展覧会遠征 東京・関西編2

 

 いよいよ2018年も押し迫ってきたが、今週は東京まで飛ぶことにした。目的はフェドセーエフ・N響によるチャイコフスキーのくるみ割り人形を聴きに行くこと。くるみ割り人形組曲ならわざわざ東京まで行かないところだが、今回はくるみ割り人形の全曲をコンサート形式で演奏するということなので結構珍しい企画。フェドセーエフへと曲に対する二重の興味でわざわざ東京まで出向くことにした次第。

 

 コンサートは木曜日なので、今回は木曜に午後休、金曜に全休を取っている。クリスマスなんか私には関係ないし、早めの年末休ということにしておこう。木曜の仕事を午前で終えると神戸空港を目指す。行きはスカイマークで東京に飛ぶことにしているが、これは例によって旅費の節約のため。やはり新幹線は高すぎる。

 

 昼食は例によって空港内の神戸屋レストラン「洋風ハンバーグ定食」。いつものようにあまりCPが良くないのだが、今回は前回にもらった10%割引券が使えるのが救い。

   

 今回のスカイマーク便は鹿児島県との提携企画とかで、機内で鹿児島の豆菓子が配られた。しかし鹿児島の会社なのに大阪屋製菓って・・・。鹿児島県は西郷どんを契機に一気に観光促進と目論んでいるようだが、そのドラマ自身がかなりスベってるから。私は2話目であまりに荒唐無稽なのとつまらないのとで見るのを止めた。その後、何回かチャンネルを合わせてみたことはあるが、登場人物が鹿児島弁で怒鳴り合っているのが頭が痛くて止めた。ちなみに彼らが「長州が」というのが、アクセントのせいでことごとく「チャーシューが」に聞こえてしまって、中華料理屋のドラマに見えた。

 

 機内ではすることがないのでウツラウツラしていると、ドカンという強い衝撃で起こされる。一瞬パニックになったが、どうやら羽田に到着したらしい。いや、とうとうスカイマーク便が墜落したかと思ってしまった(笑)。「宇宙兄弟」で宇宙飛行士は遺書を書くというシーンがあったが、私もスカイマーク便に乗る度に、本音では「もしかしたらこれで人生終わりかも」という考えが頭を過ぎっているので(笑)。

 

 羽田に降り立つとすぐに定宿のホテルNEO東京に直行する。どうもこの辺りは通い慣れたるいつものルートという気もしてくる。チェックインを済ませて部屋に荷物を入れるとすぐに外出、サントリーホールを目指す。

 

 六本木一丁目で降りると、ホールに入る前に杵屋できつねうどんを間食に摂る。この店、段々とうどん屋というよりもうどんもある居酒屋という雰囲気になってきたのだが、それと共にうどんの味も落ちてきたように感じる。やはりサントリーホール近くで別の店を見つけないと。

   

 今日のチケットは完売の模様だが、ホール内には空席がいくつかある。来ていない定期会員もいるのだろう。ただ全体として見るとほぼ満員と言って良いんだろう。N響のサントリー定期は混雑がひどいと聞いているが、確かにそのようだ。


NHK交響楽団第1902回定期公演

 

指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ

NHK東京児童合唱団

NHK交響楽団

 

チャイコフスキー:バレエ音楽『くるみ割り人形』?Op.71

 

 N響の演奏だなというのが強烈に前に出てきた印象。くるみ割り人形にしては茶目っ気や躍動感のようなものがやや不足であるのが、特に序盤に顕著に現れている。フェドセーエフは明らかに「もっと躍動感を持って」の類いの指示を飛ばしているのだが、笛吹けど踊らずの印象で、やや遅めのテンポ設定もあってかなり重めの演奏となってしまった。どうしても公務員オケには茶目っ気のある演奏というのは無理なのかと感じさせられる。

 しかし中盤以降はN響の持ち味であるアンサンブルの正確さや音色の美しさなどが前面に出て、まとまりのある聴き応えのある演奏になってきた。特に児童合唱も加わってのクライマックスはなかなかに感動的な盛り上がりとなった。

 後半もその調子で展開し、艶のある弦楽器などを中心になかなかに聴かせる演奏となり、トータルとしては満足度の高い内容となった。フェドセーエフ健在というところか。

 なお初めて聴いた全曲版くるみ割人形だが、思いの外ドラマチックで面白い曲だと感じた。白鳥の湖などとも共通するようなフレーズがいくつか聞こえたが、やはりコンサート形式で聴くと映画音楽のような印象になる。非常にドラマチックなコンサートであった。


 フェドセーエフもかなりの高齢なので心配であったが、足取りはやや怪しげなところはあるが、まだしっかりと立ち上がっての指揮を行っており、その健在ぶりに安心した。これは是非ともまたTSOなどの手兵を率いての来日を願いたいところ。やはりその方がフェドセーエフ自身の色ももっとしっかり出るだろうと思われる。

 

 コンサートを終えるとホテルに戻るが、その前に夕食は摂っておきたい。となれば上野に立ち寄りか。気分的にはそんなに重いものを食べる気もしないので、寿司屋「廻転寿司三浦三崎港」に立ち寄る。

