刻の10時ギリギリまで部屋で休んでからホテルを出る。今日の予定は京都での京都市響のコンサートだけ。今は京都の美術館は出し物が全くないので、何の予定もない。観光客を満載したみやこ路快速で京都についたのは11時半頃だが、とにかく行く当てもないのでまずは昼食を摂ることにする。

 

 昼食はこれまた工夫が全くないが「東洋亭」に行くことにする。今回注文したのはビフカツのランチ

  

 相変わらず妙に美味いトマトと、ミディアムの具合が非常にうまいビフカツに、私好みのプリンをつけて贅沢目の昼食を堪能するのである。やっぱりここの洋食は美味いわ。

 昼食を終えた時には12時過ぎ。コンサートの開演は14時半なのでまだ時間があるが、かと言ってネカフェに入るほどの時間もない。また腹が十分に膨れているので喫茶等に入る気もしない。行く当てもないまま京都駅前の地下街をウロウロした挙げ句、結局は地下街のベンチに座ってしばしボーッと時間をつぶすことに。非生産的で無駄な時間つぶしだが、無駄に金を使うよりは良いか。

 

 しばし時間をつぶした後、地下鉄でホールに移動する。今回の公演はチケットが完売とのことで会場内は大入り満員である。


京都市交響楽団 第626回定期演奏会

 

[指揮]高関 健(常任首席客演指揮者)

[S]木下 美穂子

[T]小原 啓楼

[Br]大西 宇宙

[合唱]京響コーラス、京都市少年合唱団

 

ブリテン:戦争レクイエム op.66

 

 この曲は第二次大戦で破壊されたコヴェントリーの聖マイケル教会の大聖堂が1962年に再建された際に献堂式で演奏するために、ブリテンが作曲したものである。ブリテンの集大成とも言える曲で、戦争を二度と繰り返さないというブリテンの強い思いが籠もったものであるという。

 20世紀音楽という点では現代音楽なんだが、いわゆる無調性の前衛的なピコピコしたおかしな音楽ではなくて、もう少し古典的な雰囲気のある曲。大小2つのオケと合唱団と少年合唱団がそれぞれ入れ替わりで音楽を奏でながらソリスト3人が絡んでいくという複雑な構成の曲なのであるが、最初はバラバラだった各パートが最後には調和していく辺りが非常に感動的。

 演奏はメリハリの効いたものであり、特に印象に残ったのは少年合唱団の美しい歌声。まさに天使の合唱のようであった。また一筋縄ではいかないこの大曲を見事にまとめた高関の手腕が光った。


 なかなかの熱演。場内の盛り上がりもかなりのものであった。再び戦争をしようと考えてる馬鹿共が権力を握っているこのご時世にこの曲を演奏することには大きな意味がありそうだが、その辺りは高関のプレトークでは適当に誤魔化していた。

 

 これでこの週末の予定は終了。それにしても暑さでへばってしまった。やはり夏に奈良や京都なんて内陸都市には行くもんじゃない。いつになったら少しは涼しくなるんだろうか・・・。

 

 

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