松伯美術館

池の畔の別荘風のたたずまいの中にあります

公式HP

美術館規模 小

専用駐車場 有(ただし数台程度)

アクセス方法

 近鉄学園前駅からバス

お勧めアクセス法

 駐車場がかなり狭いので、電車とバスのほうが無難です。

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展覧会レポート

 

「京都画壇の画家シリーズ 徳岡神泉展」 2006.12/15〜2/4

 徳岡神泉は竹内栖鳳に師事した日本画家で、風景などを題材とした写実画を中心に描いてきた画家である。しかし晩年に向かうにつれて、その画風は変化し、大胆な簡略化などを駆使しながら、精神世界をも織り込んだ絵画へと発展していく。

 この作家の絵に関しては、晩年の絵になればなるほど形態は単純になり、表現がまるで抽象絵画のような色彩を帯びてくるようになる。しかしそれでもあくまで写実画の範疇にとどまっているのがこの作家のスタンスである。非常に単純な絵のように見えながら、実は一筋縄ではいかない絵画という印象を受ける。実は彼の作品は、笠岡市立竹喬美術館でも見たのであるが、その時も何やら煙に巻かれたような奇妙な印象を受けたにも関わらず、不思議と好感を持たされたのである。なんとも表現しにくい魅力を持った画家である。

 

「余白の美」 2006.10/17〜12/3

 日本画における余白とは単なる空白という意味ではない。そこに何もないが故にかえって雄弁に物語る絵画の主要素でもある。その余白に注目した展覧会が本展である。

 余白の効果としては二つある。一つは描かないことによってそこにあるべきものに想像力を働かさせるという想像力の刺激。もう一つはゴチャゴチャとしたよけいなものを省くことで、主題に精神を集中させるという効果である。

 そのような余白の使い方が端的に表れていた作品が、上村松園の「人形遣い」という作品だろうか。この作品は大胆なことに、画面の2/3ほどが完全に襖で遮られており、その隙間からの人々の表情しか見えないのである。この絵を見た観客は、これらの人物の視線の先にあるものは想像するしかないということである。しかしこういう描き方をすることによって、画面中の人物の表情が実に生き生きと見えるのである。

 この余白を重視するというのは、東洋の美術に特有の思想であるという。何もないが故の奥深さ、緊張感、これを味わってみるのは一興である。

 

「名都美術館所蔵名品展 華麗なる日本画の美」 2006.6/13〜7/30

 愛知県の日本画で有名な名都美術館所蔵の日本画コレクションより40点を展示する展覧会である。展示作品は上村松園を始めとして、横山大観、鏑木清方さらに小林古径、小野竹喬、橋本関雪、村上華岳などそうそうたる画家の作品ばかりである。

 数年前の私なら、日本画家の名前を聞いても「?」だったのだが、さすがに最近は日本画の展覧会にもよく出かけているので、本展出展作の作者の中で今まで名前を聞いたことがないという人物は皆無であった。しかも松園の美人画に関雪の動物画、華岳の観音図など、いかにもの作品ばかりなので、非常に分かりやすくまたなかなかに楽しめる。初心者から中級者まで堪能できる内容なのではないだろうか。

 

「生誕130年記念 上村松園展」 2005.10/25〜11/27

 凛として品のある美人画を描くことで知られた上村松園の作品を集めた、この美術館らしい展覧会である。本展は収蔵品だけでなく、各地の美術館から松園の作品を集めている。またこの美術館の特徴として、完成作だけでなくその下絵も見られる作品があるので、松園の制作過程をうかがえる。

 非常に張りつめたような美しさがある絵画の中で、やけに印象に残った一品が「花がたみ」である。同名の謡曲を題材にしたというこの作品が描いているのは狂女である。松園はこの作品を描くために実際に精神病院に足を運んだと言われているが、人物の表情に見事なほどに狂気が現れている。しかし驚くのはそれにもかかわらずやはり上品で美しいところだ。狂気などを描こうとすると普通は下卑た表現になりがちなのだが、この作品にはそのような下卑たところが全く見えないのである。松園の美人画はやや定型化しているようにも感じられていたのだが、そうではない卓越した描写力がうかがえる逸品である。

 

「高崎市タワー美術館所蔵名品展」 2005.4/2〜6/12

 松伯美術館と高崎市タワー美術館の収蔵品を交換しての展覧会である。展示される作品は横山大観・東山魁夷・奥村土牛などを始めとした日本画の数々であり、当然ながら上村松園・松篁・淳之の作品も展示されている。

 有名どころの画家の作品が一渡り展示されている印象だが、松伯美術館は小規模な美術館なので、各画家あたり1作品程度というのがやや寂しい印象もある。ただこのようにずらりと並べて展示されると、各画家の特徴がはっきりと際立つという効果があり、私のように日本画に対する知識がほとんどない人間にとっては、各画家の目録のような印象で楽しめたりする。個人的にはやはり東山魁夷や小野竹喬あたりがツボなんだが。

 

「上村松園・松篁・淳之展」 2004.10/5〜11/23

 この美術館の主題である上村松園・松篁・淳之の三代の画家の展覧会であるが、今回は初代の松園の作品に力点があり、それに松篁・淳之の花鳥画が数点といった構成になっている。

 松園の美人画は凛として独特の気品が漂っているのが持ち味であり、いかにも女性画家らしい柔らかさも持ち合わせている。純粋に「美しい」と感じられる絵画である。また今回の展示ではスケッチと完成作の双方が展示されているので画家が細かい表情などに対して試行錯誤を加えているのが分かり面白い。

 松篁・淳之の花鳥画については、典型的な日本画といった趣で、美しくはあるのだが格別の特徴が見られないきらいもなきにしもあらずである。なお私の目には父の松篁の作品の方が一日の長があるように見えた。

 閑静な緑に囲まれた地にある美術館であるので、気分転換には最適である。美しい絵を見てゆったりとしたい向きには最適の展覧会である。なお近くに中野美術館もあるので、帰りにそちらにも寄られるのもよろしいかと考える。

 

 

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