和歌山県立近代美術館

最近に新築されたという近代的建物。隣には博物館もあり。 

公式HP

美術館規模 大

専用駐車場 有

アクセス方法

 JR和歌山駅よりバス。

お勧めアクセス法

 私はJRとバスで行きましたが、車のほうが便利な人もいるでしょう。

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展覧会レポート

 

「森鴎外と美術」 2006.9/10〜10/22

 文豪・森鴎外は小説の世界のみならず、美術評論も手がけるなど美術に対しての高い見識でも知られ、またドイツ留学時代に知り合った原田直次郎を初めとして、多くの画家とも親交を結ぶなど、明治から大正にかけての日本洋画壇に少なからぬ影響を与えている。本展ではこの森鴎外を鍵にして、この時代における日本洋画壇の流れを追うという企画となっている。

 出展作は先の原田直次郎を中心とする明治初期のアカデミズム系の西洋絵画を忠実に学んでいた一派、さらに黒田清輝を中心とした西洋の印象派などの外光派に影響を受けた新派の画家、さらには官展への抵抗から二科展の創設に動いた画家たち、そして果ては藤田嗣治に至るまで、この時期における主要な画家を網羅している。

 実のところ、近代日本洋画史という趣で、森鴎外の存在は看板的な意味しかないのではないかと感じさせられるのが実際。しかし近代日本洋画についての系統だった展覧会は意外と少ないし、本展ではその流れが非常に良く分かるように構成されているので、日本洋画に興味を持つ者にとっては、実に勉強になる展覧会である。

 

「佐伯祐三展−芸術家への道−」 2005.11/3〜12/11

 本展は100点以上の佐伯祐三の作品を集めた大規模な回顧展である。彼は第一回渡欧の折りに、ヴラマンクから「アカデミック」と批判されたのを期に、自身の画風を一旦捨て去り、パリの町のなかで独自の画風を模索して苦闘する。その結果、生来のカラーリストとしての本領を発揮した荒々しい画風に行き着いた画家である。彼は一時日本に帰国するが、結局は日本では描くべきものを見つけられず、再び渡欧、パリでとりつかれたように絵を描き続ける中で病気にかかって帰らぬ人となる。第一回の渡欧前の作品から、第二回の渡欧の後に30歳という若さで夭折するまでの作品を一度に鑑賞することができる。

 彼の作品を見ていると、パリの石造りの町並みなくして彼の画風の確立はなかったことがはっきりと分かる。ただそれだけに、日本に帰国してからの時期には相当苦労して戸惑っていることも、この時期の作品から見て取れる。彼の硬質でシャープな画風は、石造りで硬質なパリの町並みには合うが、木と土による軟質な日本の風景とはまさしく水と油である。彼の画風はあまりにローカライズされすぎており、彼がやがてパリに戻っていたのは必然であったと感じられる。

 ただ正直なところ、彼の作品は数点を見る分にはなかなかに面白いのだが、今回のように100点以上を並べられると、結局は全部が同じ絵に見えてしまうのである。30年という彼の短すぎる生涯では、パリの風景に特化してしまったところで終わってしまったという印象である。つまり「パリの風景を描いた画家」ではなく、「パリの風景しか描けなかった画家」にすぎないように思われるのである。もし彼がもっと長生きしていれば、ローカルなものを突き抜けて、もっと普遍的なものに至った可能性を感じられるのが残念なのである。

 

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