 まぐろが売りの寿司屋らしくマグロのメニューは多いが、その逆にその他のメニューはいささか貧弱。マグロ以外にタイやカンパチなども含めて数皿頂く。悪くはないが特別に安いというわけでもない。マグロをガッツリ食べたい者なら良いが、私のようにマグロを食べ過ぎると胃がもたれるという者には向かないか。

 

 夕食を終えるとホテルに戻ると23時頃。急いで入浴すると明日に備えて就寝。明日は急いで京都に戻ることになる。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は8時前に起床すると、昨日買い込んでいた朝食を腹に入れ、9時頃にはチェックアウトする。今日は13時の新幹線で京都に移動することになっているから、それまでに残った予定を消化しておく必要がある。なお今回は移動費の節約のために新幹線をEX早得21で押さえているので新幹線の時間は厳守である。

 

 まずは身軽になるために東京駅に立ち寄ってキャリーをコインロッカーに放り込む。いつも東京駅のロッカーに空きがなくて四苦八苦することが多いが、今日はさすがに平日なのでロッカーにも空きがある。

 

 身軽になったところで渋谷に移動する。今回の美術館方面でのメインはここ。


「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティックロシア」BUNKAMURAで1/27まで

  

 ロシアの実業家トレチャコフが蒐集したコレクションに端を発したロシア美術の殿堂がトレチャコフ美術館。その中から19世紀末から20世紀初頭にかけての印象派の手法を用いていた画家たちの作品を展示。

 展示作は印象派的な作品ではあるが、ロシアという土地柄かやや保守的な印象があって、手法的にはヨーロッパほど尖った作品は少ない。その一方で絵画としてはしっかりと描きこんだ好ましいものが多い。

 やはり一番インパクトがあるのがクラムスコイの作品。本展の表題作にもなっている「忘れえぬ女」は背景はいかにも印象派的なサクッとした表現なのにも関わらず、人物はかなり詳細でリアルな描写を行っている作品。おかげで人物が浮き立っているような効果を上げている。また同じくクラムスコイの「月明かりの夜」も幻想的で美しい絵画。

 これ以外ではシーシキンの一連の風景画が記憶に残るところ。ロシアの風土を叙情たっぷりに緻密に描きあげた絵画は非常に美しい。


 美術館を後にした時には11時頃。新幹線に乗る前にもう1カ所美術館に立ち寄る。と言っても東京駅最寄りの美術館なので時間には不安はない。


「吉村芳生 超絶技巧を超えて」東京ステーションギャラリーで1/20まで

  

 延々と17メートルに渡る金網、リアルに書き写した新聞紙面など鉛筆画による独特の世界を展開した吉村芳生の展覧会。

 一番一般受けしやすいのは色鮮やかな花を描いた作品だが、どうもその手の作品は彼にしては食い扶持稼ぎのつもりもあったのかもしれない。もっとも強烈に彼自身の己が表現されているのは新聞紙に自身の肖像を描いたシリーズ。自分と社会との関わりをそこに表現していたのだろう。

 執拗で異様に細かい表現には、何がそこまで彼を駆り立てたのかと疑問も感じたりするのだが、独特のインパクトのある作品ではある。


 美術館を出た時には12時過ぎなのでそろそろ新幹線が気になる頃。昼食を摂る必要があるが、朝食を遅めの時刻に結構ガッツリと食べたせいかあまり空腹感はない。これはどこかに店に入るよりも、駅弁でも買って車内で済ませることにする。

 

 結局はキャリーを回収すると、駅内で深川飯を買い込んでこれが今日の昼食。後は京都への移動である。今、京都への車内でこの原稿を入力中。

   

 ふと正面の電光掲示板を見れば、東名の煽り運転で二人殺した殺人鬼に対して、地裁が危険運転致死を認めて懲役18年の判決が出たとのこと。当たり前である。しかし正直なところ、これで殺人罪が適用されないのは法律の不備と言っても良いし、検察の求刑の懲役23年よりも減ったことは不満。本当の妥当な判断は殺人罪で死刑である。

 

 京都に到着すると今日の宿泊ホテルであるチェックイン四条烏丸に移動する。チェックインして部屋に入るとシャワーを浴びるなどしばしくつろぐ。相変わらず笑えるほど狭い部屋だが、この部屋にも大分慣れた。

 

 さて今日の夕食をどうするかだが考えるのも面倒くさい。いっそのことコンサートの後にするかとも思ったが、それだとやはり時間が遅すぎるだろう。結局はホテル内の飲食店プレミア百に立ち寄ってエビフライと卵焼きにご飯セット。これで900円だからCPは結構良いだろう。残念なのは卵焼きの味が薄すぎる。もう少し出汁を効かせて欲しいところ。

   

 夕食を済ませるとホールに移動する。北山のコンサートホールはクリスマス装飾になっている。私的にはもうクリスマスはオワコンなんだが。

   


パリ管弦楽団

 

