展覧会遠征 京阪編15

 

 この週末は関西地区のコンサートの連チャンと相成った。まずは金曜日の仕事を終えると大阪に移動。荷物を置くためにホテルに立ち寄っていたら夕食を摂る時間がなくなったので、コンビニでおにぎりを買って腹に入れてからホールへ。

 


関西フィルハーモニー管弦楽団 第298回定期演奏会

 

[指揮]ヤニフ・セガル

[トランペット]ガボール・タルケヴィ

[管弦楽]関西フィルハーモニー管弦楽団

 

ストラヴィンスキー:葬送の歌 作品5

ハイドン:トランペット協奏曲 変ホ長調 Hob.VIIe-1

アルチュニアン:トランペット協奏曲 変イ長調

ストラヴィンスキー:「火の鳥」組曲(1919年版)

 

 本公演はタルケヴィのトランペットに尽きる。その音色は表情豊かで、繊細な弱音から耳をつんざくような最強音まで非常にレンジが広い。そして演奏自体は至って軽やかで全くつかえることがない流麗なもの。その美しい音色に身を委ねていると知らない間に音楽が終わってしまったというところ。またさらに良かったのがアンコール曲。これはまさに「しびれた」という一言に尽きる。

 セガルの指揮については表情過多気味のところがある。特にピアニッシモに非常なこだわりが見えた。しかし若気の至りというか表現意欲に走りすぎて全体の流れを見通していないのではというようなところがあり、局所の表情をつけることで音楽の流れが悪くなる場面もいくつかあった。


 今日はチケット完売だと聞いていたが、確かにホール内はほぼ満席であった。ほとんどの者がお目当てはトランペットだろうか。

 

 コンサートを終えるとホテルに戻る。今日の宿泊ホテルはホテル中央オアシス。新今宮界隈では高級ホテルになる。ただまだ夕食を摂っていないので、ホテルに戻る前に「麺処虎ノ王」に立ち寄って「特製つけ麺(1080円)」を食べる。最近流行の魚介出汁系の太麺ラーメン。なかなかにうまいが、付け合わせの焼き豚が結構美味い。

   

 夕食を終えると明日の朝食をコンビニで買い求めてからホテルに戻る。部屋に入ると部屋風呂で入浴。今回はこれのためにこのホテルに宿泊したようなもの。

 

 風呂に入ってサッパリすると、もう夜も更けているし寝ることにする。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時に目が覚めると朝食を摂ってから朝風呂。熱めの湯で目を覚ます。この日はチェックアウトは9時前。今日は大フィルのコンサートだが、その前にMETのライブビューイングに行くことにしている。


METライブビューイング ヴェルディ「椿姫」

 

 ヴェルディの人気作を新演出で。この演出では最初にヴィオレッタの臨終シーンから始まり、すべては彼女の回想というようなニュアンスで展開する。いわゆる舞台替えがなくてずっと同じステージで話が展開するのも特徴だが、舞踏会会場の真ん中に鎮座するベッドはいささかの違和感があって邪魔に思えた。

 ディアナ・タムラウは名歌手であり名優でもあると言われているが、さすがにその表現力は見事なもの。ヒロインの苦悩が観客にビンビンと伝わってきて胸を打つ。またその彼女に絡む男性二人。ファン・ディエゴはいかにも一途でありながらやや暴走気味の若者を、クイン・ケルシーは子供達のことを思いながら結果として彼女を過酷な境遇に追いやったことを悩む父親を好演した。


 やはり人気タイトルなのか場内は8割以上の入りで、私の周辺はほぼ満席状態だった。今まででこういうことは初めて。まあ確かにそれだけの内容はあったが。

 

 上映を終えるとすぐにフェスティバルホールまで移動。昼食はフェスティバルゲートの「キッチンジロー」ホタテのクリームコロッケとエビフライのランチを頂く。例によって可もなく不可もなくというところ。

   

 遅めの昼食を終えてホールに移動。フェスティバルホールは8割程度の入りといったところ。


大阪フィルハーモニー交響楽団 第525回定期演奏会

 

指揮/コンスタンティン・トリンクス

ピアノ/小菅 優

 

曲目/モーツァルト:交響曲 第36番 ハ長調 K.425 「リンツ」

   R.シュトラウス:ブルレスケ ニ短調

   R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲 作品59

 

 トリンクスの指揮はどことなく優雅な感じのもの。リンツに関してはいかにも軽快で上品な演奏でまとめた。いかにもモーツァルトの時代のサロンの音楽というイメージ。

 それに対して小菅のピアノはかなり豪快にガツンガツンとくる。ブルレスケはピアノが全編フル回転というなかなか過酷な曲だが、それをパワーで押しきった印象。ところでこの曲は初めて聴くんだが、曲の終わりが分かりにくい。やたらにフェイントが多いのにはまいった。