[指揮]ダニエル・ハーディング(パリ管弦楽団音楽監督)

[ヴァイオリン] イザベル・ファウスト

 

ベルリオーズ:オペラ「トロイアの人々」から 「王の狩りと嵐」

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61

ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68「田園」

 

 札幌で転倒して足を骨折したハーディングがいきなり車椅子で登場。今年はこれでデュメイ、メータに続いて座っての指揮を見るのは3人目。一体どうなってるんだか。

 しかし演奏の方はハーディング自身が「関係ない」と言い切ったというだけあって負傷のことは一切感じさせない。ハーディング自身、興が乗ってくると片足で立ち上がって指揮をしている場面もあった。

 最初は16編成でかなり煌びやかな曲。さすがにパリ管は上手い。管は抜群の安定性の上に音色に艶がある。そして弦はドッシリと分厚い。その魅力をいきなり遺憾なく発揮する。

 ベートーベンになると一転して12編成で安定したアンサンブルを聴かせるようになる。協奏曲についてはヴァイオリンのイザベル・ファウストの演奏なのだが、技術的には高いのだろうが、どうも音色がか細いのが気になるところ。バックのオケがフルで演奏すると小編成にしていても音がかき消される傾向がある。

 田園についてはやや速めのテンポで非常に生命力に満ちた演奏。煌びやかな音色が極上のサウンドを展開しており、実にキラキラとして躍動感のある活気溢れる演奏。正直なところ私はこの曲は退屈で今ひとつと思っていたのだが、その先入観を破壊する見事な演奏である。この曲はかくも多様で美しい響きに満ちていたのかと再認識した。演奏終了後もあまりの気持ちよさに思わずしばし陶酔してしまったぐらい。


 さすがにパリ管、極上のサウンドであった。ただフル編成での曲が最初の一曲だけというのはいささか寂しさもある。今回の来日でのプログラムは「田園」と「巨人」の二枚看板になっているが、それぞれ違うパリ管をお楽しみくださいという趣向か。

 

 ホテルに気持ちよく帰ってくると、大浴場でゆったりと入浴する。その後はブルーレイでサイエンスZEROを見て過ごす。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は8時前に目が覚める。朝食はホテル内のプレミア百でおばんさいバイキング。ガッツリとエネルギー補給。

 

 そのままチェックアウト時刻の11時まで部屋でグダグダと時間をつぶす。外は寒いし、特に立ち寄るべき場所もないし、ウロウロするだけの体力もないしといったダラケっぷり。

 

 ホテルをチェックアウトすると昼食に立ち寄ったのは近くの「一風堂」。ここで赤丸ラーメンに餃子をつける。赤丸ラーメンは香辛料の類いが加えられているようなのでかなり濃い味かと思っていたが、ベースのとんこつラーメンからそう変化したようにも感じなかった。私の舌が死んでるのか?

 昼食を終えると西宮の兵庫芸文に阪急で移動。電車内でKindleで「宇宙兄弟」を読んでいるうちに西宮北口に到着する。ところでこの作品、そろそろラストが見えてきたような気がする。普通に考えると、ムッタを助けるためにロシアからヒビトがやって来て、二人で月面に並んでという綺麗なラストになるのが見えるのだが。わざわざどんでん返しをする必要もないし(下手に奇をてらうと最後に大駄作になってしまう)、現在予定調和に向けて着々と進行中という印象。

 

 西宮は大入り満員。どうやら補助席まで全席出してそれでもほとんど売り切れているようだ。大変な人気だが、これはパーヴォの人気かハーンの人気か?


パーヴォ・ヤルヴィ指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団

 

ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

 

モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番≪トルコ風≫

シューベルト:交響曲第8(9)番≪ザ・グレイト≫

 

 ドイツカンマーは8−7−5−5−3という小編成のオケであるが、小編成とは思えないような大音量の演奏をする元気なオケ。音量的には日本の12編成のオケにも負けていない印象。

 初っ端からその元気さ満開の演奏である。小編成オケはアンサンブルの精緻さを売りにするところが多いのだが、ドイツカンマーはそういう細かいところよりもとにかくパワーが正面に出る。

 モーツァルトの協奏曲はハーンのヴァイオリンの流麗さが光る。ハーンの演奏については「教科書的」という評を聞いたことがあるのだが、今回の演奏を聴いたところではどうしてどうしてなかなかに情感もある。特に良かったのがアンコールのバッハのパルティータ。最近出産したとのことであるから、それが情緒面に影響を与えているのかもしれない。

 グレイトに関してはかなり前進力の強い演奏。早めのテンポでグイグイと前に出る元気な演奏である。パーヴォもN響を振っている時よりも明らかに楽しそうでタコ踊り絶好調というところ。もっともあまりに快速かつ明るすぎていささか重みと緊張感に欠けるので、これがザ・グレイトの正しい演奏かと言えば評価の分かれるところ。聴きやすい演奏であるのは間違いないが、正直なところあまりグレイトらしくないなという感が強い。


 これで今回の遠征は終了。そろそろ年末である。来年に備えないと。

 

 

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