 最後のばらの騎士は、いかにもこの曲らしいロマンティックな演奏となった。トリンクスの指揮は妙な誇張とかのない正攻法のものであり、どことなく品のある演奏はこの曲想とも合致していたように感じられたところ。

 若手の指揮者はとかく過剰な演出に走る場合があるのだが、トリンクスは非常に手堅さを感じさせる。ツボは押さえているが虚仮威しはしないというところ。ただそれが中庸的に聞こえないわけでもないので、印象の薄さにつながる危険性はある。


 公演を終えると明日に備えて京都に移動する。今日はチェックインホテル四条烏丸で宿泊する予定。京都に到着するとホテルに入る前に「そじ坊」で夕食を摂る。この店はそばは平凡だが、居酒屋系メニューが多いので夜は賑わっているようだ。

 

 ホテルに入ると疲労が出てグッタリしてしまう。しばらく部屋でへたっていたが、とりあえず気力を振り起こして入浴にだけは行く。

 

 風呂から上がって部屋でBDで「サイエンスZERO」「歴史科学捜査班」「美の巨人たち」などを見ていたが、そのうちにかなり強い眠気がこみ上げてくるので、この日はそのまま寝てしまう。

 

☆☆☆☆☆

 

 

 翌朝は7時まで爆睡。朝からやや体が重い。今日は15時からのびわ湖ホールでの日本センチュリーのコンサートに行くのが一番の予定だが、その前に京都国立博物館に寄っていくつもり。

 

 レストランで昼食を済ませると、シャワーでしっかりと体を温めておく。ホテルを出たのは11時前だが、京都は雪がぱらついている非常に寒い天候。

 

 博物館までの移動だが四条からバスで移動することにする。しかしこのバスが大混雑。内部は押し合いへし合いのとんでもない状況である。インバウンドがどうこうなんて言っているが、京都は既に観光客でパンク状態。これでは観光客も良い印象を持つまい。もっと根本的なところを何とかする必要があるが、それが間に合っていない状況。もっとも根本的な対策は何も打たずに、統計数値などを操作して表面だけ誤魔化すのは今の政権の得意技であるのだが。

 

 バスの混雑は祇園辺りまではドンドンひどくなっていく状況。とてもこれ以上乗れそうにないバスにさらに乗り込んでくる。押し合いへし合いの車内がようやく正常化したのは清水道を過ぎてから。乗り降りの度にかなりの時間をロスしながらバスは東山七条に到着する。


「中国近代絵画の巨匠 斉白石」京都国立博物館で3/17まで

  

 いわゆる典型的な文人画。圧倒的な技術で魅せるタイプではなく、自由で伸びやかな描線に魅力があるタイプ。作者自体は戦乱の多き近代中国の激動時代をくぐり抜けてきたのであるが、その画面から感じられるのは長閑で楽しげな空気。それは平和に対する憧れのようなものも秘めていたのであろうか。


 展覧会の見学を終えると京都駅までバスで移動(このバスもかなりの混雑)。京都駅周辺で昼食を摂るための飲食店を探してウロウロするが、いずこも大行列。いい加減嫌になってくる。やはり京都はとんでもない。最近は正直なところ、来る度にこの町が嫌いになってくる気がする。

 

 京都駅の北側は全滅、京都駅ビルも駄目、京都駅南側も駄目ということで、結局たどり着いたのは京都駅南のアバンティの地下。ここの「杵屋」で昼食を摂ることにする。栄養的に超炭水化物なので健康には悪そう。

   

 結局は昼食を摂る店を求めて1時間近くうろついていたことになる。無駄に疲れてしまった。昼食を終えるとホールに移動する。

 

 ホールには結構な観客が来ている。ザッと見渡したところ入りは8割というところか。少なくともザ・シンフォニーホールでの定期演奏会よりは入っている。


びわ湖ホール名曲コンサート 華麗なるオーケストラの世界 vol.1

 

指 揮:阪 哲朗

ピアノ:久末 航

管弦楽:日本センチュリー交響楽団

 

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番

ドヴォルジャーク:交響曲 第8番 ほか

 

 なんとも変化の大きい指揮である。かなりロマンティックに盛り上げる。ドボルザークの田園交響曲という呼び名もあるドボ八が、彼にかかるとやけにおどろおどろしい劇的な曲に聞こえてくる。どことなく表現がオペラ的だなと感じていたが、どうやら元々オペラ畑出身の指揮者らしい。そう言われれば納得。曲の表現が感情描写的で良くいえば劇的、悪く言えば過剰演出である。正直なところ下品になるスレスレのところ。これはこれで面白くはあるが、違和感もかなり強いものがあった。

 ピアノの久末はテクニックが光った。見た目は華奢で神経質に見える若者なのだが、そこから出てくる音楽は力強く激しいものであった。なかなか堂々たる演奏ぶりで今後に期待できる。


 これで今回の全予定が終了。臨時バスでJR大津まで移動すると帰宅の途についたのである。

 

 

 

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